小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

トントン、トントン、と

すまんすまん。 またブログ書くのサボッてました。 日々、細切れのくだらん仕事ばかりに追われて、脳みそを本格的に使う仕事を3か月くらいはしていない気がする。 それが日本の大学のセンセーである。

お役所のぺーぺーの頃、たとえば昔の通産省で総括係長なんてのをやらされていた頃は、朝から晩まで、省内各課から仕事の「発注」 が何十件も舞い込んできた。 「GATT の資料、7月15日までに作成してください(ショートノーティスですみません))」 とか、「厚労省の○○法改正案の法令協議、7月3日まで(厳守)」 とか。 それらの発注文書を紙で印刷して積み上げるわけだが、たいてい机の上に50センチくらいの山が常にできていた。 それを朝から晩まで、順に処理する。 が、むろん、山が減ることはない。 なぜなら、一つ終えれば、一つやって来るから。 賽の河原のごとき虚しさである。

その合間合間に、本来、本気でやらないといけない仕事、たとえば新規の予算要求、あるいは、個別案件 (宇宙ロボットの開発とか(笑)) をやるのだが、机の上に積んである50センチの高さの発注文書を日々こなしていく生活の中では、そうした自分のやりたい仕事・大切な仕事をやる脳みその余力や体力が1グラムも残ってないのである。 ニポンのサラリーマンって、たいていそんな感じでしょ?

で、皆さんのご想像どおり、大学でもそれと同じ状況が続いている。 というか、あの頃よりもひどいかも。 大学に来てから、知恵なんぞ、1グラムも、使っていない。

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大学での自分のやりたい仕事・大切な仕事の一つが、むろん、研究をして、論文を書くことである。 そのためには、まずは新しいこと・知らないことを死ぬほど勉強しないといけない。 でも新しいことを勉強するのって、むちゃくちゃ楽しくて、幸せだ。 また、研究を実際に進めるには、学生さんたちと知恵を出し合って、四苦八苦、悪戦苦闘しながらアイデアをひねり出し、試行錯誤することになる。 でも新しいことを創造していく喜び、それを論文という具体的な表現にしていく喜びは何ものにも代え難い。 オラ、ハッピーだぁ! としみじみ思う。

しかし先述のように、大学にいるのに、勉強・研究する時間がほとんどない。 やっていることはというと、朝から晩まで、他人からの発注への対応。 悔しくて涙が出る。

で、前々回のブログ (これね → やけくそにならない - 小野俊介 サル的日記) から、社会人学生Aさん (女性) との会話は続くのである。

学生: 「センセー、まだ忙しい日々が続いてるみたいですね 」
サル的: 「そうなのよ、朝から晩まで、くっだらない仕事が山ほどあって、死にそうだよ 」
学生: 「で、私の論文の添削、終わりました? 」
サル的: 「あ、いや、その、急に仕事が入ってね、Methods までは読んだんだけど、まだ終わってないんですよ 」
学生: 「 先週も同じこと言ってたような気がしますけど ・・・」
サル的: 「う、うん。 正確に言うと先週は Introduction までだったから、ほんの少しは進んだのかなぁ、なーんちゃって ・・」
学生: 「 ・・・。 あのですね、センセー。 わたしこの頃、仕事でムシャクシャするとき、夜、ひとりで料理するんですよ」
サル的: 「ほぅ、それは素晴らしいね。 いい息抜きになるのかな?」
学生: 「はい。 料理って、ストレス解消になるんです。 特に嫌なおじさんにいじめられたときなんか」 
サル的: 「そうなんだ。 今の世の中、困ったおじさんが多いからねぇ 」
学生: 「はい。 そういった嫌なおじさんのことを忘れようと思って、深夜、無心になって包丁でニンジンを千切りにするんです。 トントン、トントンと 」
サル的: 「へー、ニンジンでストレス発散するのね。 それ、いいかも 」
学生: 「 ふと我に返ると、いつの間にか自分でもびっくりするくらい大量のニンジンの千切りの山ができてるんです 」
サル的: 「 そ、そうなんだ 」
学生: 「 包丁で トントン、トントン、 と千切りにするんです 」
サル的: 「 トントンとするのね 」
学生: 「 トントントントン、トントン と ・・・」
サル的: 「 ・・・ トントン・・ トン? 」
学生: 「 トントントントン、トントン  ・・・ 」
サル的: 「 ・・・ も、もしかして、そのおじさんって ・・・ 」
学生: 「 ・・ トントン、トントン、トントン、トントン ・・・」
サル的: 「 ひっ、ひーっ!! 」

学生: 「 ・・・ 」
サル的: 「そ、そうだった。 偶然にもたった今思い出したんだけど、今日の夜は僕は特段仕事がないんだった。 き、君の論文の添削、なんだか今日中に終わる気がしてきたよ」
学生: 「そうですか。 今度こそよろしくお願いしますね」
サル的: 「はいっ! 頑張らせていただきます!」

・・・ といった平和な毎日なのである。

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共謀罪法の成立で監視社会、密告社会が到来すると大騒ぎだが、何をいまさら。 ニポンがとうの昔から吐き気がするような監視社会であることなんぞ誰もが周知の事実である。 たとえば私ごとき小物の言動も、あることないこと、関係各所のおエラいさん連中にご注進されまくりである。 ニポンの幼稚なおエラいさん連中って、太鼓持ちからご注進を受けるのが嬉しくて仕方ないらしく、何の疑いもなしに噂話を真に受ける。 噂話を真に受けたそうしたおっさんたちの目には、僕はまるで危険な化け物か何かのように映っているらしい。 会っても絶対に目を合わせようとしないんだよな。 フフフ、間抜けでかわいいやつらだ。

読者の皆さんの周囲にも、密告者がたくさんいるでしょ? 老若男女、ニポン人は告げ口が大好き。 気に入らん少数派の口をふさぎつつ、権力者への忠誠を示すには、告げ口・ご注進が一番なんだよね。 今では告げ口の内容を全国版の御用新聞が報じてくれるご時世だし。 寄らば大樹の陰。 情けない。

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この本、どうやって将棋のプログラムを進化させたかがよく分かって、とても面白いです。 将棋を知らない人もぜひどうぞ。