小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

100年後にこの記事を読んでいるあなたへ

更年期障害なんだろうな、これ。 全然寒くないのである。 テレビで気象予報士のおねいさんが 「今日はブルブルの寒さですから、寒さ対策万全でお出かけくださいね」 とやさしく言ってくれるのだが、シャツ一枚でも全然寒くないぞ。 ちょっと歩くとむしろ暑くてたまらず、電車の中ではムンムンしてじっとり汗をかく始末である。 あーあ、イヤじゃのう。 オラ、サル的ジジイだ。

むろん別の可能性もある。 身体のグローバル化(笑)。 ほれ、ガタイのでかいアメリカ人のにいちゃんで年中Tシャツ一枚のヤツらがいるでしょ。 20数年前、真冬のボストンでTシャツ一枚で大学院の講義を聞いている連中を指さして大笑いしながら、「あいつらの身体、いったいどうなってるんだ?」 と不思議に思ったものだが、自分がそうなってみると何のことはない、ただ暑いだけ。 オレもついにアメリカ人のにいちゃんと同じ屈強な身体を手に入れたのかもしれん。 なんせマクドナルドとスターバックスアメリカの魂を日々取り込んで修行してるからな。

ビバ、アメリカ! ビバ、グローバル化

*****

無料出張講義。 大阪の道修町が拠点なのか、それとも東京の日本橋が拠点なのかがよく分からない某世界的大企業で実施中である。 最近ニュースで株主総会が話題になった企業なのだが、秘密だから社名は出せないのである。 勘弁してほしい。 浜町あたりの会社でもやってます。

この無料出張講義、2011年に始めてもう7年目、のべ24社で実施してきた。 会社ごとに受講者の背景や雰囲気が違うし、そもそも会社がどのくらい切羽詰まっているか (笑) が違うので、毎回資料を少しずつ見直して講義に臨むことにしている。 ゼニを貰おうが貰うまいがそんなことは関係ない。 私には一文にもならないどんな講義でもベストを尽くす。 これがプロの心意気である。 当然だけどね。

で、今回も講義の前日、何か講義に使える面白いネタはないかなぁと思いつつ、朝メシを食べながら新聞を読んでたら ・・・ ありましたよ、でかい一面広告が。 その製薬企業の健康食品の広告である。 面白いことに、ライバル会社も類似の製品の広告を出してる。 その製品とは DHA・EPA。

業界人はむろんご存知のとおり、EPAを有効成分とする医薬品がありますね。 効能・効果は「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」、「高脂血症」 って感じ。 すごいなぁ、魚油! 神様の恵みである。

これまた皆さんご存知のとおり、健康食品は お薬っぽく広告してはいけない。 なんかに効く! と広告に書いてはいけないのね。 でも 「健康にイイ!」、つまり 「どこかちょっと具合が悪いところや、具合が悪くなりそうなところにイイ!」 を売りにするのが健康食品なのだから、そりゃなんかに 「効く」 に決まってるわな。 というか、効いてもらわなくちゃ困る。 でも 「なんかに効く」 って書いたらタイーホされる(古っ)。

というわけで、企業と広告屋の腕の見せ所となるわけだが、どれどれ、酸いも甘いも知り尽くした一流の製薬企業によるDHA・EPAの広告にはどんなことが書いてあるのだろう? と興味津々で読み進める。

こんな方におすすめします!

 健康でイキイキと毎日を楽しみたい!
 まだまだ新しいことを学び続けたい!

ふむふむ。 うまいもんだ。 要はざっくり身体と頭にいいってことね。 ちょっと表現が陳腐だが、陳腐でない表現を目指すとタイーホされるのだから、まぁこんなもんか。

で、その先にもまだおすすめする人たちが書いてある。 なになに ・・・

サラサラとスムーズな毎日を過ごしたい!

・・・

・・・ ここにぶっこんで来たか ・・・

お分かりですね? 「血液がサラサラになりますよ」 って書くと薬機法のビミョーな線に近づくからヤバい。 しかしサラサラ感的な言葉は広告には必須である。 で、どうしたかというと、「サラサラとスムーズな毎日」 に活路を見出したのね。

「サラサラとスムーズな毎日」。 たとえば、普段はねちっこく説明を求める上司が決裁書に何も言わずに承認印を押してくれたり、地下鉄の乗換えがドンピシャのタイミングでうまくいったり、ウンチがトゥルンと肛門から出たり。 そういう感じの毎日をこのDHA・EPAは保証してくれるということだ。

すっげーな、それ (゚Д゚)

血液サラサラよりもむしろスゲーぞ。

でもさ、よくやったよ、あんたら。 オレさ、あんたらのこと好きだよ。

サル的なヒトはこの広告をけなしているのではない。 逆である。 素晴らしい。 ニポン人ってこういう工夫させるとすごいのな。 医薬品業界人のこういう苦労をもっと多くの人々に分かってほしいと思っているわけである。 褒めているのだから、誤解してオレに民事訴訟とか起こすなよ。

苦労をしながらファンタスティックな広告を生み出している方々がいる一方で、薬でもないのに 「誰がどうみてもこれはビョーキに効くって言ってるでしょ?」 という感じの広告もゴロゴロその辺に落ちている。 一部の機能性表示食品だの特定保健用食品(トクホ) だのである。 お上がそういった売り文句を公認してるのだから始末に負えないのだが、誰がどうみても 「ビョーキに効く」 って言ってる広告がメディアに溢れているよね。 屁理屈並べて 「薬とは違う」 って正当化してるけど。

再度誤解なきように宣言しておくが、私は個々の会社や製品にケチをつけてるわけではない。 みんなメシを食っていくために必死なのだから、お上が許可したことは何でもするよな、そりゃ。

あとね、私は機能性表示食品やトクホが効かないって言っているわけではないのよ。 それらの食品はちゃんと 「効く」 に決まってる。 でもお役所は、食品のその 「効く」 は、医薬品の 「効く」 とは違うのだと言い張っている。 そして販売会社にも両者の 「効く」 は違うというふりをして宣伝せよ、と命じている。 でもさ、そんなの無理だよね、今私たちが使っている言語では。 そもそも 「〇〇が効く」 という言明の意味が不明なんだもん。

何度でも書こう。 問題の根幹は、 「薬が効く」 という文の意味を、薬のプロが (意味論的に) 定義もせず、理解もせずに使っていることです。 今はやりのAIがらみの言葉でいうと、薬効評価まわりの (ヘビーウェイト) オントロジーがまったく進化していないこと (注 1)。

(注 1) 世界をどう記述し、知識をどう共有すればよいかの体系の方法論こと。 哲学にまで踏み込むものをヘビーウェイトオントロジーと呼ぶ。

業界人 (産官学すべて) が一番真剣に取り組むべき課題がこれだとサル的なヒトは主張し続けているのだが、いわゆるれぎゅらとりーさいえんすとやらの人たちって、そういう問題意識まったく持ってないのな。

業界人って、AIというと 「副作用の検出」 だの 「分子配置の最適化」 だの 「PK・PDの予測」 だのと言い始めるのである。 そうした局所的な目的に使うプログラムは別になんでもよい。 が、もっと大きな目的、たとえば 「医療における医薬品選択の最適化」 といった目的をAIで達成しようとするのならば、自分たちが今持っている有効性だの安全性だのいった概念のいい加減さ・貧困さに気付いて、そうした概念を学問的にきちんと再構築して (何十年・何百年かかるのかは知らんが)、それをAIに正しく伝えるという壮大なプロジェクトが必要になるのだが、そのことを業界人は理解してるのかな。 なんか、なーんにも考えてないようにしか見えないぞ。

いつになったら業界人が北京原人からクロマニヨン人に進化するのか。 進化せぬまま淘汰されて滅びる可能性も高いけど。

100年後くらいにこのブログを読む人へ: どうですか、私のこの記述、正しかったでしょ? 日本で初めて本気でこの界隈の問題点を指摘したのは、サル的なヒトだったでしょ? ねぇ、ほめて、ほめて (笑)

*****

こんなに面白いマンガを見落としていた。 前から気にはなっていたのだが、最近ドラマ化されたので読み始めたら、無茶苦茶面白いぞ。

昭和元禄落語心中(1) (KCx)

昭和元禄落語心中(1) (KCx)

未読のヒト、迷うことなくおススメです。