小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

吉野家を目指す金字塔のFDA

う、う、・・・ うわーん  。゚(゚´Д`゚)゚。

小田さんの 「クリスマスの約束 (TBS)」 が、今年はないらしい。 一年間、あの番組を見るためだけに頑張っているのに、そりゃないよ ・・・ う、う。 年内のこれからの仕事なんぞもうどうでもいい気がしてきた。 うちの研究室の学生さん、すまんな。 指導のための気力が萎えてしまったよ ・・・ む、そこの何人か、むしろ嬉しそうな顔をしとるな。 そんな悪い子は廊下に立ってなさい!

元気が出ない。 こうなったら、生協書籍部で昨日仕入れた最終兵器を読むしかないか。 ほれ、あれですよ。 あれ。 

 

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

鬼滅の刃 23 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 

・・・

・・・ う、う、うわーん  。゚(゚´Д`゚)゚。

結局泣くことになるんだな、自分。 涙が、涙が止まらないじゃないか。

感動のクライマックス、そして後日談。 炭治郎も、善逸も、伊之助も、みんなよく頑張ったなぁ。 家に帰れてよかったなぁ。 

生きていると辛いことが山ほどがあるが、みんな 「家 (うち) に帰る」 という目標があるから頑張れるのだ。 会社で腐れ上司にどんなにひどい目に遭わされても、エラそうな連中にどんなにひどいことを言われても、家に帰れると思うから、我慢ができるのだ。 「鬼滅の刃」 の作者はそこんとこをよく分かっておられる。

そういえば、昔見た映画でも最後に 「うちに帰る」 って誰かが言ってたなぁ ・・・ と思案してたら、思い出した。 Dawn of the Dead (リメイクの方ね)の News footage (注 1)。 ゾンビ感染症のせいでアメリカという国家が完全に崩壊してしまい、テレビ放送も停波するという状況である。 もはやカメラマンが残っているのかすら怪しいカメラに向かって、格調高いニュース番組の司会者が語りかける最後のセリフが

Honey, I'm coming home, and get the kids ready now. I'll be there soon.

(嫁さんに) うちに帰るよ。 子供と一緒に逃げる準備をしなきゃ。 待っててね。 

であった。 サル的なヒトって目の前の学生や秘書さんの名前が時々思い出せないことがあるのに、こんなセリフはありありと思い出せるのである。 不思議なり。

(注 1) これ、YouTubeで検索すれば見れますよ。 いわゆる fake news だけど、今の米国の感染状況と照らし合わせてみるとしみじみ恐ろしくなる。 ゾンビ耐性のある方はぜひどうぞ。

しかし本来は 「うちに帰る」 ってフレーズを聴いたら、ゾンビものの映画などではなく、もっと健全な何か、たとえば積水ハウスの村上ゆきさんのCMソングや斉藤和義の 「歩いて帰ろう」 なんかを先に思い出さねばならないのだろうな。 根っから不健全なサルなもんで、すまんね。

 


歩いて帰ろう

 

*****

今日は自宅から某大学のオンライン講義。 コロナのせいで、規制も学問も医療も産業もまともに機能していないので、「大学の講義なんて、とにかく最近業界で起きたネタをスライドに盛り込んでおけばいいんだろ」 的な作戦 (業界人のゆるい講演でよくあるパターン) をとることができぬ今日この頃。

しかし、このコロナ禍でも、いや、コロナ禍だからこそ、大笑いのできごとは結構起きる。 たとえばこれね。

 

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は3日、英規制当局が米ファイザー新型コロナウイルスワクチンをスピード承認したことに批判的な見方を示した。

ファウチ氏は英当局が 「非常に綿密な審査を怠り、ファイザーから入手したデータをそれで良しとし、承認した」 と批判した。

その上で、米食品医薬品局(FDA)は規制上の「金字塔」で、非常に慎重にワクチンデータを精査していると強調。 「1週間もしくは1週間半ほどの時間を稼ぐために、ここで性急かつ不適切にハードルを飛び越えれば、規制上の手続きに対する信認は失墜するだろう」 と述べた。

英政府は前日、ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナワクチンの緊急使用を承認。 来週から接種が始まる見通し。規制当局の英国医薬品庁(MHRA)のレイン長官は「いかなる手続きも省いていない」と強調した。

MHRAはファウチ氏の批判を受け声明を発表し、「完璧な審査プロセスを怠ることなく、最短期間でデータを綿密に精査した」 と反論した。

 (ロイター 201203)

 

FDA は規制の金字塔」 ときたもんだ。 ウソではないけど、大笑い。 その手の自画自賛って、「審査時間世界最速」 などとまったく意味不明なことを口走って世界を呆れさせている極東アジアの島国の規制当局の専売特許だと思ってたよ。

ファウチさん、ファイザーのワクチンを抜け駆けして承認してしまった英国の審査当局がよっぽど頭にきたのですね。 極東アジアにも抜け駆け・手抜きを臆面もなく標榜している小国があるのだが (抜け駆け審査制度とか、条件付きテキトー承認制度とかいうのを誇っている国があるでしょ?)、その国も最近アメリカ様の神経を逆なでしていることは、皆さんもご存知のとおり。 ほれ、サイエンス誌が 「極東の島国がいい加減な承認しやがって」 って噛みついてきた例の件が分かりやすい。

アメリカ様の関係者たちって、「どいつもこいつも、オレたち優秀なアメリカ人が血と汗と涙で長年築き上げてきた 『薬効評価科学・規制科学』 が無ければ何もできないくせに、オレたちに何の断りもなく制度のうわべだけ変えて 『米国よりも進化しましたよ、我が国は』 みたいな顔をして、自分の手柄にしてやがる!」 と怒り心頭なんだろうな。 ははは。 100% そのとおりだから、怒るのも無理はない。

もちろん、ファウチさんが怒っているホントの理由は、そういった薬屋 (薬の専門家) の世界の体面・メンツみたいなことではない。 怒っているのは、ファイザーのワクチンが先にイギリスに分捕られると、米国への初期供給量が少なくなるから。 ファウチさんって、薬屋ではなく、パブリックヘルスの人だから。

皆さんよくご存知のとおり、ファウチさんってトランプの天敵。 パブリックヘルスの守護神のようにメディアで扱われてるエラいヒトである。 確かにこのヒト、ハキハキしていて気持ちがいい。 専門家のはずなのに何を言っているのかがさっぱり分からないニポンの国立研究所の所長さんたちと違って、ファウチ所長は 「失敗は失敗」 とはっきり認める。 昔からそうである。 たとえば 15年くらい前、失敗続きの HIV ワクチンプロジェクトが批判されたときにも、「なんか方向を間違えてるかもな、俺たち」 と自らがプロジェクト推進者であるにもかかわらず非を認めたりして。

だからこそ忠告申し上げるが、ファウチさん、薬の承認審査の中身や審査時間にケチをつけても無駄だと思うよ。 だって、世界中の薬の承認審査って昔からずっと神事なんだもん。

アメリカ様がつくった薬効評価・承認審査の体系に立派な科学が宿っていることは確かだと思う。 でも、その実践として世界各国 (米国を含む) の政府がやってることは神事そのもの。 うわべの形・儀式を真似して、シロウト目には立派なことをやってるように見せているだけ。 良い審査とか悪い審査とか言ってみても、最後は水掛け論にしかならないのよ。 「薬が効く」 の意味を語れない私たちのようなサルが審査やってるんだから。 自分たちがやってることの意味を誰も分かってないんだから。

f:id:boyaboy:20200228122320j:plain

あとね、ファウチさん。 審査時間についても 「キーッ!」 とならん方がいいと思うぞ。 見かけの審査時間なんて、お役人の腹一つでどうにでもなるんだから。

それって、ちょっと考えてみればすぐわかる。 「審査時間が1年」 だとして、やる気のあるまじめな審査官が実際に資料を読んだり、申請者に確認したりして、企業が隠し事をしてないかと探したり、悪いこと(副作用)が起きる可能性などを真剣に考えたりしている時間 (つまり、国民の健康改善にホントに役に立っている時間) って、1品目当たりたぶん延べ数日間、多くても数週間だと思うよ。 残りの350日くらいの時間は、PMDAのロッカーの中で資料が眠っている (審査官だって夜は帰宅して眠るし)か、あるいは、お役人と儀式を繰り広げているだけの時間ですよ。

見かけの審査時間と、審査をちゃんとする・しないとは、そもそも別の話である。 さらに困ったことには、「ちゃんと審査した」 と言ってみたところで、それが神事だったりするんだから。 あいやー。 どこにも救いが無い (笑)。

f:id:boyaboy:20201204210857j:plain

少し前に 「ニポンは審査時間が世界最速になりました!」 などとアチコチで自慢しまくっているニポンの当局のおエライさんたちがいましたよね (過去形じゃなくて、今もいるのか)。 陰で 「アホか。 PMDA は牛丼の吉野家かよ」 (注 2) と盛大に失笑されていたのだが、審査時間にこだわりすぎると、その手のぬるいニポンのおっさんたちと同類になっちゃいますよ、ファウチさん。 気をつけてね。

(注 2) あ、今の若い連中は、吉野家の昔のCM(♪ 早い、うまい、安いの三拍子)を知らないのか。

サル的なヒトとしては、しかし、ファウチさんやメディアがこんなふうに大騒ぎすればするほど、「新薬の承認審査って神事」 「新薬の審査は3日でできる」 という二十年モノの自説が着実に確からしくなっていくので、とてもうれしいのである。 「ほれ、言ったとおりでしょ?」 って感じ。

バカ騒ぎがもっと激しく、あからさまになることを密かに期待しているのである。

 

*****

 

ということで今日はこの辺で。 寒くなってきたから体調に気を付けましょう。 出産を控えた京都あたりのおねいさん、大変な時期だけどがんばってね。

心労の多いこの世だが、「まいにち 養老先生、ときどき まる 「秋を漂う」」NHK BSプレミアム、12/4 23:15-23:45) はサイコーである。 養老先生と、じいさんネコのまるがヨボヨボと自宅まわりを歩いているだけの素晴らしさ。 それの何が素晴らしいのかがバカには分かるまい。 次回放送は 12/11 。 必見ですよ。 見逃した人は NHK オンディマンドで。

じゃまたね。