小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

煮込まれても四の五の言わない

あいやー、前回の更新からまたひと月経ってしまったよ。 皆さんお元気?

ようやく涼しくなって、ほっと一息 ・・・ なのだけど、秋になることは必ずしも良いことばかりではないのだ。 週末、団地の狭いベランダで本を読むことだけが楽しみという、薄ら寂しい人生を送っているサル的なヒト。 その人生唯一の楽しみが、秋になって奪われているのである。 秋になって、真夏よりもベランダが暑いという現象が発生。

察しのいい読者はもう気付いていると思うが、秋になると陽射しが斜めになるのよ。 そうすると、真夏には日陰になっていたところが直射日光に照らされるのである。 熱い。 肌がぢりぢりと焼けるような熱さ。 日傘をさしても、陽が当たる足元が焼ける(笑)。

さすがの私も読書を始めて20分くらいで耐えられなくなり、「うぎゃー! 焼ける! 焼けザルになるぅ!」 と部屋に戻ったら、家人の冷たい視線が。 そりゃそうだ。 風通しのいい快適な室内でのんびり本読んでりゃいいのに、なぜか毎朝ベランダに出て、晴れてるときは焼けそうだと騒ぎ、台風が来た時にはずぶ濡れだとギャーギャー騒ぐのだから。 そんな迷惑ザルなんぞ相手にしたくはあるまい。 それは分かっているのだが、それでも男はベランダに出てしまうのだ。 なぜって、そこにベランダがあるから。

ロマンかもしれん。 単なるバカかもしれん。

 

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コロナで2年半閉まっていた学食の一つが、今週ついに復活したのである。 マンモス大学だけあって東大には学食がいくつかある。 地下のちょっと隠れ家っぽいところにあるその小さな学食のウリは、丼ものなのだ。 おまいら、聞いて驚くなよ。 宇宙で7番目に美味しい食べ物、あのカツ丼が 450円くらいで食えるのだ。

コロナ前、週に1、2回は学食でカツ丼を食べていた。 長島巨人時代のピッチャー鹿取並みのヘビーローテーション。 ところがコロナのせいで学食が閉店してしまった。 大学の外の値段が高い店で昼飯を食う財力はないサル的なヒト。 閉店以降は一度もカツ丼を食べてなかったのよ。

二年半、カツ丼を食べられない人生。 懲役二年半の人と大して変わらん。

 

再開した月曜日にいきなり駆け込もうかとも思ったのだが、再開初日にウハウハと駆け込むそんなバカ客は、お店の人に足元を見られ、侮(あなど)られるかもしれん。 意味不明なのだが、なんか悔しい。 ここは我慢だ。

火曜日、水曜日は仕事の都合で行けず。

で、木曜日。 二年半ぶりのカツ丼。 ああ、夢にまで見たカツ丼にありついたのである。

注文すると、おばちゃんが目の前でカツ丼用の小さな鍋に、玉ねぎとタレとカツを入れて、コンロに火をつけて、グツグツしてくれる。 数分後、その上にトロトロっと溶き卵を投入し、蓋をする。

グツグツ。 グツグツ ・・・ も、もういいよ、おばちゃん。 そんなにグツグツ煮なくてもいいんだよ。 食中毒は心配しなくていいから。 ああっ! 煮込みすぎて、トロトロだった卵がカチカチになってるよ、おばちゃん ・・・ (以上すべて心の声)

なにもかもが2年半前と同じ。 毎回叫んでいたこの心の声も戻ってきたぞ。

席について、パクリと一口、二口。 う、うまい。 甘辛いしょうゆ味のタレが舌と心に染みて、じんわり涙が出る。 学食ならではの、決して高級とは思えぬお米の、パサパサした味わいもたまらん。 ・・・ん? なんかトンカツがでかいぞ。 包丁でうまく切れてなくて、でっかい草履のようにつながっておる。 が、そんな細かいことはどうでもいいのだ。 うまい。 うますぎる。 あまりの旨さに恍惚としてしまい、食べてる途中で少し意識が飛んでしまったサル的なヒト。 

私にとって学食はパラダイスである。 学食があればご馳走はもう十分だ。 何千円も出して高いモノ食べる気などまったく起きぬ。

貧乏人って幸せである。 そのことを恥じる気は一ミリもない。

 

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おすすめ本を何冊か紹介しますね。 まずはこれ。「アメリカ 分断の淵をゆく」。

いわゆる「アメリカ本」は毎年たくさん出ていているが、読んでいて心が痛くなったのは久しぶり。 ほとんどの登場人物は、アメリカ社会でひどい目に遭っている人たち。 あるいは、社会からはじき出されかけている人たち。 たいていは貧乏人。 製薬企業のせいで麻薬中毒になったおばちゃん、KKKのおにいちゃんたち、国境渡って来た不法入国者、・・・

著者自身(國枝すみれさん。毎日新聞の米国特派員) の心模様が熱くそのまま伝わってくる簡潔な文体が素晴らしい。 ベランダで何度涙が止まらなくなったことか。 達人の文章って心地よいのである。 

 

大学教員の99.7%が同意してくれると思うが、学生の書く日本語(あるいは英語)、壊滅してます。 製薬企業やお役所で働く社会人学生の書く文章も、呆れるくらいひどい。 「あれでよく仕事になってるな。 クビになるんじゃないか?」 と常々心配してるのだが、実は、企業やお役所で求められている仕事自体がその程度の日本語(英語)と論理で済むものばかりになってしまったのですよね。 クビの心配などする必要はないらしい。 それなら、ま、いいか。 将来、ニポン人全員が外人やグローバル企業の奴隷になったり、絶滅したりするだけのことだし。

この本はそれらよりもさらに根っこの問題として、小学生や中学生の国語力が崩壊していることを実例を挙げて警告してくれてます。 ここでもニポン人が貧しくなってしまったことが相当に効いてる。 16億円を貧しい子供の給食費に回すことすらできないニポン人。

 

これはベストセラーだから解説は不要か。 日々のつまらん些事をひと時忘れて、浅田次郎ワールドに浸る幸せ。 これぞ読書の喜び。

 

最後はこれ。 前作同様に、各話の最後に出てくる写真が、お話の中で隠されている秘密をそーっと暗示する、というスタイル。 このスタイルって、はまると病みつきになるよね。

ストーリーは相当に悪趣味でえげつないので、ミステリーにすっきりした読後感を求める善良な方々にはお勧めしません。 悪しからず。

 

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アントニオ猪木さんが亡くなった秋の日。 テレビで見たモハメド・アリ戦の昭和を思い出しながら、がんばって団地の芝刈り、草むしりをしたら、15箇所くらい蚊に刺されてしまった。 虫刺されの令和の一日もあっという間に流れ去ってしまい、また自分だけがここに取り残されている。 人生って寂しいものである。 

じゃまたね。