小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

日曜日の夜に寂しくならない

♪ 公園のベンチで僕は

過ぎた愛の哀しさを数える

ひとりそんな午後

 

別れた人の横顔を

思い出せばいつも 涙顔

Sunday Park

 

初冬。 なんか寂しい日曜日の夜。

「日曜日の夜って寂しくて仕方ないけど、オトナになったらきっと寂しくはないのだ」と信じていた子供の頃。 が、期待に反して、大人になっても寂しいままである。 泣きたくなるくらい寂しい。 今となっては 「今よりもっとジジイになったら日曜日の夜は辛くないはずだ、きっと」 と信じるしかないのだが、どうも人生はそれほど甘いものではないらしいことが最近分かってきた。

年齢を重ねると、重ねた分だけ喜びと哀しみが積み重なるのは当然のこと。 それは仕方がない。 さらに因果なことに、数十年間、私たちは自分の体験・現実世界の出来事だけじゃなくて、虚構(fiction) の世界の喜びと哀しみ、そして絶望までもたっぷりと背負ってしまっているのである。 ほら、思い出してごらんよ。 無数の情景がよみがえってくるではありませんか。

  • 燃え尽きる寸前の命でデッカードを救ったロイ(Blade Runner
  • 夏になると倉庫のある階段に座って海を眺める「僕」(風の歌を聴け
  • ゴミ収集車に飛び込んで死んだマックス。 そしてヌードルスのパイプドリーム (Once Upon a Time in America)
  • 「私は善い人間になれたのだろうか」 とミラー大尉の墓前で妻に問うライアン老人 (Saving Private Ryan)
  • 無数のゾンビが徘徊するショッピングモールに鳴り響く時報の鐘(Dawn of the Dead
  • アルフレードが遺した形見のフィルムに涙するサルヴァトーレ(New Cinema Paradise)
  • 「人生はチョコレート箱」と呟き子供をバス停で待つガンプ。 空に舞い上がるひとひらの羽根(Forrest Gump)
  • 分岐したもう一方の道にいるミアに向かってピアノを演奏するセブ(LaLaLand)
  • ジャックとの別れ際に、自虐的にCMソングを歌うスージー・ダイアモンド(Fabulous Baker Boys)

・・・ い、いかん。 書いていて筆が止まらない。 涙も止まらない。 ので、このあたりにしておく。 こうした虚構世界がその住人とともに、私の現実世界、家族、友人と同じような存在として僕の心の中に間違いなく存在しているのだ。

日曜日の夜、哀しい気持ちになると、つい彼ら(ゾンビを含む)の人生にまで思いを馳せてしまい、深いため息をついてしまう。 なにも彼らのためにそこまでしなくてもよいことは分かっているのだが、そこまでしてしまう困った性分。 映画や小説の虚構を愛する友人が周囲に誰一人いない不幸な人生を送ってきたがゆえの寂しさかもしれぬ。 

が、人生は短いのだ。 現実の人だろうと虚構のヒトだろうと、できるだけたくさんの人たちとともに歩みたい。 私が望むのはただそれだけのことである。 そしてそれはすなわち、彼らの喜びと哀しみをすべて心にしまいこまなければならないということ。

 

♪ 年老いた人が 菩提樹の葉陰で

居眠りしながら 涙ぐむ

足元には新聞紙

 


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そんなふうだから僕は50代になっても、月曜日の朝にお腹がビチビチになる体質が治らないのだ。 健康診断で検便があるときには大変。 タイミングをうまく調整しないといけない。

 

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今週の土曜日(11/26午後)、シンポジウムでこんな話をします。 興味のある方は聴いてください。 オンラインもあるよ。

 

「医薬品の承認審査は神事」再び。

小野俊介

 

 これまで二十数年間私が言い続けてきたこと-医薬品の承認審査は神事である-を、コロナ禍が見事に可視化してくれた。 「ほれ見たことか」と冷たく言い放ちたい気持ちはあるが、そこはぐっとこらえて、「このままでは、お上やグローバル企業や御用学者にまた騙されて、またひどい目に遭うよ」と市民に警鐘を鳴らし続けるのがパブリックヘルスに携わる者の義務なのだろう。 何を言ってもどうせムダだけど。

 コロナ薬を緊急承認する仕組みができた。 過去の数々の薬事制度と同様、むろん今回もアメリカ様の後追い・サル真似だが、お上は「日本は薬害の歴史があり、『米国と同じ仕組みを導入した』なんて単純な話ではない。法制度を理解できないシロウトはこれだから困る」と嘆いているらしい。 私のようなシロウトには理解できぬ何やら深遠な意図があるのだろう。 そうあって欲しいと切に願う。

 米国政府は、三年近いコロナ禍において何度か「あ、いかん。オレたち間違えた。修正するね」と正直に告白している。 役に立たなかった緊急承認薬は承認を取り消したし、司令塔ファウチも何度か失敗を認めた。 一方、すばらしいのはニポンである。これまで、政府や周辺の人たちは誰一人間違いを犯していないらしい。 「すまんすまん。我々の施策、間違えておったよ。修正しまーす」的な公式発言を彼らが発するのを耳にしたことは無い。 人類未体験のこの状況でも彼らは決して過ちを犯さぬらしい。 人知を超えた能力。 ニポンの医師国家試験や国家公務員試験に合格すると、そういう神がかった能力が手に入るのね。知らなかった。

 しかしそうだとすると困ったことになる。 神のごとき無謬の方々には緊急承認は無理である。 だって緊急承認は「間違えるかもしれないが、ベストを尽くそう」という制度なのだから。 間違えても仕方のない決定をするのが緊急事態というものである。

 緊急承認のドタバタの唯一の功績は、薬事食品衛生審議会での議論が YouTube上で公開されたこと。 あんな意味不明な審議もどきに全国民の命がかかっていることを初めて知った一般人の多くは、背筋が凍ったのではなかろうか。 気の毒だが現実は直視してもらおう。 あれが昭和以来の伝統あるニポンの薬事行政の姿である。

 「青年将校みたいに青臭いことを言うんじゃない。 審議会が悲惨でも、この何十年間、一応は薬事行政は成り立ってきたのだ。 それでいいじゃないか」という冷静な評価もあろう。 その評価はむろん正しい。 だって、承認審査は神事なのだから(笑)。

 

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というわけで、何冊か紹介したい本もあるのだけど今日はこの辺で。 また次回。

皆さんは、僕みたいに寂しくならないように、いろんな人たち(虚構のヒトたちを含む)と仲良く楽しくおしゃべりしてくださいね。 わんこニャンコと話すのもよい、というかむしろうらやましい。

映画や小説の話をしたい方は遠慮なくコメント欄にどうぞ。 仕事や現実の話しかしないつまらない連中に囲まれた人生がもういい加減、イヤになってきてるサル的なヒト。 誰か友達になってはくれまいか。 年齢・性別・職業・民族すべて不問。

じゃまたね。