小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

ニャンコに頼ってピンチをしのがない

数年前の出来事をふと思い出したのである。 なぜかは分からぬ。 この春の精神的ダメージのせいで、僕の中の大切な何かが壊れてしまったのかもしれぬ。

数年前の夜。 23時頃。 渋谷の(かつての)恋文横丁のあたりを歩いていたら、でかい外人二人が並んで立っていたのである。 「ん? 何してるんだ?」 と思って横を通ったら ・・・ 堂々と立ち小便をしておるではないか! いや、あんたたち、立ち小便はいかんぞ、立ち小便は。 日本でも一応それは法律違反だ。

それとな、もう一つ正しくないことがある。 あんたらが自らの放水器を向けている先だが、壁じゃなくて、スカスカの金網のネットだぞ。 それも歩道と90度の角度に立っているやつ。 つまり、その放水が僕ら歩行者にほぼ直接飛んでくる。 しぶきや飛沫どころの話ではないんだよ。 勢いよく放たれた小便そのものが歩行者に直撃しとるぞ! う、うわぁー・・・

あとな、さらにもう一つ正しくないことがある。 若い警官と婦警さんが外人さん二人の後ろにすでに立っているのである。 すぐに放水を停止させるべきなのに、警官・婦警さんとも英語がうまく話せぬらしく、二人の後ろで大きく手を交差させて「バツ印」 を作って突っ立っているだけ。 呆然とした表情で放尿犯を見てる。 あんたら、それじゃ外人さんに「ん? 日本の警官はなんで俺たちに X(エックス)をしてるのだ? X Japan のファンか?」 と思われるじゃないか(笑)。

 

・・・ などという記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡る今日この頃。 皆さんお元気? オレ、やっぱりもうダメかもしれん。 でも人生の最後に思い浮かべる記憶がこんなのだったら、それはそれで嫌だなぁ。

 

この春、いろんなことがあって精神的にボロボロになった件のその後、一応現状報告しておきますね。 心配してくれてる人がいるので。

事の顛末をざっくり言うと、サル的なヒトが過大な期待をした人にざっくりと裏切られてしまったって話。 単なるその辺のおじさん・おばさんに幻想を抱いちゃった。 これ、統計学の 「平均への回帰 regression to the mean」に近い現象だ。 その人の人となり、そして、この研究室や私への思い入れが実はほぼ無いこと(笑)を正しく見抜けなかったお人好しの自分が阿呆なわけである。 で、激しい自己嫌悪に陥り、ビョーキになったこの春 ・・・ なのであった。

で、今現在どうなってるかというと、だいぶ落ち着きましたよ。 読者の皆さん、ご安心ください。

一時期は、他人の表と裏のある振る舞い・二枚舌・嘘を一ミリも許せず、その都度(心の中で)大爆発していたのだが、今では、下心・裏心ある人の明らかな嘘であっても「ほう、そうですか。 そりゃよかったねぇ・・」 と微笑みを浮かべながら聴けるようになったぞ。 弥勒菩薩とまではいかぬが、「男はつらいよ」 の御前様並みの平静さ。

あ、そうだ。 最近の僕は、ふと気が付くとね、ジョン・レノンのイマジンを歌ってることがあるんだ。

♪ Imagine all the people  Living life in peace You ...

・・・ あ、あれ、でもなんか変だぞ。 笑えない。 どうしてうまく笑えないのだろう。 うまく泣くこともできない。 涙が出ないんだ ・・・ 

まったくの無表情のまま、虚空を見つめてイマジンを淡々と歌うジョン・レノン。 要するに、今の僕は、聖人と廃人の境界あたりにいるらしい。

 

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廃人の側に転げ落ちるのはちょっと困る ・・・ ということで、いろいろ考えて、うちの研究室の秘書のおねいさん方と元気な学生に協力してもらうことにした。

 

ここでちょっと長くなるけど、大学の秘書さんについて語らせてください。 精神衛生上、とても大切な話なので。

今一緒に楽しく働く秘書さんたちは皆、僕に隠し事をしないし、相手によって違う顔を使い分けたりしない。 下心すら隠さない(笑)。 でね、実はそれらこそが信頼できる秘書さんの必須条件なのである。

私は秘書さんの能力なんてまったく気にしない (そんなものに大した個人差があるわけがない。 「時給の差が能力の差」などと吹聴してる方々には申し訳ないが)。 さぼり癖があってもかまわない。 秘書さんが別の副業・本業を持っていても特段気にならない。 が、隠し事 (副業を隠してるとか) と嘘だけはダメだ。 だって、秘書と教員は、銭金(研究費だけでなく給与も)、学内外の人事、本音ベースで誰が敵・味方か、メディアとの付き合い、自分の健康・病気、学生の成績、時に自分の家族の内情など、教員・研究室の死活情報をほぼ無条件にシェアするのである。 配偶者と同じ、いやそれ以上に「私」を知る関係になる。 教授の機微に触れる秘密を知ってるから 「自分は教授並みにエライ」と勘違いし、横柄に振る舞う秘書も出るくらいなのだ。

もちろん秘書には守秘義務はある(でもバイトさんだと微妙)。しかし、そもそも何が守秘義務としてヤバい話なのかはとても曖昧なのだ。 うちの研究室で知り得た僕の秘密(例えば、テイラー・スウィフトのファンだとか)や研究室の秘密(例えば、教員が夜 youtubeで怖いショートムービーを見てるとか)を、私の知らぬ他の学部の研究室や会社でベラベラと話された日には、私の信頼と評判はガタ落ちである。(注 1) 考えただけでも震えが止まらないぞ(笑)。

よその教授の噂話って、口が軽い秘書なら誰もがやってることではある。 しかし、副業・本業先が分かっていたら、最悪(誰にとって最悪か分からんが(笑))、そこの連中に直接「あの秘書、こんなこと言ってませんでしたか?」 と問い質すことができる。 が、私にまったく内緒で副業・本業をやっている秘書については、その問い質しはできないし、一般的な警告すら発しようがないのである。 恐ろしい。

 

(注 1) ホントにヤバいのは、むろん、知財(特許)・論文の publication がらみの情報漏洩ですね。 昔の話だが、企業が省庁のお役人を料亭で接待するときに、「女性のアルバイト職員さんも一緒にどうぞ」 というのがよくあった。 むろん単なる善意ではない。 お役所内部の事務処理などのノウハウを持っているアルバイトさんの顔・名前、そしてコンタクト自体に価値があるから、そうしたのである。

 

「隠し事」を無くすために、私は何よりもまず、秘書さんと友達になり、信頼と友情に基づく人間関係を作ることを最優先してきた。 秘書には自分・家族のプライバシーや情けない姿(例:最近尿漏れが気になる、とか)をあえてさらけ出し、逆に秘書からも自分・家族の個人的出来事や困りごとを世間話としてじっくり聞いて、対等な「人間対人間」の信頼関係ができるように努力する。 人間同士に上司も部下もあるかい、ってこと。 仕事の能力よりも100倍は大切なのが信頼と友情。 「教員や研究室の秘密を外の誰かにベラベラ話さない」 という常識を保証する上でも信頼は必須である。

しかしそうやって努力はしても、心を完全には開かず、隠れて別の顔を持つ秘書はいる(いた)。 それもずーっと長い期間、隠し続けていた。 少しでも条件の良い雇用にたどり着くには、信頼などという不確かなものを当てにしたり、信頼に縛られて不自由な思いをするより、「隠し事」「抜け駆け」の自由を確保しておく方が有利、と考える人がいるのは当然である。 ゲーム理論囚人のジレンマの基本想定は正しい。

でも、裏の顔を持つその手の秘書さんが抜け駆けで必ず幸せになれるわけではないのが世の中の難しいところ。 「隠し事」や「嘘」って、ほとんどの場合、周囲にバレバレなのである。 特に特定の大学(例:東大)の秘書市場などという狭い世界では。

「隠し事」「裏の顔」がちらつく秘書は長期的には大切な仕事を任されなくなるし、周囲で小さなトラブルが頻発するようになり、居心地の悪い状態になる。 で、また次の「隣の青い芝生(別の研究室)」を探し、移る(転職する)ことになる。 しかし一度生まれた悪評は消えることなく、次の職場にも確実に伝わり ・・・(以下、繰り返し)。

情報の経済学の教科書に書かれてる世界そのものである。最終的に「信頼」派と「裏切り」派のどちらが生き残るのかは進化ゲーム理論に任せよう。

 

あとね、それとは別の問題として、その場にいない同僚を延々と dis り続ける類の秘書とは縁を切りたい。 要は「自分の方が能力が高い」 という根拠不明の自慢がしたいだけ。 そんな輩が身内にいると組織が機能しなくなる(実際、崩壊した)。

 

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話を戻しますね。

幸いなことに、今、一緒に働いている秘書さんたちは、皆、信頼できる。 彼女たちにはややこしい隠し事がまったくないから。 こっそりホットヨガに通ってるとか、英会話教室に通ってるとかは知らんけど(笑)。 今、自分は、彼女たちのおかげで、とても安心して仕事ができています。 ありがとね。

 

で、研究室の皆でちょっと元気になることやってみるか、という話になった。 ほれ、今はインターネッツの時代なんだから、それを使って気分転換をしてやろう。

というわけで、私の研究室、東京大学大学院薬学系研究科 医薬品評価科学教室の 公式twitter アカウントをついに始めることにしたのである。 なんと言っても「大学の研究室公式」twitter である。 これまで私がつまらん個人的な愚痴などを呟いてきた非公式アカウントとは重みが違うのだ。

 

 

・・・ ほれ、どないだ? つぶらな瞳がもうたまらんだろ? これだけでサル的なヒトはご飯三杯はいける。

 

次のつぶやきからも研究室公式 twitter ならではの重みと深みが感じられよう。

 

 

・・ ん? 「これが医薬品評価科学とどう関係するんだ?」 だって? あんたもバカだなぁ。 そんなことも分かんないのか。 だからニポンの新薬開発は世界に劣後しちゃうんだよ。 ちょっと廊下に立って頭を冷やしたらどうだね。

 

この twitter アカウントで私は、大学の研究室の HP や tweet にありがちな、読者の鼻につく研究成果自慢や教育指導体制自慢をする気はまったくありません。 ああいうの、私、嫌いなんです。 なんかエラソーに見えて、美的に、ダメ(笑)。 結局は主宰教授のためだけの宣伝・自慢にしかなってない気がするし。 あ、他の研究室のやり方に喧嘩を売る気はまったくありませんので怒らないでね。 教室 HP や SNS なんて、それぞれの研究室がそれぞれのポリシーで好き勝手にやればいいだけの話。

 

なので、私は、信頼できる今の秘書のおねいさんたち、ピチピチの内部の学生たち、そしてだいぶ年季を積んだ社会人学生(製薬企業やお役所で働くベテランたち)に 「研究とか立場とかお構いなしに、好きなことや幸せになりそうなことを楽しく呟いてね」 の方針でいくつもり。 ニュージャージー、ボストン、ミネソタにいる3人からも呟いてもらおうっと。

今ここにある、この奇跡のような時間を、大した下心もなく、社会一般ほどのややこしい利害もなく、ゆるーく共有している仲間がいるのが大学なんだもの。 大学の研究室ってそういうものでしょ?

ということなので、ブログ読者の皆さんもぜひ「公式」 twitter アカウント、覗いてみてね。 コメントも入れてください。 お待ちしてます。

 

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最近読んだ本の紹介。 ドタバタであまり本を読めてない。 すみません。

 

ブルーバックスにしてはやけに分厚いが、面白くて一気読みできますよ。

遠い未来に知的生物と思考(そのもの)が存在しえぬことを冷静に語る宇宙物理学者に感銘を受けたのである。 目の前にいる対象(患者)をどう扱うかの存在論にすら目を向けずに 「有効性」 概念を語ってしまうド近眼の医薬専門家とはあまりに好対照で大笑い。

 

もう一冊はお気楽なやつ。 お気楽で素晴らしいやつ。 もう読まれた方、たくさんいますよね。

待ってました、って感じ。 トンデモ精神科医の伊良部センセーが主人公なのだが、自分がビョーキになっているせいか、伊良部センセーのどこが素晴らしいかがよく分かるのである。 伊良部先生には、表と裏、二枚舌がないのである。 この春、それらに散々苦しめられた自分は、ますます伊良部センセーのファンになってしまいましたよ。 あの網タイツ看護師、マユミちゃんもパワーアップしておる(笑)。

 

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実は、サル的なヒト、今日ここには書けないような(さすがにブログに書くとまずいよな、的な) しんどい業務上のトラブルも抱えているのだが、ま、なんとかなるだろう。

そういえば、映画 「ハッピーフライト」 の中で相当にシリアスなトラブルが起きたとき、機長の時任三郎が、頼りない副機長の田辺誠一に 「困ったときにはまず笑え!」 って言ってたな。 まずは笑おうか ・・・ あ。 笑えない。 今のオレ、表情が凍り付いた廃人のジョン・レノンのヒトだった ・・・ なぜか無表情のまま、死んだ目でイマジンは歌えるのに (笑)

 

♪ Imagine all the people  Living life in peace You ...

 

じゃまたね。