小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

忙しいはずなのに泣かない

六月。 皆さんお元気?

 

まずは近況報告。

うちの秘書・学生さんが大学研究室の日々の暮らしのあれこれを載せた、医薬品評価科学教室の twitter は元気に稼働中。 教員一名(サル的)が大学構内のビワ泥棒をいつ決行するかを検討中だったりする tweet も。 万一、「東大本郷キャンパスでビワ泥棒、逮捕」のネットニュースが流れたら、「その犯人ってそんなに悪い人じゃありません」 とネット署名をお願いします。 最近はレギュラーコース(RC)の情報や受講生への小ネタも載せてるので、油断ならないぞ。

 

もう一件近況報告。 実はうちの研究室(研修の事務局もやってる)、冬から春にかけて3人もの秘書 (兼事務局担当者)が辞めてしまい、控えめに言っても壊滅的な状況に陥っていたのである。 インパールの白骨街道並みの絶望を味わっていたサル的なヒト。

苦しい時にはまず笑え。 ははは。 ははは ・・ と笑っていたら、小野センセが頭おかしくなったんじゃないかと心配した昔の(辞めて何年も経つ)秘書が2名、急遽カムバックしてくれることになった。 急な頼みにも関わらず、「研修事務局が困ってるみたいだから、恨み言など四の五の言わず、助けてあげようよ」 と復帰してくれた心優しい Aさんと Oさん、ありがとね。 人助けを優先してくれるその心根が嬉しかったです。 さらに今週からもう一人、新たな秘書 Mさんが加わり、てきぱき事務をこなしてくれている。 昔からいる秘書 Oさんは、ベテラン現場監督として全体を仕切ってくれている。

これでなんとかならなかったらおかしいよな。 現在は、ちゃんと、なんとかなってます(変な日本語だ)。 ホント、私の研究室・事務局は人に支えられている。 感謝してます。 皆さん、美味しいもので必ず御礼するので待っててね。 食べたいものがあったら研究室 twitter に各自書き込むこと。

 

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で、6月である。

仕事はたまっている。 が、そんなことはもうどうでもよい。 今日はひたすら涙を流すことにする。 目ん玉の水洗いだ。 たまにはそんな日もあってよかろう。

 

理屈の世界は、一時、お休み。

 

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雨が降り続く肌寒い六月の午後。 校舎の陰に咲く紫色のあじさいに足を止め、「ああ、この頃の自分はあまりに自然にオトナであり過ぎる」 と思う。 言葉では容易に語れぬ人の想い ― 好きとか、愛おしいとか、憧れとか、寂しいとか  ― が自分の心の奥底に湧き出しているのに、そしてそれに気付いているのに、気付かぬふりをできるのがオトナ。 でもそんなオトナでいることに、いったい何の意味があるのだろう? 子供の頃みたいに、湧き上がっては消え去っていく想いに右往左往し、一喜一憂してはなぜいけないのだろう?

三四郎池のほとりで自分自身の心の中をただぼんやり眺めている夕暮れ。

・・ あの人は、今、何をしてるのかなぁ。 あの人に、会いたいなぁ ・・ 

 


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今日もオフィスで一日何も仕事ができなかったなぁと思いながら(日本の大学の教員は研究や教育をまともにできる日がほとんどない)、ふと Cavatina のメロディが頭の中で鳴り響いたのである。

 


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Cavatina と言えば、映画 Deer Hunter (1978)。 どんなエンディングだったっけ ・・ そうだ。 ' To Nick ' だ。

ベトナムで非業の死を遂げた Nick の葬式の後、映画の軸になっている故郷の友人たち がベトナムからの帰還兵とともにお店に集まる。 そこであのシーンを毎回目にするのである。

 


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キッチンで腕まくりして、一人泣きながら scrambled egg を作り始める John。

・・・ ああ、神様。 もうダメだ。 涙がどうしても止まらない。 いつもそうなのだ。 このシーンを見たとたんにどうにもならなくなってしまう。 映画の全編をあらためて見返したわけではないのに、このシーンで号泣モードのスイッチが入ってしまい、僕は人間としての機能を失ってしまうのだ。

この映画の Meryl Streep は息をのむくらい美しいと僕は思う。 皆が最後に口々に呟く ’This is to Nick’ ...  あああ、ダメだ。 もう完全にダメだ ・・・ 善き人が、良き時代が、過去のものとなってしまう喪失感に耐えられない。

 

で、一人ぼっちの夜のオフィスで、学生が誰も入ってこないように祈りながら涙をボロボロとこぼしているうちに、そういえば、他にもエンディングで涙が止まらなくなる映画がいくつかあることを思い出した。 今日のブログはその方針で行こう。 Youtube 使えばこういう記事が書ける。 幸せな時代である。

 

Robert De Niro 出演の名作はたくさんあるが、その中でもう一本と言えば、私にとってはこれである。 Once Upon A Time in America (1984)。 この映画のエンディングで、若き日のヌードルズ(主人公)が浮かべるパイプドリーム (アヘンの恍惚)の謎めいた笑み。 それを見つめる私の頬をじんわりとこぼれ落ちるのは、人生という時の流れを覆い包む涙。 年齢を重ねるごとに味わいが増す涙である。

 


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「これぞ活劇映画!」 の醍醐味あふれるシブーいエンディングで真っ先に思い浮かぶのはこれ。 The Untouchables (1987) 。 共にアルカポネと闘った警官 George との別れ。 若き日の Andy Garcia がカッコよすぎる。 路上で新聞記者に「禁酒法が廃止されるそうですが」 と尋ねられた Eliot Ness が「一杯やるさ」と答えるあのシーン。 あまりの爽快感におじさんは失禁しそうになる (最近気になりだした尿漏れ感とは無関係である)。 気持ち良すぎて涙があふれてしまうエンディングである。

 


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日本映画にも素晴らしい涙のエンディングがたくさんあるが、ストレートに心に響く例がこれ。 戦場のメリークリスマス (1983)。 坂本龍一さん、大好きでした。

映画の最後の一言、たけしの「めりーくりすます、みすたーろーれんす!」 ... ああ、ホントにダメだ。ブログ書いていても涙が止まらなくて、人間が本当に壊れてしまいそうだ。 

 


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何か大切な映画を忘れている気がする ・・・ そうだ、トトだ! トト(幼少期の主人公の愛称)の人生を忘れるところだった。 New Cinema Paradise (1988) 。

最後の最後でこのフィルムが出てくるとは・・というエンディング。 反則である。  FINE (イタリア語で「おしまい」) の文字が涙で霞んでしまう映画。

ちなみにこの映画、運命のいたずら (とトトへの深い愛)で結ばれなかった若き日の二人が、中年のおじさん・おばさんになって再会し・・という 「その後の恋」 が含まれた完全版と、それをカットした版がある。 実は完全版の方が評判が悪かったりするのだが、私は完全版で描かれる中年の二人の恋愛の姿も味わい深いと思う派である。 互いに白髪になって、顔には皺ができて、シミができて、もはや若き日の美しさは失って、それぞれに家族がいて、社会的地位もあって、・・ しかし互いの想いは消えず、ずっと心の中でくすぶり続ける。 たぶん死ぬまで。 それがヒトが生きていくということ。 「実存」。 読者の皆さんもそうでしょ? 素晴らしいじゃないですか。 涙が、止まらない ・・

 


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そして最後は、ああ ・・ 羽毛がフワフワと舞い上がるシーン。 もはや伝説である。 Forrest Gump (1994)。 「人生はチョコレートの詰め合わせ。開けてみるまで何が入ってるか分からない」。 ホントにそうだと思える年齢になりました。

「愛してるよ。 帰ってきたらまたここに迎えに来るよ」 とバス停でフォレストが息子に語る何の変哲もない台詞に涙が出てくるのだけど、その後に続くスクールバスの運転手のおばさん(ドロシーさん)との会話が映画冒頭とエンディングでつながっているんだよね。 知ってた?

 

映画冒頭での会話:

若き日のドロシーおばさん: 乗るの? 乗らないの?

若きフォレスト: ママが知らない人の車に乗っちゃダメだって言いました。

ドロシー:  このバスは学校行きよ。

フォレスト: 僕はフォレスト。フォレスト・ガンプ

ドロシー: 私はドロシー・ハリスよ。

フォレスト: うん、じゃあ僕らはもう知らない人じゃないね。

 

エンディングでの会話:

だいぶ老けたドロシーおばさん:このバスは学校行きだって分かってんのかい?

フォレストの息子: はい、分かってます。 あなたはドロシー・ハリスさんで、僕はフォレスト・ガンプ

 

フォレスト・ジュニア、進化しておる(笑)。 このやりとりの後、ニンマリ笑って 「早く乗んな!」 とアゴで促すドロシーおばさんが、僕は大好きだ。 そして足元からフワリと空に舞う一葉の羽根。 ああ、神様。 この世に映画という芸術を生み出してくれて、本当にありがとう! な、涙が、涙が ・・・

 


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こうやって並べてみると、どの映画も昔の記事で一度や二度は紹介したものばかりであることに気づいてしまった。 スマンスマン。 しかしまぁ、毎回重い記事をサル的なヒトに書かせるのは皆さんも心が痛むだろうから、今日はこの辺で許してやってください。

 

ただ泣いただけの令和の一日。 それでよい。 何の悔いもないぞ。

 

じゃまたね。 みんな ・・・ 大人になっても、泣こうよ(笑)。 ね。