小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

二週間もご無沙汰しない

「一週間のご無沙汰でした」 ・・・ なんて台詞で、玉置宏さんの名前をピーンと思い浮かべる年代の人たちに主としてお送りしているこのサル的日記である。 お口の恋人、ロッテの提供ですよ。(注 1) ちょっと忙しくて、二週間のご無沙汰になってしまった。 すまんすまん。 そんな皆さん方、お元気?

(注 1) ウソである。 ところで、もうかってる会社さん、サル的日記のスポンサーになりませんか。 スポンサーになってくれれば、毎回ばれないように記事のどこかで、歯の浮くようなセリフで会社の製品をほめてあげるぞ。 「いやー、あの薬の効果の切れ味には驚いた! リスクベネフィット、サイコー!!」 なんてな ・・・ ん? これっていわゆる商業広告が載ってる現在のすべての医学誌・薬学誌そのものぢゃあないか (大笑)

C社で実施中の無料出張講義ももう4回目。 中盤の難所、不確実性の話に差しかかりましたよ。 「確率・統計」 という言葉を聴くだけで目の輝きが4割くらい下がってしまう製薬業界人が多い今日この頃。 だからこそ私もちゃんとやる気スウィッチを入れてあげないといけないと思うのだ。 

「確率・統計」 の基本概念を、私が統計家以外の業界人にしつこく教えるのには、もう一つ理由がある。 いわば シビリアンコントロール。 (注 2) 統計家に新薬開発の方針決定のすべてを任せてはいけないから。 当然だけど。 統計学に限らず、進化した学問の理屈って危険なのである。 放っておくと暴走するのである。

(注 2) チビリアンコントロールではないので注意すること。(参照 → チビリアンコントロールの重要性 - 小野俊介 サル的日記

大多数の良心的な統計の専門家は、たとえば 「現在の薬効評価モデルにおける意思決定の弱点は? 社会に与えるコストは?」 といった統計学を一歩超えた問題を、社会の一員の義務として、シロウトと一緒に面白がって考えてくれる。 私が尊敬するセンセイや同僚の統計家は、皆、そう。 だけど、中には不埒な統計家、社会の一員としての義務を果たすことを面倒くさいと思う統計家がもしかしたらいるかもしれない。

「シロウト (= 企業の薬事や開発の人たち、お役人、当局の統計担当以外の審査官) との対話なんて面倒くさいよね」 と心の中でつぶやきながら、社会の幸せに関わる重大な問題を単なる統計学の効率の問題に上手にすげ替えて、「こういう新しいやり方は時代の流れですから」 とか言いながら、社会にとって重大な方針転換を勝手に進めてしまうかもしれない。

ここ数十年のグローバル開発の推進やデータの扱いの標準化の中で、よもやそんな危ないことは起きてませんよね? 「危ないことなんか起きてないし、そんな悪意を持った統計家なんかいないよ。 あんた、疑いすぎだよ」って答えが業界人からは返ってくるのだろうが、私はそんな答え、まったく信じません。 だって、平均的な業界人の、統計学を含む意思決定諸科学リテラシーの驚くべき低さ、知ってるもん(失礼なこと言ってゴメンね)。

たとえば線形モデルや交互作用項といった概念がない人たちに、グローバル試験の解析モデルに暗黙裡に採用されている人種差や地域差に関する想定・前提は分からないだろうし、ましてやその背景で (これまた暗黙裡に) 誰かがこっそり採用しているちょっと危険な倫理スタンスの含意など議論できるはずがない。 もしかして、アメリカあたりで大流行のネオリベの手下たちの言いなりになっちゃうかもよ。

そういう議論に将来あなた自身が参加してもらうためのきっかけを作るのが、私の講義の目的である。 10年後、20年後の医薬品開発・承認審査で、現在と同様の盲目的 「科学」 信仰独裁政権 (あ、これって例の 「れぎゅらとりーさいえんす」 ってやつだ。 笑) が続いているか、あるいは、シビリアンコントロールがちゃんと働く健全な世界になっているかは、あなた方次第。

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最近、深夜になるとほぼ必ず聴いているのが NHK「ラジオ深夜便」。 ほんの数年前には 「あれってジジイ・ババアの聴く番組だろ? 地味な朗読や戦前のヒット曲なんか聴いて何が面白いのだ?」 などと思っていた自分。 なんと未成熟なガキだったのだろう。 情けない。

戦前の流行歌なんてものが流れてくると、ちょっと楽しいのな。 ちあきなおみ特集なんてのがあると、仕事を忘れて 「ほー」 と聞きほれてしまう。 この前なんか、女性アナウンサーが 『ごん狐』を深夜2時に淡々と朗読してくれたおかげで、涙が止まらなくなって、これまた仕事にならなくなってしまったぞ。(注 3)

(注 3) ごんぎつね。 新美南吉の代表作。 最後、改心したキツネが鉄砲で撃たれてしまう哀しいお話である。 子供の頃に読んだよね。

他にも、たとえばこんな曲が深夜3時頃にしんみり流れてくる。 ほんと、深夜放送っていいなぁと思う。 ラジオ深夜便の歌 「唐街雨情」。

♪ 愛しいあなたに会いたくて ...んー  雨ん中 ...

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そんなこんなで、雨音がかすかに伝わる晩春の深夜。 研修会のディスカッショントピックを考えないといけないので今日はこの辺で。 司会はわたくし玉置宏、お口の恋人ロッテの提供でお送りしました。