小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

言いまつがい

「週末バージョンの脱力感あふれる日記に期待してます」 「平日に書かれていることは、理屈っぽくて、なんだかよくわかりません」という声が、複数の読者から届く。 うーむ。 そうきたか。

週末に血圧を測ると、上が100を切っている。 自分は生きたままゾンビになってしまったのではないか、と思うくらい頭が働かず、苦し紛れに思いついたことを書くと、それが週末バージョンになる。 まぁね、あなたにとっても、僕にとっても、一銭にもならないのが、このブログ。 そのくらいのユルさでイイっしょ。

ということで、今週末のテーマは「言いまつがい」。 皆さんも、よくやるでしょ? 言い間違い。

僕が一番よくやるのは「時期尚早」。 講演でカッコつけてこういう重厚な言葉を使いたくなるのが 47歳くらいの男性の特徴なのだが、この言葉を言いかけて、

「・・・あれ? これって、ジキショウソウ? ジキソウショウ? どっちだっけ?」 と心の中で毎回 0.7秒間ほど、自問自答。 で、毎回答えがでない。 で、「・・・でですね、時期的にはまだ早いかと・・・」とお茶を濁してしまう。 情けないのだが、何十年かかってもこの言葉が覚えられないのである。 きっと前世で、「佐藤尚早」さんとか、「田中早尚」さんとか、そういう名前の人と一悶着あったのに違いない。 たぶん私は「時期尚早」が正しく言えぬまま、この世を去ることになる可能性が高い。

皆さん、僕のことは「生涯『時期尚早』が読めなかった男」として、時々でいいから思い出してください。 

他にも鬼門となっている言葉がいくつもある。 例えば、お薬の名前「ノルアドレナリン」がうまく発音できない。 どうやっても「のるあどでだでぃ」となってしまう。 薬学部の教員としては、これはかなり致命的である。

講義で「ノルアドレナリン」という言葉が出てきそうになった時にどうするか。 エヘヘ・・・実はうまい手があるんすよ、旦那。 「ノルエピネフリン」と言い換えるのである。 「ノルアドレナリン」=「ノルエピネフリン」なんすよ、これが。 アドレナリンの発見者である高峰譲吉先生、スミマセン。 だって、カタカナ読みだと舌が回らないんだもん。 高峰先生の時代に「きゃりーぱみゅぱみゅ」がいたら、先生だって許す気になるはずですよ、きっと。

高校時代の物理の T先生の滑舌も絶妙で、素晴らしかった。 

角加速度αとすると・・・」 が 「かっかそくろあろはー とすると・・・」 となり、
摩擦力」 が 「まはつりょく」 となり、
地面からのベクトルが・・・」 が 「ちめんからのぺくとるとが・・・」 となった。

物理の教え方はうまかったなぁ。 T先生、まだお元気だろうか。

そうだ、私の本職関係でもあったぞ。 国内に臨床試験の実施の基準(Good Clinical Practice)が公布されたばかりの頃。 ある医学会の大御所の先生と仕事がらみの話をしていたときに、

「小野さん、じーぴーしーは、大事だな。 じーぴーしーは」

はて、と頭の中で???が12個くらい出たところで、これはもしかして、GCPのことではないか、と気づいた。 が、ここで「じーしーぴー」と私が言い直すと先生が不機嫌になるかもしれん、結果として、日本の医薬品行政に禍根を残すことになるかもしれんと思い(当時は若かったから、これくらいの気配りはできたのだ(笑))、

「いやまったく、そのとおりです、先生。 じーぴーしーは、これからますます大事になりますよ、先生」

とお答えした自分がいた。 必死で笑いをこらえている役所の同僚がまわりに数名。 僕自身も、かなり限界に近い状況であったことは告白しておこう。

GCPは近年ますますその役割の重要性を増しているわけであり、その大御所の先生の先見の明は疑う余地がない。 ただ単に、言いマツガイがあっただけのことなのだ。 ・・・ ぷ、ぷ、ぷ、・・・

本家本元の言いまつがいの世界を堪能したい方は、糸井重里師匠の言いまつがい本をご購入ください。 人生が明るくなること請け合い。 この僕ですら、これら数冊の購入後は、まるでまともな社会人のように元気になった。 電車内で読むのはかなり危険です。 警告しておきます。

そんなこんなで、サル的日記週末バージョンでした。 皆さんも良い週末を。

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