小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

ご苦悩のところ恐縮ですが

今日は都営三田線の先の方に開発部門がある某グローバル企業で、社内研修のお手伝い。 どの会社かははっきりとは書けないが、白い神秘的な巨石が玄関に鎮座しているのが印象的な会社、とだけ申し上げておく。 私の講義はともかくとして、開発部門の方々の真面目さ・真剣さがヒシヒシと伝わってくる1時間であった。

内資企業・外資企業などと二分法で分けてもあまり意味がないご時勢なのだが、やはり企業のカラーは違うなぁといつも思う。 座っている姿勢とか、笑いが起きるポイントとか、うなずき方とか。 これまでの経験上、笑い声の大きさと笑いの頻度は明らかに (外資)>(内資)である。ただし、これは、私のくだらないギャグに対する寛容さ・許容の程度を示す指標であろう。 関西人度、とでもいうか。 そういえば、「関西」+「外資系」 の神戸あたりにある某社で講演したときには、社員の皆さんのノリがとても良かったことを思い出した。

ネクタイを締めている人の数は内資企業でも最近著しく減りましたね。

この先、例の全10回 「外人さんに言い負けない日本人になるためのコンセプト・スキル向上講座」 をやりますので、興味のある方はぜひご参加を。 他の研修会や講演会では絶対に聴けない話をします。 これまで6社の方々が人柱被験者になってくれて講義の質は改善されており、品質は保証付き。 納得いかないお客さんは一週間以内なら返品可 (ただし西台からの送料はご負担ください)。

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話は変わるが、最近ちょっとイライラする決まり文句がある。 その一つが、メールなんかに書いてある 「ご多忙のところ恐縮ですが」。 サル的なヒトは、読者の皆さんと同様に、そりゃ時にはサルの手も借りたい時もあるが、かといって常に激務というわけでは決してない。 医療機関・企業・役所で文字どおり不眠不休で、血尿を流しながら働いておられる方もおられよう。(注 1) それに比べれば、今の私の仕事ぶりは相当に生ぬるいかもしれぬ。 

(注 1) 私だって若い頃は、3晩連続徹夜で集計作業をして、ついに三日目には数字がアラビア文字のように見えて数字としての意味が理解できなくなった経験がある。

でもね、仕事をしていないわけではないのよ。 というか、我々の商売 (大学の研究者) の場合、365日 24 時間、仕事をしていると言えばしているのである。 起きている間はずっと、ドラッグラグの因果モデルをどう改良するかだとか、責任が前提となった場合の自由と意志の虚構性だとか、用量設定にサンプルセレクションモデルを適用するとどうなるかだとか、そういうことを考え続けているのである。 休日など無い。 だって、それが商売なんだもん。 夢の中でも 「うーん・・ 少数派が社会を変えるための認知不協和の条件は ・・ うーん、うーん」 とか唸っていたりする。(注 2) ほとんど病気である。 いや、間違いなく病気だ。 良い子は真似しないように。

(注 2) 心理学者モスコビッチの minority influence 理論である。 社会規範などについて、何か変動が起きても多数派のそれに収束するのが普通のはずなのに、歴史的にみると少数派による社会の変革がしばしば起きている。 なぜそういうことが起きるのかを説明しようとする興味深い理論。

「病膏肓(こうこう)に入る」 という感じだが、これを多忙というかは微妙ですね。 多忙というよりは 「とり憑かれている」 という表現が適切だ。 しかし、これは私に限ったことではありませんね。 今時の中年サラリーマンは、多かれ少なかれ、仕事にまさしく 「とり憑かれている」。 休日のディズニーランドでも会社支給のスマホで仕事メールを読んでるお父さんたち。

私の場合それに加えて、なぜだか理由はわからないのだが、一年 365日常に締切を過ぎた原稿や査読論文を抱えた状況が常態化している。 が、それでも多忙な気はしない ・・・ いや、申し訳ない気持ちや罪悪感は溢れんばかりにあるので編集者の皆さんは怒らないで下さい。 カブトムシのエサ(バナナ)を毎晩交換したり、幼虫の糞だらけの大量のマットを週に一度交換する仕事では確実に超多忙なのだが、この仕事では世間様が「多忙」と認めてくださらないのだな、困ったことに。

というわけで、サル的なヒトへのメールでの挨拶としては 「ご多忙のところ恐縮ですが」 ではなくて、 「ご苦悩のところ恐縮ですが」 とか 「おとり憑かれのところ恐縮ですが」 とかいった感じにしてもらえると嬉しいのである。

・・・ といいつつ、自分が他人に書くメールには 「ご多忙のところ恐縮ですが」 と平気で書いてしまう、という矛盾(笑) 皆さんはいかがでしょうか。

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最近どうも心がささくれ立っているので、せめて夢の中では楽しかった少年時代が再現しますように、などと祈りながら、寝る前にベストセラーの将棋漫画なぞを読もうとする。

しかし、つい間違えてこっちのシリアスな悲しいお話の巻を手にとってしまい、深夜にしんみりと涙腺が緩んでしまったりする。
海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)

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最近の漫画は質が高いね。