小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

食に関する役に立たない知識

テレビを見ていると、あちこちでもめごとを起こしている方々の興味深いコメントが聴けて楽しくて仕方がない。 名鉄グランドホテルの支配人の 「伊勢エビとロブスターはほぼ同種だと思っていた」 という台詞、久しぶりに大笑いさせてもらいましたよ。 確かにだいたい同じであることは認めざるを得ないよね。 赤くて、デカくて、固くて、海にいるからな。 おまけに、どちらも相当に美味しい。

ボストンに住んでいた頃、一度だけ、近所のスターマーケットでロブスターのデカいのを一匹買ってきて、自宅で茹でて食べたことがある。 外のレストランでは何度かバキバキ(殻を割る音)、ワシワシ(かぶりつく音)と食っていたのだが、結構なお値段なので、スーパーで買えば安く食えるだろう、というわけである。 店頭には並んでないから、食肉売り場のおっさんに 「一匹くれ」 と頼まないといけない。 「どのサイズにする?」 と尋ねられるから、「そうね ・・ 中くらいのヤツ」 と答えると、奥の水槽からそのサイズの奴を取り出してくれる。 両方のハサミを太い輪ゴムで縛って、丈夫な紙袋に放り込んで、外側をガチガチにテーピングして、「ほら、持ってきな!」 って感じで手渡してくれる。 15ドルくらいだったか。 ずっしりとした重みのロブスターは、紙袋の中でガサガサ、ゴソゴソと動いている。

自宅に持って帰ってから、面白いもんだから袋から出してツンツンとつついてみたりするのだが、そうしていると結構な割合で困ったことが起きる。 多くの日本人が同じことを言っていたから、私だけの経験ではありません。 あのね、ロブスターがだんだん可愛らしくなってくるのですよ。 ノソノソとそいつが動いているのを見ていると、なんか愛着が湧いてくるのである。 「俺はこいつを大鍋に放り込んで煮てしまうのか? そんな残酷なことしなくても、食い物は他にもたくさんあるような気がする」 などと考えていると、料理を始める気合がだんだん失せていく。 そして食欲も ・・・。 

貧乏人としては、しかし、ロブスターに海にお帰り頂くという選択肢は取れないため、結局はありがたく食したわけであるが、「生き物を食べることでしかヒトは生きられない」 という原罪に思いを巡らせるには十分な体験であった。

名鉄グランドホテルの支配人のおじさんが取材陣の前で脂汗を流している姿を見て、そんなことを思い出した。

*****

毎日朝晩、電車乗り換えの途中で、日本有数の繁華街を歩いて通り抜けている。 通り沿いにはたくさんのレストランや飯屋、ファーストフード店がひしめいているのだが、実にお店の出入り (参入と撤退) が激しい。 潰れるお店は、だいたいわかる。 負のオーラが出てるお店ね。 おおむね半年くらいで潰れる。 が、お客がまったく入っていないのになぜか胡蝶蘭が店頭に一年中飾ってある4年目の喫茶店 (年中アルバイト募集という貼り紙がしてある) なんていうのもある。 特殊なスポンサー(笑)がついているお店だろうから決して近寄らない。

最近開店したばかりのフレンチレストランの入り口には、なぜかワンコが一匹つながれている。 かわいいトイプードルではあるのだが、なぜか僕がお店の前を通るときには決まって、その、なんというか、ホカホカの落し物をしているのだ。 洒落たフレンチレストランの入口に転がっているホカホカの落し物は、いろいろな意味でまずいような気がするのだが、その店主、何を思ったか 「この子の名前は○○です」 なんていう貼り紙までしてあるのだ。 うーむ。 確かにパリを歩くとワンコの落し物だらけだが、そこは真似すべきところなのだろうか。 田舎者の僕にはわからない世界だ。

そこから100メートルくらいのところには小さな寿司屋がある。 その界隈は日本有数の繁華街なので、酔っ払いがたくさんいる。 でね、困ったことにちょうどその寿司屋のあたりは、なぜかはわからぬが、あの生理現象を催してしまう風水的な特徴があるらしいのだ。 朝、そのお店の前を通ると、プーンとお○っこの臭いが・・・。 それも何度も。 酔っ払いの仕業だろうが、お店としてはたまったものではない。 で、寿司屋の店主 (毎日前を通っているから顔はよく知っている)、頭に来たらしく、お店の入口のドアに、赤い神社の鳥居マークとともに 「小便禁止」 なる貼り紙を貼ったのであった。 いや、その、店主さん、お怒りなのはわかるが、寿司屋の玄関に 「小便禁止」 という貼り紙はどうかと ・・・(注 1) 

(注 1) この話には後日談がある (お食事中の方はここから先読まないように)。 「小便禁止」 が貼られてから数日後、その貼り紙の下には見事な酔っ払いのゲ○が散乱していた。 いやはや。

その寿司屋から数軒ほど離れたところにあったラーメン屋さんは、カウンターにお客が5人ほど座れば一杯になる小さなお店だったが、毎朝、店主が汚いスウェット姿で目をこすりながらお店から出てくる。 どうやら、2坪ほどしかないそのお店に寝泊まりしているらしいのだ。 うーむ。 これって食品衛生法上大丈夫なのか? ・・・ と思っていたら、やはり潰れてしまった。

通りには小ぎれいなレストランも多いのだが、その料理人と思しき方々が、裏通りの自動販売機で缶コーヒーを飲みながら、タバコをスパスパやっている姿もよく目にする。 料理人の腕と、料理人自身の食に関する嗜好は違うのだろうね、きっと。 

・・・ と、そういう状況を毎日見ながら通勤しているから、「『エビの種類の呼び方を多少間違えた』 だの、『オレンジジュースのしぼり方を多少勘違いした』 なんていうのは実に上品な間違えぢゃあないか。 まぁ許してやってもいいんぢゃないの?」 なんて呑気なことを呟いたら、家人にこっぴどく叱られた。 

外食するのにも多少の勇気が必要なのが、資本主義社会なんだろう。

*****

ついに出ました。 Maru くんと一茶くんの写真集、2冊目。 温かいコーヒーまたはココアを用意して、1ページ、1ページをじっくり堪能すると、幸せな気分になれますよ。

ぼくのともだち 〜Maru in Michigan〜

ぼくのともだち 〜Maru in Michigan〜