小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

「貧乏カネなし」が家訓である

急に寒くなったのだが、今年はまだコタツ様にお出まし頂くことなくがんばっているサル的なヒトである。 例年だとコタツ様は、この時期にはもうとっくに居間に鎮座されており、「ふむふむ、お前ら良い子たちじゃな。 よし、良い子はググッと冷えた足をワシの中に突っ込むのじゃよ。 なに、首まで入る? うーむ、ま、お前が良い子ならそれも許そう」 と実に寛大な態度であらせられる。

で、何が起きるかというと、当然ながらコタツでの爆睡ですね。 幸せの極致。 朝までコタツで寝ちゃったり。 昼間もウトウトと何時間か。 例えば、外は雪が激しく舞う土曜日の午後、ぬくぬくとコタツ様に首までもぐりこんで2時間ほど寝てしまって、「・・・む? いかんいかん、もう 『めちゃイケ』 が始まる時間じゃないか」 なんてこともある。 が、そういうときにはたいてい 「我敗れて悔いなし!」 などという言葉が頭をよぎるわけである。 ケンシロウに敗れたラオウのように澄んだ心境である。 いや、それがどういう心境なのかは書いている自分にもよくわからないんだけど。

今年は、しかし、そういうサル的怠惰を家人が一掃したいらしく、まだコタツ様を出してもらえないのであった。

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先週土曜日の午後は、神楽坂にある理科系の大学で講義。 朝から連続の講義でお疲れにもかかわらず、しっかり講義を聴く態度と目の輝きが素晴らしい。 ここの大学の学生さんは、統計学だけでなく、オペレーションズリサーチなんていう科目をほとんどが履修しているから、意志決定科学の話がしやすくて講師としてはとても楽です。 そういう将来性ある学生さんをさらにパワーアップすべく、主として社会選択論的な 「決め方」 の論理を説明。 現在の医薬品規制・評価体系の陥穽 (皆がごまかしている大穴) を説明すると、それが自然にアロウの不可能性定理や Gibbard-Satterthwaite theorem の説明につながっていくから、とても楽チンだ。 欠陥だらけの医薬品規制体系、本当にありがとう!(注 1)

(注 1) 今後、仮承認制とかいった制度が追加され、ますます理解不能の体系になるらしい。 ますますありがたいことである。

講義が終わってから、担当教員の先生 (審査センターの時分からの結構長い付き合いである)とコーヒーなどしながら、無駄話。 この方とは最近ほとんど会う機会がないのだが、会えばぶっちゃけた話ができるとても有難い友人である。 今はとても多忙らしいが、周囲に気を遣う心優しい方だ。

「最近、他人っつーものに興味が無くなってきたんだよね。 老化だね」 ということでお互い見解が一致。 「今度メシでも食おうね」 って言っても、たいがいそれは社交辞令で、実際にメシに誘われると、断るための言い訳をまず探してみたり(笑)。 同期会なんて誰もやろうなんて言い出さないし。 年をとると、だんだんそうなる。 あなたもそうでしょ?

誰かが出世しただの、賞をもらっただの、そういう自慢話はあまり聴きたくはないものだが、かといって、誰かがクビになっただの、離婚しただの、再起不能になったといった話が聴きたいわけではない。 どっちも聴く気がしないんだよね。 他人の話には興味がない。(注 2) 最近では、他人の噂話ばかりしている連中が近くにいるとすぐにイライラしてきて、「シッシッ! おまえあっち行け!」 と追っ払いたくなる。

(注 2) 廃人になったわけではないので、現実世界に興味を失ったわけじゃないのよ。 フィリピンの台風被害やシリアの内戦やAKBの今後などへの興味は依然旺盛である。 興味を失ったのは、facebook なんかで繰り広げられている友人や知人の人事の噂話や動向。 

「あのさ、今日こうやって 『久しぶりだから講義の後でコーヒーでも一杯どう?』 って誘うのですら、実はおっくうだったりするわけよ。 情けないことに」 って僕が言ったら、「わかる、わかる」 と苦笑い。 こういうユルい会話ができる、欲徳の利害の無い友人関係は良いものだ。 当然、再会などこれっぽっちも約束せず(笑)、お互いさっさと帰宅。 これでいいのだ。

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将棋の桐谷さんの本、無茶苦茶面白いので読むべし。 将棋の本じゃないぞ。 株の本だ。

桐谷さんは、将棋の方はもう引退してだいぶ経つのだが、今なんでブームが起きているのかというと、彼が株のプロだからだ。 いや、投資のプロではない (大損している)。 株主優待券使いのプロ(笑)なのだ。 彼は文字どおり 「株で食っている」 のである。

昼メシと夕メシは居酒屋やファミレス、回転寿司チェーンの食事券で。 衣料や靴も優待券で。 移動に使う自転車も優待券で。 映画の優待チケットが有り余っていて、毎日、それを使いきるために映画館へ通う。 すごいぞ、この人。

現役の棋士時代の桐谷さんも知っているが、強いような弱いような微妙な将棋だった。 桐谷マッサージ流といって、敵の陣形の凝り固まったところをもみほぐして、相手を気持ちよくするのが得意技。 「ダメじゃん」 と思うかもしれぬが、気持ち良くなった相手は油断するからな(笑)。

桐谷さん、うな重が食べたくなって、期限切れ間近の1000円分の優待券を握りしめてお店に入ったのだが、うな重は 1000円では食べられないことが判明。 一方、親子丼は 980円。 ひとしきり悩んだ末に桐谷さんは、本当は食べたいけどおカネを足さないと食えない「うな重」ではなく、優待券の範囲で食べられる「980円の親子丼」 を選択した ・・・という映像を YouTube で見て大笑いして以来、彼のことが大好きになったのだ。 私もまったく同じ生き様だもん。 貧乏くさくて何が悪い? 他人の目を気にする生き方なんぞ、どうでもええわい。

スーツは洋服の青山の 1万円ので十分。 シャツはユニクロで十分。 昼飯は生協の定食で十分。 たまに本郷通りの海鮮丼屋さんで 490円の大トロあぶりサーモン丼にわさび醤油をドボドボかけて食べると、あまりの美味さに意識が飛びそうになる。 議論の相手になってくれるのは学生さんのみ。 こういう不自由な生活にもかかわらず(いや、不自由な生活だからこそ)、心は自分の思うがまま。 昨日はゲーデル、今日はハイエク、明日はケインズ ・・・ ってなもんだ。 自由がゆえに妙な方向に逃走を余儀なくされている方々を、心の底から気の毒に思う。(注 3) 「権威」 にすり寄ることばかり考えている輩は身近にも多いのだ。 かわいそうに。

(注 3) フロムね。