小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

悲しさの二日酔い

朝起きた時からずっと悲しい気持ちが抜けない。 そういうことがたまにある。 心の奥に悲しみの火が点いていて、どうやっても消せない。 悲しみの埋み火 (うずみび) を抱えている感じ。

夜、無茶苦茶に悲しい夢を見て、嗚咽が止まらなくなって、それで目が覚めることがある。 子供の頃からずっと。 年に数回。 しばらくは涙と嗚咽が止まらない。 どんな夢を見たのかはまったく覚えていないのに、純度100%の悲しみエキスのようなものが脳内に湧いていて、どうにもならないんだよね。 皆さんにはそういう経験はないだろうか。

普通はそれも夜だけの話。 翌朝起きた時には忘れてしまう。

ところが今朝はその純度100%悲しみエキスがどうやっても抜けない。 月曜日の朝、という状況を考慮しても何か変だ ・・・ いや実は、理由は自分ではわかっているのだ。 先日亡くなった連城三紀彦さんの看板作、「恋文」 と 「私の叔父さん」 を昨晩寝入りばなに布団にくるまって読んでいたからなのだ。

恋文・私の叔父さん (新潮文庫)

恋文・私の叔父さん (新潮文庫)

「私の叔父さん」、昔読んだはずなのにストーリーをすっかり忘れていた。 生前の有季子を撮った5枚のおどけた表情の写真。 なぜ5枚撮ったところで有季子が 「止めて」 と言ったのか、そして 「この写真を持っててね」 と言ったのか ・・・ が話のクライマックス。(注 1) 当然のごとくサル的なヒトは涙が止まらず。

(注 1) 5枚の写真が伝えるメッセージ。 これ以上はネタバレになるから書かない。 読もう。

そのまま泣きながら寝たから(笑)、悲しさの二日酔い状態になってしまったんだろうな、と思っていたのである。 

なんとか一日をやり過ごして、帰宅。 いつものようにパソコンに向かって、定期的に覗いている何人かのブログを読んでいたら、歌手の明日香さんが25日に亡くなったことを知る。 2007 年に乳がんになって、その後、がんが全身に転移していたのだが、その間も音楽活動を続けながら、ほぼ毎週のようにブログを更新していた。 息子さんはまだ小学生。 息子さんへの愛溢れる優しい書き込みがとても微笑ましくて、いつも楽しく読んでいたのだ。

最後の書き込みは9月29日。 その後まったく書き込みがないから、体調が悪いのだろうなぁと薄々感じてはいたのだが、管理人によって書き込まれたブログ上の突然の訃報にしばし呆然。

昭和中期型ロボのおっさんたち、特にラジオ野郎どもは、昔(1982年頃)、大石吾朗のコッキーポップというニッポン放送のラジオ番組で 「花ぬすびと」 という明日香さんの曲がよくかかっていたのを覚えているはずだ。 ヤマハポプコンのグランプリ曲だったと思う。 亡くなったのはそのヒトである。 私と同じ年、49歳。

♪ 花ぬすびとの伝説が 別れ話の始まりでした ・・・ あなたは私の膝の上 白河夜船の波枕

という少し時代がかった歌詞が印象的で、いつかどこかでこのフレーズを僕も使ってやろうと思っていたのだった。 あなたは私の膝の上 白河夜船の波枕。 言葉から匂い立ち、こぼれおちる情感がたまらない。 美しい。 

ブログというのは、書いている本人と読者の距離がとても近いから (正確には、読者に距離が近いと錯覚させるメディアだから)、なんだかとても悲しくて寂しい。 これからは、こういう別れがますます増えていくのかと思うと、さらに悲しい。 ブログの更新が突然止まって、そして間もなくして作者の死を知る。 将棋の米長さんが亡くなったときにも同じようなことを書いたのを思い出した。 →  ブログが更新されなくなる日 - 小野俊介 サル的日記 

彼らは有名人だから、マスメディアがその死をブログとは別ルートで伝えてくれるわけだが、僕らのようなパンピーはそうはいくまい。 作者がこの世に存在しない、更新が止まったサル的日記はいつまでネットの海に漂うことになるのだろうね。 

ということで、今日は元気が出ないので、この辺で。