小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

コペルニクス的転回しない

今朝も例によって低血圧の夜更かし不健康ザルは体調最悪だったのである。 平日はいつもそうだ。 ボーっとした頭で朝食を食べて、歯を磨いて、トイレに行く。 気分が重い。 いつもの、登校拒否症である。 幼稚園の初登園日以来ずっとだから、もう46年間も続いている。 

家人が作ってくれた弁当がポツンと食卓の上にある。 外は素晴らしく良い天気。  

・・・ と、サル的なヒトはここでふと妙案を思いついたのである。

「そうだ、発想を変えるんだよ。 こう考えればいいぢゃないか ・・・ 自分はこれからトトロの森にピクニックに行くんだ。 お弁当持ってトトロに会いに行くんだよ。 トトロだけじゃなくて、まっ黒くろすけにも会えるかな。 これって無茶苦茶楽しいことだよね」

コペルニクス的転回とはこのことだ。 科学哲学者クーンのいうパラダイムシフトもきっとこういうことなんだよ、きっと。(注 1)

(注 1) ちがう。

そう思うことにしたら、なんと、本当に気分が浮き浮きしてきたのである。 楽しくて楽しくて仕方がないような気がする。 さぁ、元気な声を出して、歌いながらお外に出ようよ。

♪ 歩こう 歩こう わたしは元気 歩くの大好き どんどんゆこう!
  坂道 トンネル くっさーぱらー 一本橋に でこぼこ砂利道
  クモの巣くぐって くだり みち!

うわぁ、これは楽しい! 本当に楽しいぞ。 いちにー、いちにー、ワンツー、ワンツー ・・・ 元気に歩けるぢゃあないか、自分。 これなら最寄駅まで楽々通えちゃうよ。 やったよ、ママ。 苦節46年。 万年登校拒否症だった僕もとうとう元気に学校に行けるようになったんだよ!

ワクワクした気分は地下鉄車内でも消えない。 だって本郷三丁目の森でトトロが待ってるんだもの。 ♪ 歩こう! 歩こう! あたしはーげんきー ♪ テクテクテクテク ・・・

大学のオフィスに到着。 どんなもんだい。 さぁ仕事にとりかかろう。

・・・ 

・・・ 

・・・ 弁当忘れた orz

*****

といった日々のサル的なヒトだが、皆さんはお元気でしょうか。 実は今日から新宿界隈の、女性がちょっと目のやり場に困る彫刻が2階にある高層ビルに入っている某社で、例の無料出張講義が始まった。 初回に際して 「身の丈に合わない話を聴くのは苦しいけど、あっさり投げ出さないでね」 などと皆さんに随分と失礼なことを申し上げたが、これは10社ほどで講義をしてきた私の実感でもある。 ご容赦ください。 

最初の倫理・道徳の講義あたりは目が輝いているんだよね。 たぶん皆さんのバックグラウンドとあまりに異質すぎるから、「こういう妙な話も自分の人生においてきっと重要なんだ」 なんて自分を無理矢理納得させてる。 でも、経済理論、不確実性、交渉・ゲーム理論 ・・・ と講義が進むにつれて、「これは私の今の仕事とは何の関係もないわ」 と思い始める人が増えてくる。 不思議なことに、皆さんの日々の業務 (モニタリングだとか) と直接は関係しないけど、医薬品開発の本質に深く関わる概念・方法 (余剰概念だとか、ランダム化の因果関係論における意味だとか)を紹介すればするほど、「これって私には直接は関係ない。 私の業務には関係ない」 と皆さんが逃避し始めることに最近気づいたのである。 

私が講義で紹介する概念は、すべて、新薬の開発・承認審査・販売に直結したものばかりです。 自信を持ってそう宣言できます。 でも皆さんには、それらがどこでどう結びついているのかがさっぱり分からない。 自分が熟知している医薬品の文脈のはずなのに、まるで他の惑星の話のように聞こえる。 身の丈に合っていないとは、つまりはそういうことである。

で、どうするかだが、どうしようもないのだ。 私は何もしない。 先生が学生に迎合して、学生の身の丈に合った話しかしない講義なんてナンセンスでしょ? (注 2) 学生が身の丈を超えた世界を楽しみ(苦しみ)、ワクワクしない限り、学生の成長はない。 仮に皆さんが高い学費を払ってビジネススクールに通うとして、そこで自分が既に知ってる話ばかりの講義を取りますか? 知らないこと、わからないこと、身の丈を超えたことを学ばないと損だと思うでしょ? (注 3)

(注 2) 業界のシンポ (例:D○A) や研修は参加者の身の丈に合った話しかしないが、それはそれでいいのだ。 だって目的が 「業界の常識」 のコピペ・増幅・拡散なのだから。 

(注 3) 留学先の大学院で、自分の知っていることを教える講義ばかり取る日本人が結構いることは私も経験として知っている。 良い成績が取れるから。 そういう志の低さと、ある意味アンフェアな振る舞いは自然と周囲の人間に伝わるよ。

辛いけど我慢して、途中で投げ出さずに、一通り聞いてみてくださいな。 そうするとね、だんだん、講義の内容があなたの身の丈に合ってくるもんです。 学問とはそういうもの。 不思議だね。

*****

週末見てきましたよ、「WOOD JOB!」 素晴らしい。

大笑いして、泣ける。 こんな映画で泣いてしまうのはどうかとも思うのだが、いいのだ。 泣かせてくれ。 伊藤英明の下ネタと野獣っぷりに支えられた映画なり。 

シネコンの隣の部屋で上映されていたのは、あの 「アナ雪」。 待合スペースは、レリゴーすべく集まったよい子とおかあさんたちと、過疎地の林業モノ見たさに集まった白髪交じりのおっさん・おばさんたち (含自分。 一部は熱烈な長澤まさみファンと思しき若者も)が入り混じって、なんともアナーキーな感じであったよ。