小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

怒りだす人々、大笑いする人々

新薬の製造販売承認なんていう世界を研究する仕事をしている。
世の中では、製造販売承認なんていう言葉を生涯一度も発することなく人生を終える人の数の方が、そんな言葉を日常的に発していたり、ましてや研究していますなんて言っている人の数よりもはるかに多いだろう。
だから、世の中の人に新薬の開発や承認の世界を分りやすく説明するには工夫がいる。

たとえば「承認審査は神事である」というスライドを私は講演の導入でよく使う。
それを見て、ギョッとする人たちがいる。怒り出す人たちもいる。でも95%以上の人は大笑いする。
(ある団体の方は、事前に送付された私の講演要旨を見て「間違えて宗教関係の学者に講演を依頼したのかと思った」と真剣にビビっていた。ごめんなさい。)

もちろん、そのような説明を試みるのは、単なる受け狙いではない。相当にいろいろ考えた末である。
例えば、制度を考える文脈で、ゲーム理論での共有知識(common knowledge)と儀式の役割なんていうものをチラチラと考えたりもしている。カッコよく言うと。

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それだけでなくて、他にもいろいろな意味を込めている。それをきちんと全部話すと90分くらいかかる。ちょうど講義の一コマくらい。

スライドを見て怒り出す人たちには、喜んで丁寧に一から背景を説明します。それで僕らは最高のお友達になれる。
でも、むしろ本当の課題は、大笑いして、それですべてが終わってしまう人たち(つまり大多数の人たち)にどう接するかなんだろうなぁ。すべての人たちに講義を90分も聴いてもらうわけにはいかないし。