小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

ローストビーフとディスカッション

今日(月曜日)の夜は、恒例の研修(レギュラーコース、RC)の日。 今、夜10時。 私は大学で弁当を食べながら、「おお、そういえば先週ブログを書いてから一週間経ってしまった。 いくら無料奉仕とはいえ、こりゃいかんぞ ・・・」 と思いつつ、パシャパシャとキーボードを叩いているのである。 すまん、すまん。

昨日、あのT国ホテル(注 1)での披露宴にお呼ばれしたのである。 実に感動的で素晴らしい披露宴だったのだが、サル的な自分としては料理の素晴らしさにも感動したわけである。 

(注 1) これほどまでに伏字の意味が無いホテル名も珍しい。

前菜から最後のデザートまで、隙がない。 メインの肉料理は、言わずと知れた 肉の旨味溢れるローストビーフ なり。 それも、なんと 「お代わりしてもいいですよ」 となってるぞ。 ウキー! こりゃたまらん ・・・ と心の中で呟いたのだが、しかし、世の中はそれほど甘くない。 T国ホテルは民間企業であり、慈善事業をやっているわけではない。 ローストビーフは、コースのメイン。 最後のトドメとして出てくるのである。 全日本胃弱連盟 東京支部長の私としては、お代わりは食いたくても食えん。 

「あのね、ホテルのおぢさん。 絶対にここで食べたことにするからさ、そして、食あたりしても訴えたりしないからさ、そのお肉を三枚ほどタッパーに詰めて持って帰るわけにはいくまいか?」 とどれほど言いたかったことか。

あの肉があれば、今の残業ももっと元気で頑張れている気がするのになぁ、学生の論文の修正も3倍の速さで終わるのになぁ、などと思いながら弁当の漬物をポリポリ食っている。 というわけで皆さんお元気ですか。 なんと長い前フリだろう。 すまん、すまん。

頑張っているのは、しかし、私だけではない。 なんとこの遅くまで、RCのグループディスカッション課題に取り組んでいる受講生の皆さんが、私のいるオフィスのすぐ下の講義室にまだいるのだ。 実に熱心に取り組まれていて、こちらの方が頭が下がる思いである。 急に無理するとイヤになるから、楽しくマイペースでやってくださいね。 グループには、アツいヒト、クールなヒト、無関心なヒト、愛想の良いヒト・悪いヒト、ベテラン・素人、いろいろいるだろうが、自分にとって適当な(不愉快にならない)距離感で意見交換してください。

さて、今回のディスカッション課題は、こんな感じである。

<課題 a>
薬物治療の個別化が進むと言われますが、現状のままの規制・医療システムでそれに対応できるでしょうか。 対応できないとすれば、何をどう構築・修正しなければならないでしょうか。 今から30年後の薬剤治療の個別化が進んだ時代を想定して、医薬品の開発・承認の仕組み(例:何が承認申請に際して求められるか)、承認内容(例:用法・用量の具体的な書き方はどうなっているか)、添付文書(例:文書の様態、渡し方、内容)などがどう変わっているかについて、具体例を想像して大胆に提案してください。 (注:製薬企業・当局・医療制度が現状のまま生き延びるという想定を取り外して議論すること。)

<課題 b>
世界各国で Health Technology Assessment と呼ばれる(経済)評価体系が新薬等の承認審査、保険適用に活用されています。 世界各国における現状をごく簡単に説明した上で、HTA の各種方法の活用がグローバル企業の新薬開発行動、及び、各国民の健康 (効率と分配の両方に配慮すること) にどのような影響を与えているかを議論してください。 がん領域などに焦点を絞ってもかまいません。

<課題 c>
数年前「Hib ワクチンに関して製剤の品質(規格、基準等)が問題となり日本への導入が遅れた」と報じられましたが、ワクチンの品質・規格設定に関しては日本と欧米で相違があります。 品質・規格等だけでなく、毒性、薬理等の非臨床領域でもハーモナイズされていない試験(項目)があります。 こうした相違点の中から皆さんが興味深いと思った例をいくつか挙げて、それらが生じている背景・理由を考察するとともに、それらの影響(及びそれらを除いた場合に生じること)をいくつかの(二つ以上の)立場・視点から議論してください。 (注:見かけ上は解消されたはずなのに、現在に影響を及ぼしている(過去の)相違点を選んで議論しても良い。)

<課題 d>
いわゆる「バイオマーカー」が医薬品の開発・評価に広く用いられています。 種類・活用方法等によって「バイオマーカー」を適宜分類した上で、これらの活用の現状をごく簡単に紹介してください。 さらに「バイオマーカー」の活用が新薬研究開発の成功率(の改善・低下)、開発コスト(の削減・増加)、そして(各)国民の健康(効率と分配の両方に配慮すること)とどのように関係しているかを議論してください。 具体例で議論してもかまいません。

いかがでしょうか。

一見簡単に見えるものもあれば、頭を抱えたくなるものもあります。 こうした課題でディスカッションをしてもらうのは、それぞれの領域固有の背景や知識をこの際たっぷり学んでもらいたいという意図がむろんあるのですが、このコースでのディスカッションの目的はそれだけではありません。 課題の中に見え隠れしているややこしい言葉(概念)にお気づきでしょうか? ある立場・視点で議論するとは、いったいどのような議論の仕方を指すのでしょうか? 国民の健康って、何でしょうか? ・・・・

議論をするときには、この記事 → 医薬品政策や規制の議論の仕方を覚えよう - 小野俊介 サル的日記 で述べたようなことにも注意すると良いと思います。 これは昨年度のRC受講生向けに書いたものです。 ご参考までに。 でもね、最初から私の言うことに縛られることはありません。 まずは好きなように、伸び伸びと、自分たちの考えていることを主張してみてください。 なーに、発表に失敗したところで、みんなや講師にいじめられてちょっと涙目になるだけの話ですよ。 なんてことないさ。

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さて遅くなってしまったので、帰ろうっと。 今日はビッグコミック最新号を読みながら帰るか。 前号では修験者の格好をして右手の震えを治していたゴルゴ13だが、元の完璧なスナイパーに戻っただろうか。 心配である。