小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

なぜ経済学を勉強しなければならないの?

今日はヘロヘロなので、ややこしいことは書けません。 すみません。

Iさん、お久しぶりでした。 十数年間、ともにいろいろな前線で戦ってきた戦友と話をすると、「よし、僕ももうひと頑張りするか」という気分になります。 お互い頑張りましょう!

夕方、出張講義を受けた○社の皆さん、お疲れ様でした。 これまでの他社での講義の経験上、経済学の基本的な概念の説明(つまり、今回と次回の講義)が、一番皆さんにとって理解しにくく、目が点になるところです。

なんと恐ろしいことに、次のような概念を2時間少しで教えている。 いや、教えようと試みている。

  • 限界概念 marginal
  • 需要、供給
  • 余剰の概念 surplus
  • 厚生経済学の第一定理、第二定理
  • グロスマンの健康モデル
  • いわゆる「医療経済学(薬剤の費用効果分析など)」とのつながり

どう考えても無理である。 経済学部の学生が数カ月から半年くらいで習う内容(に加えて、医療経済学の出発点)を2時間で、というのは。 教える私が無理だと思っているのだから、教わる皆さんは苦しいに決まっている。 講義の途中では、無能な牟田口司令官のせいで大変な悲劇が起きたインパール戦のごとき様相を呈していた。 なので、ぜひクルーグマンか、マンキューの教科書を買ってください。

クルーグマン ミクロ経済学

クルーグマン ミクロ経済学

皆さん、「新薬を開発したり、承認申請の仕事をしている我々が、なぜ経済学を勉強しなきゃいけないの?」と疑問に思ってますよね? 

私の答えは「新薬を開発したり、承認申請・審査の仕事をしている方々が、なぜ経済学を知らないで済むと思っているのかがわからない」です。 こんな意地悪な答えをするから、私のことをよく知らないヒトたちから怖い人扱い、危険人物扱いされる(笑)。 反省。 私は全然コワくないっすよ。

少しまともに答えると、前回(6/25)の記事 2012-06-25 - 小野俊介 サル的日記 で書いた、次の部分に対する回答を与えるのが経済学だから、ということになる。

2. あなたが評価すべきは、薬というモノではありません。 社会を構成する(たくさんの)人間の幸せの状態です。

薬が固いとか、白いとか、不純物が多い・少ないとか、仮想の平均人によく効く・効かないとか、安全だとか(通常の臨床試験の結果ね)、そこで終わっては、まったく何も評価していないのと同じです。

経済学、あるいはそれに匹敵する社会的な価値判断の体系に基づかないことには、どう考えても、社会を構成するたくさんの人間の幸せの状態をちゃんと評価することはできません。 経済学は、新薬の承認の可否を判断する人々にとって、必須の科学なのです。 (倫理も必須。 くどいようだけど。)

ところで、「医薬品のリスクベネフィット評価を科学的に行うことが重要である。 そして、その先にある医薬品の経済評価(費用効果分析など)をどう活用するかも、今後の薬価制度のあり方として議論されている」といった文章を最近よく見かけるが、まったく意味不明である。

「科学的に」って、いったいどんな科学だろう? 「経済評価がその先にある」っていうのも奇妙。 一般的な費用効果(効用)分析 cost-effectiveness analysis なんて、道徳原理の樹に照らせば、新薬の価値評価の様態の一つ(それも個人間の比較可能性まで前提とするかなりマニアックな功利主義的方法である)にすぎないのだから、むしろ「医薬品の経済評価の先に、広義のリスクベネフィット評価がある」と言うべき、と私は思う。

ああ、ヘロヘロなのに、また理屈をこねて睡眠時間を削ってしまった。 ダメだこりゃ(・・・といかりや長介風に。 自分って昭和だなぁ。)

昭和といえば、ニッポン放送の、あのツカちゃんが自殺したというニュース。 悲しい。