小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

真に無意味な記事を書かない

い、いや、断じてそうではない。 今、私の口のまわりについているチョコのかけらは、ロッテのラミーではないのだ。 冷蔵庫に昨年産のラミーがまだ3箱残っているというのに、どうしても我慢できなくて、昨日買ってしまった今季産のラミーなんかではないのだ。 サル的なヒトを信じてほしい。 7年近く無料であんたらをブログ記事で楽しませてきたオレの言うことが信じられないっていうのか? えっ!?

・・・ と読者を恫喝するサル的なヒト。 皆さんお元気? 自分の風邪は治ったが、周囲の人たちがどんどん風邪をひいている。 注意してね。

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医薬品業界の言葉遣いのいい加減さ、相変わらず無茶苦茶である。 一年ほど前にも同じことを書いたのだが (これね → 真にサル的なヒトはこう考える - 小野俊介 サル的日記)、状況はますますひどくなっているような気がするので、再度取り上げる。 昨日も業界紙を読んでたら、こんな記事があった。

参院・厚労委 「国大病院は院内調剤に」、文科省は否定

文部科学省の森晃憲審議官は22日の参院厚生労働委員会で、「国立大学附属病院を中心に院内調剤に戻してはどうか」との主張に対し「文科省として、院内処方に戻す必要があるとは考えていない」と述べた。立憲民主党川田龍平議員への答弁。
(中略)
厚労省の吉田学医政局長も見解を問われ、医療機関を所管する厚労省としては「医薬分業が 真の意味で 国民の皆様方の役に立つようなかたちで、それぞれ地域や医療機関で実現できるように注力していきたい」と語った。
(RISFAX 2018.11.26)

ぷっ。 定期的に湧いて出るのな、「真の意味で」 症候群患者。 そうかそうか、医薬分業は 一見すると・フツーのシロウト感覚では 市民の役に立っていないような気が私もしていたのだが、お役人自身もそう思っていることを認めたわけね。

まともな日本語の使い手なら 「真の意味ってなんだよ、それ。 アホか」 と一笑に付すレベルの表現が、お役所の文書に最近よく出てくるのよ。 たとえば厚労省の医薬品産業強化総合戦略(2015) とやらには

・・・ 真に有効な新薬 の適正な評価等を通じた医薬品産業の国際競争力強化に向けた必要な措置を検討する。

と書いてある。 これを最初に見た時には、「あーあ。 お役所のヒト、激務で頭のネジが飛んじゃったんだなぁ」 とむしろ気の毒に思ったのである。

だって、「真に有効な新薬」 というものが存在するのなら、当然に 「ホントは有効でない (承認ずみの) 新薬」 とか 「ウソで有効な (承認ずみの) 新薬」 とかっていうのもあるってでしょ? それをお役所自身がついに公式に認めたわけである。 それってどの薬なんだろう? 昔から噂のあるアレか? それとも再評価指定されると昔から言われているけど、なぜか指定されないアレかな? お役所はいつそれを公表するんだろう? オラ悟空。 なんだかワクワクしてきたぞ! ・・・ などと思っていたのである。

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ところが、この 「真に有効な」 症候群、一過性の流行り病ではなく、慢性疾患 (あるいは不治の病) であることが判明。 呆れたことにお役所はその後もこの意味不明語を使い続けているのだ。 たとえば中医協に登場した 「薬価制度の抜本改革について(2017)」 なる文書。

現行では、乖離率(薬価差)が全医薬品の平均以下であることが (新薬創出加算の) 要件であるが、真に有効な 医薬品を適切に見極めてイノベーションを評価し、 研究開発投資の促進を図るため、対象品目は、次に掲げる 真に革新性・有用性のある医薬品 に限定する。 ・・・

・・・。 ギャグではないのよ、これ。 これを書いた人、もはや錯乱してるよね。 真の、真の、真の ・・・ と言い続けるうちに精神がやられて、革新性や有用性にまで 「真の」 を付けないといけなくなったらしい。 見ててごらん、この人たちそのうち、

  • 真の安全性
  • 真のリスクベネフィット
  • 真の承認 (あ、これもう平然と使ってるわ、お役所の人たち (笑))
  • 真のドラッグラグ (あ、これももう確信犯的に使われてる。 解消せずに現在も持続するドラッグラグは 「偽のドラッグラグ」 なのな (笑))
  • 真の適応(投与対象)

とか言い始めるはずだよ。 これらの概念みんな、そもそも業界人 (産官学すべて) がまともに定義したことも、議論したこともないものばかりであることに気づくでしょ? 分かったような顔して日々使っているくせに、実はろくに考えたこともない概念について、誰かに突っ込みを入れられると、急にオタオタして 「真の〇〇」 なんて表現で逃げるわけである。 情けねーの。

あるいは、GCP調査に行った先の医療機関で 「あのですね、この病院の書類管理の方法は形式上GCP省令を守ってますが、 真のGCP遵守 とは言えないんですよ! 真の意味で GCPを守りなさいよ、あんたたち!! ムッキーっ!!」 などと難癖付ける質の悪いPMDA職員が登場するかもしれん ・・・ いや、そういうGCP査察官、昔からいるよな (笑)。

世の中で使われる言葉は、世の中の人々の正気の程度を反映する。 「最低賃金以下で働かされて、怖くなって・我慢できずに、逃げた」 を 「より高い賃金を求め失踪した」 と翻訳するのが今日日のニポンである。 正気を保つことなどとっくに放棄してる。

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最近忙しすぎて本が読めないけど、これは面白かったっす。 おすすめ。 というかベストセラー。

すぐ死ぬんだから

すぐ死ぬんだから

まだ50代なのに 「どうせ死ぬんだから、ユニクロの服着てれば幸せ」 とつい公言してしまいたくなる自分にどう向き合うべきかをしみじみと考えさせられましたよ。