小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

不確実性と情報の価値の話

さて、いかがでしたか、モンティ・ホール問題。 2012-07-30 - 小野俊介 サル的日記

(問題の前半部分 略)
閉まったままの残りのドアはAとBです。 さあ、最終決断の時が来ました。 あなたの決断、それは次のどちらかです。

[1] 「初志貫徹なのじゃ。 最初に指定したAを開けてくれ」
[2] 「最初に指定したAではなく、Bの方が当たりのような気がしてきた。 Bを開けてくれ」

さぁ、あなたは、[1] か [2] か、どちらを選びますか?

当たりを狙う人(自動車が欲しい人)にとっての正解は [2] です。 (ヤギさんが欲しい人にとっての正解は [1] (笑))

条件付き確率で考えると、

[1] 「久米宏がCを開けた場合にAが当たりの確率」= 1/3
[2] 「久米宏がCを開けた場合にBが当たりの確率」= 2/3

となり、Bに移った方が相当に(2倍くらい)有利になります。 

いろんな説明の仕方があるのだが、直感的にわかりやすいのは、この100個の箱で考えるバージョンかな。

司会者 「1-100までの番号がついた 100個の箱があります。賞品が 1 個だけに入っています。 最初に、1 個だけ「これだ」と思う箱を指定してください。 そうすれば大サービス。 その 1 個を除く99個の箱のうち、私が98個を開けてあげましょう!」

あなたは、ラッキーナンバー7が怪しいとにらんで、7番を選択。

どの箱に賞品が入っているか知っている司会者は、7番の箱を除く 99 個の箱を、端から順にパコパコと開けていく。 ・・・パコパコパコパコ・・・(なぜか62番の箱の前は素通り) ・・・ パコパコパコ。

司会者 「ふぅ、98個も開けるのは大変でした。 さて、あなたの選んだ7番と62番の箱の2つが残されました。 さて、最終決断です。 あなたは7番の箱と 62 番の箱、どちらを選択しますか?」

これで7番の箱を選ぶ人は、相当度胸のある人である。 普通の人は62番に移るよね。 3個のドアでも原理はこれと同じです。

さて、多くの人たちが混乱し、誤った解答をするのは、分り易く言うと(全然分り易くはないのだが)「情報をどのように得たのか」ということ自体が情報になっていることを考慮しなかったから、とされる。 司会者(久米宏)は、どこに正解があるかを知った上で、ゲームのルールに従って、ドア(箱)を開けるわけだ。 だから、司会者が開けた・開けなかったという事実には、単にドアの後ろに賞品が無かったということ以上の情報がある、ということ。

そんなこと言われても何のことかわからんという人は、ググるか、教科書を買うかして勉強してください。

この問題は、不確実性下(注)において得られた事実から何を学ぶか、という観点からの問題である。 「事実」を、いつもとは違う視点から見つめると、そこに別の情報が隠されているかもしれない、というのがポイントです。

(注)不確実性 と リスク は、意思決定理論においては全く別の状況を意味する言葉です。 ちゃんと勉強しましょう。 必要ならば、無料出張講義に行きますから、いつでもご要請ください。

で、最後に、薬が効くかどうか、とか、安全かどうか、とかいう問題との関係。

モンティ・ホール問題と承認審査は、むろんゲームのルールが根本的に違うのだが、承認審査をガチンコのプロセスと仮定するならば、そこでは「申請データが示すこと」だけではなく、「ルールの下で、その申請企業がデータを提出したこと」の意味を考えねばならない、という感じかな。 

薬事法のルールは、「薬が有効・安全であることを示す申請データを出すべし。 でも、有効・安全でないことを示すデータも出すべし」という支離滅裂なもの(笑)である。 そのルールの下で作成・提出されたデータパッケージなるものの内容の解釈には、「ルールの支離滅裂さに従って企業が行動した結果であること」を織り込むべきですね。 もし承認審査が、ガチンコ勝負なのであれば。 

でも現実はガチンコ勝負ではないから(むしろ神事に近いから)、こんな話が PMDA の戦略相談の話題になることは決してないでしょう。 いかがですか?

(注) それ以前の情けない問題(例えば、薬事法の有効性、安全性といった言葉がそもそも一度も定義されたことがないとか、「企業は利潤追求者だから、データをごまかす可能性がある」といった怪しい先入観が ad hoc に出てくるだとか)は、ここで述べている問題とは別次元ですよ。 誤解なきよう。 実際は、これらも大問題です。

ということで、この辺で止めます。 最後まで理屈をちゃんと読んでくださった方、ありがとね。

さぁ、今日もオリンピックの柔道を見て、すっきり寝ましょう! 柔道でのジュリー(jury)の導入、私は賛成。 今日のブログの記事を読んだら、新薬の承認審査に jury が必要なわけも理解できますね。 手前味噌ですが(笑)