小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

相も変わらずオールジャパン ・・・

前にも書いたが (これ → オールジャパンのいかがわしさ - 小野俊介 サル的日記) が、何度でもしつこく書く。 これできるのが個人ブログのいいところだ。 

いやはや、大手メディアの報道はどうしてこうも思考停止した決まり文句を使い続けるのだろうか。 今日もネットで新聞読んでいたら、M日新聞さんの記事にこんなのがあった。

(iPS細胞などを使う再生医療を安全に推進するために)国が研究開発から実用化までの基本方針を策定。 医療関係者や事業者にも協力を求め、オールジャパンの推進体制 を作る。 (以下略)

ホント好きだよね、記者さんたち。 オールジャパンが。 株価も上がってることだし、なんか威勢がいい言葉を書いておけば読者も悪い気はしないだろうしな ・・・ くらいなものなのだろうけど。

こういう記事を書いている方々と一度ゆっくり話がしたいものである。 オールジャパンって一体誰と誰と誰なのよ? 境界線はどのあたりなのよ? 外人さんは入ってるの? 入ってないの? 外資系企業で働いている人たちはオールジャパンに入れるのだろうか? AKB48のメンバーの資格よりもずっと不透明だよ。

はっきり言って、そんなにオールジャパンが好きなら鎖国しちゃえばいいじゃないか、とすら思える。 TPPよ、さようなら ・・・ といっても、医薬品産業は 1990 年代に既にICHというTPPに参加してるから、もうあまり関係ないのだが。

オールジャパンにも、「良いオールジャパン」 と 「悪いオールジャパン」 があるらしくて、それも笑える。

オールジャパン」見直し 政府 国際企業連合にも補助 (読売 2012年 6月 15日)  

 政府は、成長戦略の柱と位置づけるインフラ(社会基盤)輸出の競争力強化策をまとめた。補助金支給の対象を、日本企業だけで作る「日の丸連合」に限定せず、日本企業と外国企業との連合にも広げることが柱だ。今月末の関係閣僚会合で正式決定し、年内に策定する「日本再生の基本戦略」に盛り込む。
 補助金対象の拡大は、人件費が比較的安い現地企業との連携を促すことによって、中国や韓国に比べて劣るとされている日本企業の価格競争力を高める狙いがある。

 アメリカとかイギリスとかの強い国と仮に組んだら、それは 「悪いオールジャパン」で、途上国のような弱い国と組むのは 「良いオールジャパン」なんだそうだ。 なんというご都合主義のオールジャパン(笑)

こうした勢いだけの記事を書く記者さんは、「日本では医薬品の輸出額よりも輸入額が圧倒的に多くて、オールジャパンは大ピーンチ!」 なんてことを平気で書くんだよな。 いや、記者さんだけじゃない。 日本の産学官すべての人たちが平気でそんなことを言う。 そういう人たちは、日本の製薬産業界のシンクタンクである医薬産業政策研究所(OPIR)の長澤優統括研究員の報告をちゃんと読んで、頭を冷やすべきである。 長澤氏の指摘はきわめて分り易く、鋭い。 長澤氏の研究報告はこちらの56ページ → http://www.jpma.or.jp/opir/news/news-36.pdf

サルの私が大胆かつ分り易く解説すると (長澤様、ご容赦ください)、

「医薬品の輸出額と輸入額の差をとって、圧倒的に輸入超過だから、日本の製薬産業ピーーーンチ! 競争力低下だっ!」 なんて意味不明のことを言うのは、いい加減止めましょうよ」
ということである。 例えば、海外で製品を現地生産して、おカネを稼いでくる日本の企業が頑張っているとかいう側面を無視した統計から日本企業の競争力を語る、といった訳のわからんことをしてはいけない、ということである。

オールジャパンでコメ作りを推進しよう
オールジャパンでかっこいい自動車作りを推進しよう
オールジャパンでオリンピックを誘致しよう
オールジャパンで野球チームを応援しよう
オールジャパンで ・・・・

そんなにオールジャパンが好きなら、これでもじっくり聴いてくだされ。 これも再掲だ(笑) オレってホントにこの曲が好きなんだなぁ ・・・

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オールジャパン」だの、「我々日本人は ・・」だのという言葉を使わずに、あなたが好ましいと思う社会の姿、社会の中にいるプレイヤー(法人、自然人)の姿を語ってみましょう。 オールジャパンなんて意味不明な言葉で、あなたとあなたの隣人の間の利害やトレードオフを隠してみたところで、現実は何も変わらないのですよ。

業界の人たち、政府の人たち、研究者たち、皆さんそう軽はずみに 「私たちの思いは一つです」だの、「我々の目的は一緒です」 だのとウソをついてはいけないのです。 だって、みんなの社会における役割・使命は違うのよ。 違うから価値があるし、尊いのよ。 外人さんと日本人の役割・目的が違うことを認識しているからオールジャパンなんて言葉が生まれるのだが、それが分かっているのならば、同様に日本人同士でも役割・目的もみんな違うことくらい、理解しましょう。 

我々日本人(この言葉をあえて使おう)に必要なのは、もっと互いをきちんと批判し合うこと。 産業界は政府を、政府は産業界を、「あなたはこれをすべき」 「あなたのここは変」 と正しく批判し合う。 それができた人たちが初めて 「オールジャパン」 を口にする資格があると思います。 で、どうですかね。 例えば日本の医薬品産業界と当局は、激しくお互いに意見をぶつけ合ってますかね? 談合 collusion 体質じゃないですかね?

今必要なのは、ゆるーい(偽物の)仲間意識ではない。 同胞の間での役割・見解の相違、利害の不一致、喧嘩が起きているところを、きちんと全部隠さずに表に出すこと、主張することです。 時に対立する利害を抱え、多様な主張を有し、異なる才能を持った同胞であるからこそ、いざ仲間になると強いのだ。 そんなことくらい、ワンピース(少年ジャンプ)やフェアリーテイル少年マガジン)を読んでいれば小学生だって知ってるぞ。 むろん、日本の産業界の仮想敵国(笑。 正確には憧れの対象)の住人、アメリカ人の多くも知ってる。

そろそろ大人になろうよ、みんな。 あなたたちは、私のようなことを言う人間をガキだと思っているだろうが、私から見れば、あなたたちの方がよっぽど幼稚なクソガキお子様に見える(笑)