地下鉄の本郷三丁目の駅を出てすぐのところに、立ち食いそば屋がある。 今朝、そのそば屋の前に、携帯で誰かと通話中の40歳くらいのサラリーマンが立っていた。 おじさん、やたらとそば屋の店内をのぞき込んでいる。 挙動不審そのものである。
そのおじさん、「あー、もしもし、電車が遅れててすみません。 今ですか? 今、私、本郷三丁目から30分くらいのところまでは来てるんですけど ・・・ はい、はい ・・・ あと30分後に本郷三丁目に着きますので、よろしくお願いします」
といって電話を切るなり、そば屋へ突入したのだった。 あいやー。 ここまで分かり易い嘘つきは久しぶりに見たぞ(笑)。 でもまったく憎めないし、悪いことだとも思えないのはなぜだろう。 このくらいの嘘はよくあること。 「すみません、その日は別の約束が入っていて、どうしても出席できません」 なんていって会議や依頼を断ることはよくある。 社会は嘘という潤滑油がないと回らない。
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先週、私の教室のプチ同窓会があったのである。 10年ほど前からの教え子のうち、近場で働く連中が集まってくれた。 うちの教室には、学部から進学してくるピチピチの学生と、博士課程から入学してくる (必ずしもピチピチとはいえない) 社会人学生がいる。 後者はだいたい製薬企業などの社員なのだが、前者、つまりピチピチの学生の卒業後の進路は実にさまざまである。
卒業生の中には、弁護士、公認会計士、ファンドマネージャー、コンサル、アクチュアリー (actuary。 保険数理士) ・・・ といったヤツらがいて、話をするのがとても楽しいのである。 というか、オトナの世界の醜いもめ事でピンチに陥ったときにこいつらに助けてもらえそうで、センセイとしてはとても嬉しい。 製薬会社・商社などの企業や役所に手堅く就職した学生も多い。 そういう卒業生とは既に仕事でお付き合いがあったりもする。
以前、「君自身が変わり者だから、変わった学生に慕われるんじゃないか?」 と何ともストレートに嫌味を言われたことがある。 変わっているかどうかなんて所詮偏見と結果論である。 今こうして立派に社会の第一線で活躍している教え子たちを前にすると、その嫌味の言葉はむしろ最高の褒め言葉だなぁと思えます。 これもすべてみんなのおかげ。 本当にありがとね。
一つだけ、プチ同窓会で言いそびれたことをここで言わせてもらおう。 みんなへのお願いである。
本講座の同窓生は、上げ潮・上り調子の時だけでなく、調子が悪い時・困り果てた時の朋友・支えであってください。 あなたが、いい会社に勤めて、いい給料をもらって、健康にも恵まれて、大きな仕事をしている時、そういう時にはいろんな人たちが放っておいてもあなたにすり寄ってくる。 「お互いのネットワークを活用して win-win しようぜ」 なんていう欲の皮の突っ張った付き合いはいくらでもできる。 虚栄の市はいつでも栄えるもの。
でもね、人生いい時ばかりじゃない。 というか、そんな満ち足りた時は人生のほんの一瞬 (それすら錯覚だったりして)。 僕らはみんな、いつだって、何かが欠けた、何かが足りない人生を延々と生きているのよ。 さらに悪いことに、時々、とてつもなく困ったことが起きる。
困ったとき、疲れたとき、悲しいとき、泣きそうなとき、痛いとき、空腹のとき。 うちの同窓生はそういうときの友達でいよう。
例えば、やくざの危ない金を運用し損ねて、命を狙われている同窓生が助けを求めに来たら、見捨てずに助けてあげよう (例えば当座の逃亡資金として10万円くらいの金を持たせてやろう)。 病気になって気弱になっている同窓生がいたら、連絡をして何かできることがないか話をきいてあげよう。 失業して路頭をさまよいそうな同窓生がいたら、みんなでコネを紹介してあげよう。 家庭がうまくいってなさそうな同窓生がいたら、つかず離れず見守りながら、何かの時の心の支えになってあげよう。
それでこそ僕らは薬評一門。 薬評の同窓生。 ね。 頼むぞ。
最後にもう一つ。 おまいら口をそろえて 「小野センセのようにいつまでも尖 (とが) っていたいと思います」 って、ヒトのことをとんがりコーンみたいに言うなぁ! ムッキー! \(*`∧´)/
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明日は大学院の修了式。 今年は2人の修士の学生が無事卒業します。 ややこしい回帰分析の手法もマスターしたし (ただしあくまで introductory のレベルだからね。 引き続き勉強してください)、研究もよくやりました。
医薬品評価道の師匠として、これ以上君らに伝授することは何もない。 社会に出る君たちに贈る最後の秘伝は、これだ。 門外の者には決して他言しないように。
中華に外れなし。
Lomein はラーメンにあらず。
(意味がわからない修行不足な学生は 膝は人間の要なり - 小野俊介 サル的日記 を復習せよ。)
以上だ。
卒業、おめでとう。