小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

物語せよと言へ

BID ME DISCOURSE. I WILL ENCHANT THINE EAR.
物語せよと言へ。 我、汝の耳を魅する話をせむ。 by W. シェークスピア

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連休は幸せである。 新緑が美しいし、タンポポも咲くし、暑からず寒からずで気分がいいし。 近所のニャンコは恒例の恋の季節らしく、この世のものとは思えぬ呻き声をあげて追いかけっこをしてるし。

カブトムシも羽化(成虫になること)に向けて最終段階である。 これまでは、大きな容器でいわゆるタコ飼い(まとめて10匹くらいを放り込んでおく) だったのだが、先週、羽化に向けて一匹ずつ2リットルのペットボトル製容器に移してやった。 もう少ししたら、こいつらは、ペットボトルの中で小さな鶏卵くらいのスペースの小部屋を、ぺったんぺったんと内側を固めて自分で作る。 その中で蛹 (さなぎ) になり、2−3週間であの真っ黒いカブトムシとなって外に這い出して来る。

というわけで、こいつら、虫の分際で各自ペットボトルハウスという一軒家を持っているのである。

タコ飼いで生存競争が激しかったせいか、今年の幼虫 (芋虫) は元気が良すぎて、ちょっと困ったことになっている。 なんと、ペットボトルの底を食い破って脱走を図るヤツが登場。 こんな凶暴なヤツは飼育史上初なのだ。 ペットボトルの上部から脱走する奴らも続出。 ペットボトルハウスって、上部をカッターナイフで切って、ティッシュペーパーをかぶせて、輪ゴムでとめたただけの簡単な作りなので、マット(土)の中から出てきて、背伸び (笑) して、ティッシュペーパーを食いちぎって、容器の外にダイブしてしまう猛者がいるのだ。

外にダイブした形跡があるのに、逃げたはずの幼虫がどこにも見つからず、「あいやー、どこに消えたのだ? 家人が踏んづけたら恐ろしいことになるぞ ・・・」 と焦って探してたら、なんと隣のペットボトルに勝手に侵入していた、なんて経験も今年が初めてである。

そんなこんなで、カブトムシ飼育業者としては大変な日々なのである。 元々狭い集合住宅の我が家の一室がますます狭く、足の踏み場もない。 けどね、これでいいのだ。  「カブトムシ、欲しい?」 って声をかけたときに、近所のチビッ子たちが見せてくれる、顔中がパッと輝いたような、あの何とも言えない喜びの表情。 それが間もなく見られると思えば、こんな苦労は苦労のうちには入らんさ。

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大学の研究室は引っ越し完了。 が、私の本・書類が入った段ボールが 40箱近く、未開封のまま部屋の中に積まれたまま。 ドタバタしていて開封する時間が無いのよ。 秘書さんたちに申し訳ないとは思いつつ。

オフィスが移ったことを頭が未だ認識しておらず、放っておくとこれまでのオフィスに足が向かってしまう。 今朝も、元のオフィスの前で、真っ暗な部屋の前に立って、「あぁ、今日はゴールデンウィークだから学生が誰も来てないんだなぁ、ウフフ、あいつら若者は連休を楽しんでるかなぁ ・・」 なんて薄ボンヤリと納得してしまった自分。 それから3秒くらいしてから、「あ、今のオレの部屋、ここぢゃない。 引っ越したんだっけ」 と気が付いた。 相当にヤバいぞ、自分。 MCI (mild cognitive impairment。軽度認知障害) を飛び越えて、一気に危険な領域に入った老人並の空間把握能力である。

ややこしいことを考えながら歩いているときが特に危ない。 今、論理学と法 (規制) の関係を楽しく勉強しているのだが、頭の中で論証の妥当性とトートロジーの関係を導く定理の証明などのことを考えながら、頭の中で真理値割り当てなどを行って、「これは反例が無いことの証明をすればいいんだよな」 などとブツブツつぶやきながら歩いていると、ほぼ間違いなく元のオフィスの前に無意識に到着してしまうのである。 うーむ。

いつになったら、サル的なヒトは無意識のうちに現在のオフィスに正しく到着できるようになるのか。 人類進化の鍵は、案外、そのあたりにあるのかもしれない。(注 1)

(注 1) いや、そこには無いと思う。

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あ、そうそう、今、無料動画の Gyao! で、あの周防監督の名作 「Shall we ダンス?」 やってます。
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あの映画、実は結構長い( 2時間 20分くらいある) のだけど、テレビで放映される時にはいろんなところがカットされているのよ。 今回、カットなしの全編をしっかり観て、トイレのシーン (あのお笑いシーン以外にもあるのね) とか、夜道のシーンとか、探偵さんのシーンとか、しんみりとした実に素晴らしい場面をずいぶん見落としていたことに気づいた。 こりゃいかん。

そこのあなた。 連休なんだもの、じっくり全編を見直して、ホロホロと涙を流しましょうね。

なに? 形だけのグローバル開発業に魂を売って心が荒みきった医薬品業界人は、あの映画くらいでは涙が出ない? ふーむ ・・・ ぢゃあ、これもおまけに紹介しよう。 「アイムホーム」

石坂啓さんの伝説的な名作マンガである。 今、キムタク主演でテレビドラマやってるけど、原作とは無縁の奇妙な代物になっている。 が、テレビドラマだから仕方ない。(注 2) ぜひ書店でこの原作 (上下巻) をお買い求めになって、人生と家族に思いを馳せてください。

あなたの 「ただいま」 に応えてくれるヒトは、いますか? 生きてると 「おかえり」 って心からあなたを迎え入れてくれる人が、この世には誰もいなくなるのよ。 誰でも。 遅かれ早かれ。

(注 2) 昔、NHKもドラマ化しましたよね。 時任三郎が主役。 このNHK版の方が、哀しい心の闇がずっと痛切に伝わってきたような気がする。 テーマ曲の大塚愛の 「大好きだよ」 がまた何とも言えず良かったっけ。

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というわけで、今日僕がする物語は、ゆるーく、この辺で。 連休だもの。