小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

無料出張講義は続くのよ、どこまでも

申し訳ないことにブログ更新が滞ってしまった。 すまんすまん。 ブログ更新が滞るということは、リア充 (リアル生活が充実してるからブログに逃避しない) か、逆に、ブログを書くのもイヤなくらいしんどい精神状態にあるか、のどちらかなのだが、残念ながら今回はそのどちらでもない。 細かい仕事がたくさんあるという、適度に不幸な状況(笑)。 つまりフツーの日々である。

では今日はなんでブログを書いているのかというと、京都からの帰りの新幹線の車上だからだ。 例の完全無料出張講義、全10回シリーズを京都の某社で絶賛実施中なのだ。 はんなりした、やさしい会社でありつつも、1回目の講義で私が出した宿題 (基数、序数の概念と薬効評価の関係ね) に早速対応してくれており、実にやる気のある会社さんなのである。 素晴らしい。

今日の出張講義では、京都と京都の人々をあまりにステレオタイプに扱って、まことに失礼しました。 京都の会議室は冬場にマイナス5度になるわけではなく、大学の人たちがすべて左寄りなわけがないことくらい、私も十分知っておりますので、ご安心ください。

さて、京都といえば、これから紅葉の季節、観光シーズン。 今日も京都駅にはすさまじい数の外人さんがいた。 ツアコンのおばちゃんが、案内用の旗を持って、英語で 「はーい、みなさん、そこのトイレでオシッコして、あそこの売店で八つ橋買って、それから15分後に新幹線11番ホームに上がってね! ああっ、あなた、八つ橋は堅いの買っちゃダメだってあれほど言ったでしょ、もうっ!」 と目の青いおじさん・おばさんたちにテキパキ指示している姿が微笑ましかったりする。

この完全無料出張講義、もう14社目である。 私のライフワークになりつつある。 講義をしていると、楽しくて仕方ないのだ。 だって、この講義シリーズの内容こそが、私が最も教えたいことだから。 大学の正規の講義では、教えるべきことがおおむね決められている。 時々ブログに書くレギュラーコース (RC) では、実際の業務に直結したことを教えないといけない。 そうした大人の事情があって、大学の先生といえども、本当に教えたいことがなかなか教えられないのだ。 だから、そうした公式講義とは別に、無料出張講義をやっている。 無料出張講義では、現在の日本の業界人に最も教えるべき価値があると思うことを、のびのびと、制約なしに、教えられるのよ。
 
もう一つ、無理してでも無料出張講義をやらないといけない理由がある。 それは、この講義が、「れぎゅらとりーさいえんす(長くて、書いているだけで気分悪いから、「れ・さ」とする) という名の危険な流行病に対して、今の日本で手に入る唯一のワクチンだという信念があるから。 最近の医薬品業界人・学者の 「れ・さ」 への悪乗りって、ひどすぎだ。 老若男女、声を揃えて 「これは 『れ・さ』 で取り組むべき課題である。以上」。 それで終わり。 それ以上何もない。 あるいは、自分たちのメシのタネすべてに 「れ・さ」 とラベルを付けて、「ここはオレの守備範囲だからな、おまいら分かってるよな?」 と縄張りのシグナルにしている人たちもいる。 いろんな意味で奇妙で、笑える光景である。 が、恐ろしいことに、ふと周りを見渡すと、この異様な光景を堂々と大笑いしているのって、日本でわずか数人 (私を含む) なのである。(注 1)

(注 1) しかも、その数少ない大笑い仲間なのに、仲間にいきなり殴りかかってくる大御所のおじいさんがいたりして、困ったものなのだ。 Sセンセ、頼むから敵と味方を間違えないでね。

公然の事実だが、「れぎゅらとりーさいえんす? あれって実体ないよ」 と新橋や虎の門あたりの飲み屋では堂々とおっしゃる方々はたくさんいるのよ。 いや、むしろそちらの割合の方が高いかも。 でもね、メシの食い扶持がかかった会社員・公務員の顔になると、態度は一変して、「日本のれぎゅらとりーさいえんすを推進し、世界に輸出するのです!」 などと意味不明のスローガンを唱え始める。 いやはや。 みんなも辛いんだよね、ホントは。 わかるよ、よくわかる。

「れ・さ」 の苦しさはまた次回以降にきちんと解説するとして、話を戻そう。 無料出張講義の話。

受講生の皆さん、今日の倫理の講義はいかがでしたか? 「ワクチンの製造方法を勝手に変えちゃって、厚労省から大目玉を食らっている某社の件を例にとって、あの状況の善い・悪いを議論してみましょう」 なんて議論もやったわけだが、面白かったでしょ? 厚労省に叱られるかどうかしか善い・悪いの判断基準が無い企業人というのでは情けない。 自分の力で善い・悪いをちゃんと考え、さらに大事なのは、それを適切な言葉・概念で表現できること。 倫理をきちんと学ばないと、その表現の術がないのです。 そのことが分かってもらえれば、私の講義の目的は達成されてます。 バーグソン・サミュエルソン型の社会厚生関数の条件 (ほれ、私が連続殺人犯だった時の偏微分係数ですよ。 思い出した?) とかは忘れてもよろしい。

この講義をやることで、私自身も、今の行政・産業・科学の構図を捉えるために必要な学問・科学を幅広く勉強できるので、とても助かっている。 例えばゲーム理論。 現在の社会科学の理解には必須なので、当然、講義に盛り込んでいる。 規制当局と企業の関係なんて、そうした理論がないと、まともに分析したり、議論したりできないのである。 実は今日も、この新幹線の車内で講義の準備をしていて、これまでどうしても腑に落ちなかったフォーク定理の含意と証明が初めてちゃんと理解できて、感激したのである。 おおっ、そういうことかぁ! って感じ。(注 2)

(注 2) 公共心を欠いた、自分のことだけが大切な人たち (例: 私やあなた(笑)) であっても、長期的な関係では、誰もが納得する全員の行動パターンが必ず一つは存在する、というもの。 そうした行動パターンが、社会の規範・ルールの源になっている可能性がある。

というわけで、これからも続けますよ、無料出張講義。 要望があれば、いつでもどこでも私が行きますので、直接コンタクトしてください。 ホントに無料だから、安心してね。 あ、交通費の実費だけは頂きます。

ご要望があるのなら、「れぎゅらとりーさいえんす」 のご本尊にも喜んで出向いて講義しますよ。 むろん無料で(笑)。 若手職員で講義を聴きたい方は、研修担当のおじさん・おばさんをつついてみてはどうですか。 きっと、「あんな悪いヒトの講義、良い子は聞いちゃいけませんっ!」 って叱られるだろうけどな。

というわけで、みんな、頑張って勉強しましょうね。 この国の宝は、あなた自身。 人材こそが日本の未来を支える。 思う存分鍛えてさしあげましょう。

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帰りの新幹線に乗る前の駅ホームのエスカレーターを観察していて、京都駅ではエスカレーターの右開けと左開けのナッシュ均衡が混在していることに気付いて感動したのだが、これもまた後日。 この新幹線、そろそろ東京に着くので。 ではまた。