小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

日の丸弁当なら食った

春はお別れの季節である。 研究室の学生は3人が巣立っていった。 といっても、彼らが書いた論文を今、投稿中。 当面は完全に縁を切られると困る。

今や私のライフワークにもなりつつある無料出張講義 (全10回の概念強化コース) も、14社目の京都のМ社さんが無事卒業。 受講生の皆さん、お疲れ様でした。 これまでの会社の中でも、「気合を入れて講義を聴いてくれたヒトの割合」 がとても高かったという印象。 気持ちよく話ができましたよ。 担当のKさん、毎回の準備ありがとうございました。 

ほれ、皆さんはもう、無限の濃度の概念や、「ならば」 問題や、双条件法(iff ね)や、尤度主義なんていう概念を学んでいるのだから、その辺の業界人とは一味違うはずなのだ。 その辺の業界人ってなんだ?と尋ねられても困るのだけど。

たとえば、今、現実になりつつある子宮頸がんワクチンがらみの健康被害の訴訟 (の可能性) についても、当事者の双方の主張の正当化できるところ・できないところ、そしてメディアの報道のまともなところ・まったくいい加減なところを、ちゃんと指摘できるようになっているはずなのだけれど、いかがですか。

因果関係という言葉の使い方の無茶苦茶さとか (これはほぼ全登場人物がそうだ)、当局や業界人が使う安全 (性) という言葉に意味論的に定義がないこととか、被害者さんの主張は、おそらく、尤度主義的に正当化されるのだろうなぁ、などということ。 なぬ? さっぱり分からない? では、最初から10回、もう1ラウンドやりますか(笑)

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朝、ボーっとラジオを聴いていたら、先日、人類最強レベルの囲碁棋士よりもだいぶ強いことがわかった Google のアルファ碁の話題を取り上げていた。 Google の自動運転の車も、2020年頃には発売されるかもしれないとのこと。 トヨタが危機感を募らせて、頭のいい米国人の研究者たちを年俸1億円以上で雇ったとか。 うひゃー、付け焼刃の匂いがプンプンする。

で、ラジオのレポーターいわく、「AI(人工知能)の領域でも、国を挙げて、オールジャパンで取り組む必要があります ね」 だってさ。 はぁ。

なんというか、ニポン人たちって、遺伝子レベルで刷り込まれているんだな、日の丸が。 「オールジャパン」 「国を挙げて」 「国民が一丸となって」。 これまで何度も何度も書いてきたが、太平洋戦争の頃と同じ方針をどうしてこうも執拗に持ち続けられるのかと、ある意味感動すら覚える。 もしかして、地獄でもニポン人はニポン人専用の熱湯風呂で、ニポン人亡者一丸となって茹でられていたりしてな(笑)。 

そもそも、AIだの、自動運転だの、ゲノム創薬だのって、科学の最先端で人生かけた大ばくちを売っている連中が 「国」 のことなんか考えているわけがあるまい。 というか、「国」 のことなんぞ気に掛けてたら、競争に勝てるわけがない。 GooglePfi○er の社長が 「わが社員は、アメリカの発展のため、頑張ってます! だから法人税はすべてアメリカ政府に払います!」 なんて言ってるの聞いたことがないぞ。

むろん私だって 「オールジャパン」 で取り組むべき課題があることは知っている。 たとえば高齢者の介護問題。 たとえば東京一極集中。 たとえば少子化問題。 「東京オリンピックを直ちに中止して、オリンピック会場予定地をはじめとする全国500か所に介護・保育施設をドーンと作ろう!」 といった動きをオールジャパンで進めることには私は大賛成である。 頑張れ、ニッポン! 日本人一丸となって、火の玉 (笑) になって進めようよ、高齢・少子化社会対策!

しかし、研究者や企業がホントに最先端でしのぎを削っている研究・技術領域に向かって、宿命的に周回遅れの政府(や政治家)がオールジャパンの旗を振って、いったい何の役に立つのかが、私にはさっぱり分からないのだ。 意地悪く言えば、その手の人たち (あるいは組織) って構造的・不可避的に、「最先端モノに便乗してメシを食ってやろう」 「流行りモノにからんでおけば権力を振り回せるぞ」 という人たちである。 フロントランナーを応援してるつもりで、実は邪魔してることも多いに決まってる。

過去に日の丸を掲げての産業振興施策がうまくいった例があったとは残念ながら一度も聴いたことがない。 逆に失敗例なら山ほど聞いたことがある。 最近の IT 分野に限っても、「日の丸」 検索エンジン開発プロジェクト (名前聞いただけで、こりゃダメだろうと思う)、RISC が出始めの頃のTRxN チップ、スマホに対するガラケーi-mode、などなど。 東工大の松岡先生の tweet によると、

「『日の丸』 優位性の幻想でガラパゴッて爆死」 は我が国の IT の伝統的お家芸

だそうである。 みんながオールジャパンだの、日の丸だのと騒ぎ立てるから、プレイヤーが勘違いして、幻想を持っちゃって、結局爆死する。 ほれ、医薬品の世界でも 「日本の治験の質が高い」 「日本には優れた新薬シーズを選ぶ目利きがいる」 などといった検証しようもない日の丸マンセーの幻想がありますよね。

で、結局、3年前に書いた記事にたどり着いてしまうのだ。 ニポンの科学技術・産業は、戦艦大和と同じ道をたどるのではなかろうか、という懸念 (これね → iPS が戦艦大和になる日 - 小野俊介 サル的日記)。

そして、今のニポン人の姿って、70年ほど前と笑えるほど同じなんじゃないか、という諦め (これね → G−POP万歳! - 小野俊介 サル的日記)。

・・・ まぁいいのだ。 ニポン人の皆さん、頑張ってください。 サル的なヒトは、純粋なニポン人ではないから、こんなふうに歪んだ心を持ってしまって、斜に構えてしまうのかもしれん。 初めて皆さんに告白するのだが、実はサル的なヒトの本名はショーン・マクアドール小野という。 ニューヨーク市アイルランド-アメリカ系日本人の父と日本人の母の間に生まれたのよ。 彫りの深いマスクはね、仕方ないのよ、フフフ ・・・

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学生が一人もいない春休みの研究室で、ひとり、高校生に戻ってみたりする。 あ、涙が・・・