小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

情緒不安定な冬

ちょっと間があいてしまった。 皆さんお元気? この時期の大学は、学生の卒論・修論の締め切り、研究プロジェクトの年度間際のドタバタなど、雑用も含めいろいろあって、ブログを書く心のゆとりが無い。 うーむ、これではいかんぞ。

そうこうしている間にオリンピックのバカ騒ぎが始まった。 基本、「こんなバカ騒ぎは直ちに止めて、各国ともに貧困者層対策・高齢化問題に取り組むべき」 と心から思うのだが、氷上でクルクルまわるアイスダンスのきれいなおねえさんにうっとりして、なぜか涙がこぼれそうになる。 人間だもの。 情緒不安定な2018年の冬である。

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研究者として日本の新薬開発がらみの状況を観察し続けているわけだが、明るい未来は来ないという予感が最近ますます強くなってきた。

ニポンの研究開発推進政策って基本的な方向がおかしいのよね。 ここ20年くらい、臨床研究の推進だの、出口戦略の重視だのという掛け声が相変わらず踊っているが、どこからどう見ても日本の比較優位 (絶対優位じゃないよ) は基礎研究でしょ。 だってね、この国は人間が少ないのである。 数も、種類 (笑) も。 さらにその少ない人間の数が減っているのである。 なおかつ、その人間が相当に健康で長寿で、世界に誇る保険制度で守られているのである。 病人を相手にする臨床開発・臨床研究において比較優位が生まれるわけがあるまい。

にもかかわらず、最近まとまったお金がつくのは臨床開発だのAROだの出口戦略だのばかり。 出口、出口と熱病にうなされたように繰り返しているうちに、入り口にたどり着く国内産のシーズは枯れる寸前のように見えるのだが。

相も変わらず、オールジャパンの医薬品創出といった意味不明のスローガンが学会やシンポジウムで飛び交うのを聞くと、もはやつける薬はないよな、と思う。 このニポンという国では、日本産のシーズを、日本企業と日本人研究者が、日本の施設で、日本人患者を使って、日本の金で開発して、日本の当局のご機嫌をとって最初に日本で承認をとって、日本で最初に発売して、日本に税金を落とさないといけないのね。 もはや大笑い。 そこまで手足を縛られた奴らが競争に勝てるわけなかろう。

自分の生活とは無縁のオリンピックの応援ではウィリアムスとかクリスとかケンブリッジとかいう日本代表を大喜びで応援するくせに、ゼニカネや自分の食い扶持がかかる話になると、見事な国粋主義者になるんだよね、ニポンの業界人って。 ケツの穴の小ささ了見の狭さはトランプ並み。(注 1)

(注 1) むろんこの手の歪んだ業界人の本質的問題は、日本の (そして結局は世界の) 患者さんをないがしろにし、不幸にすることである。 思想・信条そのものは多少 (笑) 歪んでいても排除することはできまい。

お上依存もほとんど病気。 なんでも、オールジャパン創薬体制においては、大本営にいる 「目利き」 なる方々が、ターゲット・シーズがモノになりそうかどうかを評価してくださるらしい。 その上で、モノになりそうな厳選されたネタを大本営下の研究所で磨き上げるのだそうな。

・・・ 節子、それ昔のソ連が失敗したヤツや。 資本主義やない。

百歩譲って、その 「目利き」 と呼ばれる方々、もし月給を10億円くらいもらっているのなら、私もその方々を信じましょう。 きっと魔法のような予知能力をお持ちなのだろう。 もし月給が高々 100万円や 200万円だったら ・・・ そんな人たちが新薬開発の成功確率を動かせるわけがないと思うぞ。

社会主義国ニポンの住人の多くには、未だ、確率とか、大数の法則とか、競争とか、マーケットとか、そういう概念が一切ないような気がして、とても心配なのである。

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The Wall (2017)。 狙撃や狙撃手好きにはたまらない映画。 それらに興味がないヒトにはまったく面白くないだろうなぁ。 全編スナイパーの視点のみからの攻防だもの。 こういう尖った映画もたまにはよかろう。

ちなみに、この映画の設定のように1.5キロも先から狙撃されると、弾着の方が先で、銃声は後から聞こえるのである。 弾着まで2.5秒くらい。 ワシらゴルゴ13世代なら誰でも知っていることだが、ゆとり世代は知らんかもしれんな。 やたらと戦争に近づきたがる政治家が多いご時勢では、生き残るために必要な知識である。 おまいら、ちゃんと覚えておけよ。

「こんな距離での狙撃はマンガや映画の中だけだろう」 などとほざくナーメテーターがいるかもしれんが、アフガニスタンイラクではこのくらいの狙撃を成功させる神業の持ち主が何人か登場していることを申し添えておこう。