小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

恒例にしない

毎年恒例の業務連絡。 大学院で勉強・研究してやろうという変わり者頑張り屋の社会人の皆さんへ。 今年度の東大薬学系研究科の願書受付期間は6月21日(木)から28日(木)までです。 郵送です。 大学院受験に関する相談はいつでもOKですので、研究室のHPのアドレスに適宜コンタクトしてください。

「サル的なヒトよりも○○大学の○○センセーの方がはるかに立派なヒトという噂があるのですが、そのとおりなのでしょうか?」 といった質問にもきちんと回答するはずなので、お気軽に ・・・ ただぢゃ帰さねえからな、この野郎。

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昼メシを食おうと思い、大学の生協食堂 (絵が捨てられちゃった食堂ね) へ行こうとしたのだが、途中の構内で女の子が一人シクシク泣いていたのである。 幼稚園の年少さんくらい。 Tシャツを着てる。

「どうしたの?」 と尋ねても返事がない。 「お母さんがいなくなったのかな?」 と聞くと、ウンと頷いた。 これは相当に困ったことである。 サル的なヒトの空腹よりも明らかに緊急性の高い事案と言えよう。

周囲を見渡すと、能天気な学生連中は結構歩いているが、お母さんらしき人の姿は無い。 うーむ。 とりあえず、手を引いて生協食堂の中に連れて行く。

サル的 「ねぇ、ここでお昼ご飯をお母さんと食べたかな?」
女の子 「 ・・・ (シクシク泣きながら首を振る)」

ここじゃないのか。 ではどこだ? いったん外に出る。 東大迷子センターってどこかにあったかなぁ ・・・ などと考えるが、そんなもんないよな。 あまり動き回ってもいかんから、しばらくその場でお母さんが来るのを待っていたのである。 が、お母さんが現れる気配はない。 困ったなぁ ・・・ あ、そうだ。 近くに生協購買部 (スーパーのようなお店) がある。 生協のおばさんはやさしいから相談に乗ってもらおうと思い、女の子の手を引いて店内に入ったら ・・・ いたのである。 キツめの顔をしたオバはんがこっちをキッと睨んで

「あんた! なに迷子になってんのよ!」

と大声で怒鳴りつけてきた。 ヒッ、ひぇー。 あまりの迫力に少しおしっこちびっちゃったよ。 いや、女の子ではなく、チビリアンコントロール不全の53歳のワシの方が。 誘拐犯でも見るような目でワシを見とる。

こりゃあかんよ。 あかんて。 自分の子どもを迷子にしたのはアンタだろうが。 アンタの言うべき台詞は 「大丈夫だった?」 か 「ごめんね」 か 「すみません、ご迷惑をおかけしました」 じゃないんかい。

その後も 「あそこでじっとしてろと言ったでしょうが」 だとかなんとかグチグチ言いながら女の子を叱り続けている。 あ、あかん。 これ以上ここにいると、このオバはんをどつき倒してしまうかもしれんので、そそくさとその場を立ち去る。

かわいそうに。 親は選べんからなぁ。 ちゃんとしたいい子に育ってくれればいいが。

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今年も恒例RCのディスカッションの季節がやってきた。 前半戦のテーマはこんな感じである。

課題A
医薬品開発におけるいわゆる 「第1相試験」 について、過去の歴史 (事件など)、規制・ガイドライン等を含む現状等を簡潔に整理した上で、問題点・改善しうる点・提案などについて自由に議論してください。

(注)ACメンバーからの出題。 「論点の選び方、議論の仕方、正当化の仕方も自由に考えてください」 とのこと。

課題B
いわゆる 「アカデミア創薬」 (アカデミア (広義) と製薬企業 (広義) が協同・連携して実施する新薬研究開発。 上流から下流まで広く考えること) の現状 (様態、実績など) について簡潔に整理した上で、現在の産学協同・連携のあり方を議論してください。 議論ではグローバル化と 「日本(日本人、日本企業、日本の大学、・・)」 の関係を論点の一つにすること。

(注)グループ内で複数の異なる見解・主張を導くよう努力すること。

課題C
きわめて高価格に見える新薬 (抗がん剤等) が続々と登場する最近の状況を簡単に整理した上で、それらを日本の医療においてどのように使う (使わない) ことが適切と考えるか、そして、受容 (拒否) に必要な社会の仕組み・ルール (狭義の承認・薬価制度のみならず、広く社会のつくりに目を向けること) は何かを、拠って立つ倫理的根拠を明確に提示した上で議論してください。

(注) 欧州、米国で現に起きている企業 vs. 保険者(政府)の conflict の実例を無視しないこと。 「HTAの導入」 「薬価引下げのルール化」 「適正な価格を設定すべき」 「適切なR&D費用の負担」 「社会の誰かが費用負担すべき」といった提案をする場合には、それを正当化する根拠を示すこと (その手のありきたりの提案だけならサルでもできる)。 「企業が価格を下げればよいだけのことでは?」 という至極もっともな指摘に答えること。 日本国内だけの議論で終わらないこと。 グループ内で複数の異なる見解・主張を導くよう努力すること。

課題D
医薬品の品質不良・不正に関する最近の事例・事件 (例:アセトアミノフェンの原薬、K社の血液製剤等に係る不正、それらと関連して行われた行政措置等) のいくつかを取り上げて、それらが発生した背景・理由およびそれらの影響(製薬企業・産業、国民の健康など)を説明してください。 今後も発生するであろうこうした事件に対してどのような姿勢で臨むべきと 「あなた」 は考えますか。 議論してください。

(注)原薬・製剤の調達・供給のグローバル化は必ず論点の一つにすること。「適切なルール・SOPを設ければ解決する」 といった皮相的な提案のみで話を終わらせないこと。 グループの結論を一つにまとめる必要はない。 ところで 「あなた」 って誰・何だろう?

過去のRC受講生の皆さんは、きっとこれを見て 「フフフ ・・ 相変わらずねぇ」 などと遠い目をして呟いたりしてるのでしょうね。 はい、やたらと (注) が多いのも含め、相変わらずです。 さらに今年は一般的な注意事項として

  • グループの意見(発表内容)を一つに集約しすぎない: 議論するテーマはグループ内の皆が同一の見解に至るようなものではありません。
  • ディスカッションを、薄っぺらいディベートやビジネスプレゼンにしてはいけません: プレゼンの上手さは採点の対象外です。

を追加。 だって警告しておかないと、皆さんの発表って、製〇協の会長やP〇DAの理事長が業界紙の記者会見で話しそうなステレオタイプな主張ばかりになっちゃうんだもん。 ステレオタイプな業界の常識やうわべだけのプレゼンスキルは、ほれ、今どきいろんな研修会で学ぶことができるから、そちらで存分にどうぞ。 本RCではお取扱いしておりません。

反射神経しか使わない体裁だけの受け答えが得意な人がグループ内の議論をリードする傾向があるから、それに対する警告でもあります。 ゆっくりじっくり何日も考えた結果を大切に。 3秒で思いつくことをベラベラ言い合ってそれを結論にするのはナンセンスであり、危険です。 ブレインストーミングと称してホワイトボードに思いつきを並べていくだけの行為は 「議論」 ではないので勘違いしないように。 製薬業界人が、そんな薄っぺらい議論で人の命や社会の幸せに向き合っていることが世間にばれたら、大変なスキャンダルになるかもよ。 私はやさしいから黙ってるけど(笑)

限られた時間ではありますが、グループの仲間とたっぷり議論をして、人間関係と見識を深めてください。 私もACの人たちもお手伝いするので、がんばってね。