小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

あれ? くちゅがない

朝、いつものように赤門から大学構内に入ったら、銀杏並木の通りにあいつらがいたのである。 大学内にある保育園の2、3歳のちびっこたち。 午前中のお散歩タイムらしい。 みんなおそろいの青いスモックと黄色い帽子を着せられて、かわゆいのぉ。

お散歩軍団の先頭は男の子が二人、保母のセンセとしっかりと手をつないで歩いておる。 その後ろに、4、5人が乗せられたでかい乳母車、 通称 「しとしとぴっちゃん号(子連れ狼仕様)」 が2台続く。 相当に大規模な行列である。 乳母車に乗ってるちびっこたちは、車両から体を半分乗り出して、嬉しそうに手を振ったりしておる。 みんな楽しそう。 見ているこっちまで楽しくなる。

ちびっこが好きでたまらないサル的なヒトは、横に並んで彼らを観察しながらオフィスに向かっていたのである。 と、後ろに位置する2号車の乳母車が急停止した。 2号車の前に小さな白いスニーカーが片方だけ落ちている。 保母さんがそれを拾い上げ、前を行く1号車のちびっこたちに 「誰か、靴を落っことしたわよ! 誰の靴なの?」 と大きな声で尋ねたのである。

誰一人予想してなかった衝撃の事実が判明したのはそのときであった。 センセと手をつないで先頭を元気に歩いていた男の子が急に立ち止まって、

「あれ? くちゅが、ない・・・」

と靴下しか履いていない自分の右足を見ながら、不思議そうにつぶやいておる。

 

 ・・・ ( ゚д゚) ・・・

 

保母さんたち大慌て。 私を含むギャラリーは爆笑。 ここ数年で一番素晴らしいドラマを見た気がする。

自分の靴が片方脱げたのに気づかずに、そのままトコトコと歩き続けていた男の子。 高野山の山伏並みのそんな荒業がどうして3歳児に可能なのかは、現在の科学レベルでは解明困難である。 行動科学を研究している私でもよくわからない。 手をつないでいたセンセも気付かなかったらしい。 

子供って、靴の左右を間違えて履いたり、パンツの前後間違えて履いたりしてもなぜか平気なのである。 おかあさんやセンセに言われるまで気づかなかったりして。 私もちびっこの時にそうだったことをふと思い出した。 皆さんはどうでしたか?

・・・ と、遠い目をして子供の頃を懐かしんでいるが、実はつい数日前、ステテコ (ズボン下) の前後を履き間違えていて、トイレでおしっこをしようとした時におチ○チ○を出すはずの穴がなくて、「う、うわーっ!」 と焦ってしまい、だいぶ少しだけチビったことを思い出したサル的なヒト。 ジジイになると、やってることがちびっこと大して変わらない。 

 

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 というわけで皆さんお元気ですか。 大学は後期の授業が始まり、対面での講義や実習も少しずつ復活。 が、まだまだ基本はオンライン講義という厳しい状況である。

例年だと5月に始まる社会人向けの講習会 (医薬品評価科学レギュラーコース (RC))も、今年は8月開講であった。 今週ようやく前半のディスカッション課題の発表が終了したところである。

今年もややこしいテーマを4つ出してグループ討論をしてもらったのだが、初めて顔を合わせた人たちとオンラインでしか対話できないという障壁は相当に大きかったかも。 討論の最中にフラッと私やアドバイザーが突っ込みを入れるのも難しかったし。 うーむ。 謝ってもしょうがないのだが、一応コロナに代わって謝っておこう。 すまんね。

しかし、そんな悪条件下であったとしても、皆さんにはもう一歩踏み込んだ議論をしてもらいたかったなぁというのが私の偽らざる感想である (毎年そうなのだけど)。

皆さんの議論って、なんかステレオタイプである。 製○協や D○A や 「れぎゅらとりーさいえんす」 うんぬん系の学会でよく見かける、業界人の既視感あふれるプレゼンっぽい。 RISF○X などの業界紙の記者さんなら3分もあれば書けてしまいそうなことばかり結論に並んでる。

あとね、皆さんの議論ってタブー・自主規制が多すぎよ。 笑ってしまうくらい。「製薬企業って儲け過ぎ」 、「いくらなんでも新薬の価格、高すぎだよ。 値段下げろよ」 といった議論から必死で顔を背ける様は、見ていて痛々しいほどである。 タブーに触れるとシャッチョさんに怒られるの? あなたの会社のシャッチョさんって、ずいぶんと了見が狭いんだな (笑)

製薬企業の欲深さをめぐるそうした問題意識 (業界人はそれを stigma (汚名、烙印) と呼びたいだろうけど) は、これまで何十年も社会 (政治、経済、倫理) のど真ん中に鎮座してるのよ。 製薬企業を批判し、嘲笑する映画がたくさんあるほどである。 「ダラスバイヤーズクラブ」とか、先週公開の 「薬の神じゃない」 とか。「ナイロビの蜂」 ではもっと分かりやすく 「製薬企業って極悪非道」 と扱われているし、「猿の惑星:創世記」 に至っては製薬企業が人類を滅ぼしておる (大笑)。 その手の映画で製薬企業社員は 「ロレックス着けて、高級コートを着た連中」 と皮肉たっぷりに戯画化されているのだが、実際、私のお付き合いのある企業のおエラいさんたちもそのまんまだったりするから、笑うに笑えないのですよ。(注 1)

(注 1) 「そんな創作やイメージで業界人にいちゃもんつけるな! このサル野郎!」 と殴りかかってくる阿呆がいるかもしれんな。 そういうやつらには、過去の凄惨な薬害年表や醜悪なデータ改ざんの歴史や企業トップの驚くべき高額年収リストを顔面に突き付けて、アンパーンチ!の一撃で返り討ちにしてやる。 遠慮なくかかってこい。

つまり、皆さんが見て見ぬふりしたところで問題意識は無くならないってこと。 (まともな) 先輩たちにならって、皆さんも正面からそうした批判と向き合わないと。 そして議論しないと。 ね。

ニポン政府とか PMDA とか AMED の話も同じ。 「政府機関やお役人のやっていることが基本的に正しい」 なんていうバカげた想定は、建設的な議論をする上で有害無益です。 実際、彼らの政策・施策・プログラムに見込み違いや間違いがたくさんあることは一目瞭然。 発表者のほとんどが、まともな根拠もなく 「ニポン発・ニポン産の薬をもっと応援すべき」 と結論づけていたことにも驚いた。 皆さんって 「機会費用」 という概念をちゃんと持ってる? グローバル企業の社員さんは、自らの会社 (本社の連中) がなぜ 「ニポンを (今以上に) 応援しないのか・応援しなくなったのか」 の理由を考えたりはしないのかしら。

・・・ といった論点をタブー扱いせずに分かりやすく議論するやり方を知ってもらうのが本研修のディスカッションの大きな目的です。 そのためには若干のコツが必要だし、いくつかの学問的な枠組み(概念) も必要だったりするので、ちゃんと学ばないといけません。 腹を括って知らないことを勉強してみてください。 ヒントは出すし、勉強の仕方も教えますから ・・・ 開かれたマインドを持った人たちには、ね。

「見ないふりして逃げ回って来た論点をきちんと議論できるようになる爽快感」 ってすごく大きいよ。 保証します。 

二回目のディスカッションでも、今回に輪をかけてややこしい課題が出されます。 思う存分に楽しんでね。 Enjoy !

 

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恐ろしいのは、アメリカ人の4割が今でも 「トランプを支持する」 と答えていること。 いや、それを恐ろしいと感じているのは私だけで、皆さんの多くはそうは思わないのですよね。 なんたってニポンの前総理と仲良しなんだもんね。 あー、こわ。  

ジョン・ボルトンさんって、容貌・雰囲気がちょっと FDA の Bob Temple さんに似てるよな、と思ったりする (笑)。 Bob、さすがにもう引退したのだろうか。 知ってる人がいたら教えてください。