小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

自炊、その後

基本、何をやっても裏切られるのが人生である。 同僚に裏切られ、友人に裏切られ、身内に裏切られ、最近では自分自身にも裏切られ続けているサル的なヒト。 しかしこの惨めな人生において、唯一裏切らないものがある。 それは 「自炊」。

そう、サル的なヒトは今も本の自炊を黙々と続けているのである。 自炊という言葉、知らない人はいないとは思うが念のために説明しておくと、自分の本をバラバラにして、スキャナーで読み込んで、pdf ファイルにしてしまう、というアレである。

大学・自宅にある本・雑誌をどでかい裁断機でバッサリ切ってバラバラにするのだが、その前に本の固い背表紙をカッターで取り外すなどの面倒な準備作業も必要。 夜寝る前にコツコツと10冊くらいずつ作業する。 本はたいてい埃まみれなので、作業中くしゃみ、鼻水が止まらなくなるのだが、それにも慣れたのである。

スキャンし終えた大量の 「元」 本を、ガッコーンとゴミ箱に捨てるときのなんと気持ちのいいこと。(注 1)

(注 1) その後、その手の重いゴミ袋は、階段の踊り場にあるごみ収集所までちゃんと自分でもっていかないと、秘書のおねいさまたちに叱られるので注意すること。

で、今、500冊程度を pdfにしてしまったのである。 すごいといえばすごい。 でも、これまた不思議なのだが、これだけ本を捨てたのに、自宅や学校の本棚がガラガラになったようにはまったく見えないのである。 俺の本棚は4次元空間かなんかなのだろうか?(注 2) というか、そもそも俺はいったい本を何冊持っているのだ?

(注 2) 昔、39平方メートルの 3K (つまり3部屋ね) の宿舎に住んでいたことがある。 同じサイズ・間取りの宿舎に住む職場の同僚がアメリカ人にそのことを話したら、「ん? おまえの宿舎は部屋がタテに入っているのか?」 と不審に思われたそうな。

雰囲気としては、それでもおよそ2、3割は捨てた感じ。 だとすると私の蔵書、全体では 2000冊ってとこか。 もっとも私の場合は雑誌や文庫本も1冊として数えているからちょっとフェアじゃないか。 なにがフェアさの基準なのかはよく分からんが、気にするな。 仕事がらみの単なる資料本・ビジネス本がそれとは別に数百冊あるが、それらには思い入れも何もないから単に捨ててしまえばよいので、蔵書にはカウントしない。

自分はフツーの本好きだが、世の中にはもっとすさまじい本好きがたくさんいる。 その人たちはいったいどのくらい本を持っているのだろう?

疑問を解消すべく、近所の本屋に行ってその手のことが書いてある本を探すと ・・・ あったぞ(笑) 「本で床は抜けるのか?」

他にもいくつか面白そうな関連本があるのを見つける。 欲しい。 が、これを買って蔵書を増やしてしまうとなんのこっちゃわけがわからんことになるので、立ち読みする。(注 3)

(注 3) なんと、著者の西牟田先生がこの記事を tweet してくださった。 どうもです。 立ち読みですませて申し訳ありませんでした。 あ、明日、必ず本買いますので許してください。 ブログ読者のおまいらも、この本だけはちゃんと買えよ。 いいな。

ざっと読むと、私のレベルなんぞとても蔵書が多いなどとは呼べぬことが分かった。 井上ひさし先生とか立花隆先生とかは20万冊レベル。 す、すごい。 まるでスーパーサイヤ人の最終形態レベルである。 あるいは傲慢の罪エスカノールの正午きっかりの闘級くらいか。(注 4) 要は家1軒すべて本。 だからこの手のスーパーサイヤ人の大先生がお亡くなりになると、遺族や後援者の方々がどこかの図書館と「ね、4万冊くらい引き取ってくださいよ、ね? お願い!」 といった交渉を四苦八苦しながらするらしい。 近年は図書館もお金もスペースもないのだから、そう簡単に引き取ってくれないのね。

(注 4) 漫画を読まぬよゐこは理解できずともよい。

僕の場合はたかが2000冊。 されど2000冊。 けっこうな量である。 僕の死後2000冊が部屋に残っていたら、それを処理するのは家族の仕事となる。 価値のある古本なんて一冊もないから、燃えるゴミの日 (火曜日と金曜日) と資源ゴミの日 (月曜日) に少しずつ捨てることになるわけだが、かなり面倒くさいよな、それって。

本ブログの読者に (著者ではなく) 僕のサイン入りで生前贈与してやろうかとも考えたのだが、「ツルモク独身寮」 やら 「キャンパスクロッキー」 やらの卓越した昭和のギャグセンスを理解してくれる人が今どきいるかどうかは疑問である。

・・・ というわけで、サル的なヒトは今晩も 「おお、この池波正太郎仕掛人梅安はボストンの流石 (さすが) 書店で中古で買った本だな。 USED $ 2.50 って書いてあるよ。 もう20年前なのね」 「喜国雅彦の 『傷だらけの天使たち』 はサイコーっす」 などとつぶやきながら、本の背表紙をカッターナイフで切り取っているのである。 へ、ヘックション!

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こういうひねくれた映画、大好き。 映画 「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」。 未見の方はぜひどうぞ。