小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

笠智衆ざんまい

暑いっすね。

土日の午前中、根性試しも兼ねてベランダで読書をしているのだが、あまりの暑さに10分くらいで頭がボーっとし始める。 それでも我慢して本を読んでいると、なんか聴こえてくる音が小さくなって、面白いことに暑さをさほど感じなくなるんだよな。 おそらくすでに危険な状態。 むろん僕はすぐに部屋に入ることにしているが、戸外で夢中になって楽しい庭仕事とかスポーツとかしていたら、そのままダウンしてしまうんだよね。 実感としてよく分かる。

というわけで酷暑ですが、皆さんお元気ですか。 一か月以上もブログ放置してました。 スマンかった。 が、サル的なヒトだっていろいろと忙しいのだから、みんなわがままを言うんじゃない。 こっちがいかに気合入れて頻繁にブログを更新してみても、読者のほとんどはそんな気合とは無関係に単なる日々の習慣でこのブログのHPをワンクリックして(コストゼロだし)、読み流すだけでしょ? むろん私自身が他人のブログを読むときもそうなのだからそれで結構で、怒る気などサラサラない。 ただネット空間とやらの虚しさを呟いているだけ。 コスパだのという薄っぺらい言葉をわめき散らす阿呆どもの世界では、顔写真や昼メシの写真を載せるだけのSNSしか流行らぬわけである。

あ、つまり、逆に言うと(逆ではないけど)、こんなチンケなブログを何度も何度もちゃんと読んでくださって、「サル的なヒトって毎度妙なこと言ってるわ。 その辺に溢れかえっている御用学者には絶対書けない文章ね。 フフフ・・」 と内容をじっくり味わってくださるごく少数の読者さんには、いつも深く感謝していますよ。 ありがとね。

 

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私が今忙しいのは、この世で善行を積むお仕事をしてるからです。 アスファルトの上で死んでるセミさんのご遺体を草むらや枯草の上に安置し、「南無・・」を唱えるお仕事。 今日なんか、本郷の大学構内で30体以上のセミさんに成仏してもらった。 セミも人間も同じ生き物。 アスファルトの上で干からびたり、自動車に潰されたりするのはイヤに決まってる。かわいそうだから草むらに安置して、土に帰ってもらう。

これであの世に行ったときに閻魔様に普段の悪行ポイントをキャンセルしてもらおうと内心期待しているのだが、無理かもしれん。 最近はあの世も構造改革が進んでいて、そういったポイント制も廃止される傾向があるらしいからな。 しかしまぁそれでもよいのだ。 セミさんの遺体 (バラバラ死体やアリさんまみれになってることも多い) を拾って、しばし観察して、草むらに置いてやること、それ自体が楽しいのだから。 昆虫好きの本能である。 養老先生と同じ。

 

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お盆をどう過ごしたか、であるが、今年は贅沢してしまいました。 これですよ、これ。

 

なんと 笠智衆 三昧 だったのである。

どう、皆さんの予想の斜め 76度くらい上を行ったでしょ?

 

昭和型ロボの皆さんにはあらためて紹介する必要はないが、平成型ロボの洟垂れ小僧たちは知らんかもしれんな。 顔写真を一応貼っておく。 笠智衆(りゅうちしゅう)さんって、こういうおじいさんである。

 

 

映画「男はつらいよ」 の御前様ですね。

8月初旬、仕事がらみの頼まれ原稿を一つ引き受けたのである。 8000字。 たいした長さではないが、ちょっと面倒ではある。 執筆開始のスイッチが入らない。 公文式に通うチビッ子と同じように、私の 「やる気スイッチ」 も身体のどこにあるのかがよく分からないのだ。 こういう状況で 「やる気スイッチ」 をオンにするには ・・・ そう、自分へのご褒美を用意すればよい。 それがこの DVD3枚(3話)セットってわけなのだった。

 

サル的なヒト、実はこれら三話とも昭和の時代にNHKの放送ですべて見たことがある。 40年前くらい。 どのお話もとても懐かしい。

まずは最初の作品 「ながらえば」 を家人と一緒に見たのだが、鑑賞後、それはもう涙があふれて、まともな会話ができる状態ではありませんでした。 ドラマの背景(たとえば国鉄の電車や黒電話)が昭和な感じで味わい深いのだが、時代がいかに移り変わろうと人の心の機微はなにも変わらないことがあらためてよく分かって、涙。

 

みんな、DVD 3枚セットを買うべし。 NHK が好きとか嫌いとか言ってる場合じゃない。 サル的なヒト渾身のおすすめです。 製薬業界や医療業界にいる皆さんって、結構なあぶく銭を持ってることを知ってるぞ。 買うべし。

 

笠智衆さんのようなジジイになりたいと思う令和4年の夏。

 

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ドラッグラグ関連の論文の査読が時々まわってくるのである。 ドラッグラグ研究の第一世代を自認する私としては、「どれどれ、最近の若者の論文なのだから、ジジイたちの論文を踏み台にして、だいぶ進化してるのだろうな」 と期待して読み始めるのだが、たいていはがっかり、というか、むしろ唖然とすることになる。 

ドラッグラグ、最近は短くなりました。 多地域試験やってるからです。 万歳!」 といった思考停止論文のなんと多いこと。 進化どころか退化しておる。 あーあ。

ドラッグラグ研究って本当はとても難しいのよ。 そもそもラグの定義自体が死ぬほど難しい。 ドラッグラグを単にサンプルとなった新薬の承認時期の遅れの平均値で示して「昔は 11.3カ月、今は 7.6カ月だから、ドラッグラグは短縮してますぅ」 などと頭の悪いこと言うの、もういい加減止めようよ。 「ドラッグラグ」という言葉の意味をまったく理解してないだろ、それ。「日本には永遠に登場しない米国の新薬」 が新薬全体の何割もあるんだぞ。

それって方法論の問題ではなく「言葉・概念(を操る能力)が不自由」 という問題だ。 他の領域の専門家、いや一般市民から 「医薬品業界人(産官学すべて)って日本語が不自由なんだね。 前から気付いてはいたけど」 と嘲笑されるという話である。 もともと無いに等しい医薬品業界人の社会的信頼がさらにゼロに近づく、という話である。

他にも、ドラッグラグ研究の技術的な難しさとして、サンプリングの問題、観察時点の問題、時間の織り込み方の問題、観察打ち切りの扱いの問題がある。 意思決定モデルに基づくラグ発生の因果の追求、そしてヘルスニーズ・アウトカムの議論はむろんその先にある大きな未解決課題。 私たち第一世代は、そういう問題を25年くらい前からずーっと議論し、悩んで来たわけである。

が、その手の難しさをすべて無視して、テキトーにそのあたりに落ちている品目を並べて 「最近の日米のドラッグラグは 3.5カ月(N=127)でしたぁ。 国際共同開発のおかげで短かくなってますぅ」 みたいなことを、一ミリも脳みそを使わずに無邪気に書いてくる、第三世代(?)くらいにあたる若者たち。 その手の論文を平気で載せちゃう学術誌。 脱力感しかないというのが正直のところ。

ちなみにその手のゆるーいドラッグラグ論文はこれまで日本人の独壇場だったが、最近は中国人も参戦していらっしゃる。

 

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というわけで、まだしばらくは暑い日が続きますが、元気にがんばりましょう。 来月から、とある会社で久しぶりに無料出張講義を再開する予定。 タコツボで思考停止してる製薬業界人向けに 「人類の知恵」 をきちんと教えます。 今回は、コロナ禍に仕入れた数学基礎論集合論の面白い話をたっぷり仕込んでますので、こうご期待。 ℵ (アレフ)なんて概念を監査の SOPと結び付けて話せる薬学部のセンセは、世界で私一人しかいないだろうなぁ。 こんなサイコーな講義を無料奉仕するんだから、ホント、閻魔様の裁きのときにはポイント加算してもらいたいものだと思う今日この頃。

講義する私も楽しみです。

 

じゃまたね。