小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

ワンオペしない

今の時期、大学のバス通りを歩くと沈丁花の香りが強く漂う。 昼間は学生や病院に通うじいさん・ばあさんたちでにぎわっているバス通りも、夕方になると人気がなくなる。 あたりがすっかり暗くなった夕刻の6時ごろ。 通り沿いの標石に腰かけ、目を閉じる。 あぁ、なんと心地よい。 うっとりしてしまう。 あの世では、きっとこういう香りが漂うお花畑を一人歩くことになるのだろうな。 なかなかにステキではなかろうか。

植物の香りならなんでもハッピーというわけではないのよね。 自宅の近所の公園に、十年くらい前からジャスミンがなぜか生い茂っている。 愛好家がよかれと植えたのだろうが、臭くてたまらん。 ウンコというか、その手の臭いにちょっと似てるぞ、あれ。 ジャスミンがあの世のお花畑に生えてたら、こりゃたまらんとこの世に舞い戻ってくるかもしれん。

というような日々である。 皆さんお元気ですか? サル的なヒトはボチボチである。

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ニポンの大学の教員が結構にしんどい商売になっていることは、皆さんもよくご存知だと思う。 何がつらいって、結局すべてがワンオペなのである。 ほれ、牛丼チェーンや24時間営業のコンビニの一人店長が死にかけているのと同じ構造。

雑用が多いことは別にしんどくもなんともない。 世の中の仕事なんて99%が雑用といえば雑用だからな。 問題は、仕事がすべて誰か一人 (自分) の上に乗っかってきて、誰とも心の負担を (本気で) シェアできず 「あなたがすべて決めればいいのよ。 好きなように頑張って。 あ、でも結果責任はすべてあなたが背負うのよ。 分かってるね?」 という状態にずっと置かれていること。

むろんワンオペにもいろんなパターン・程度がある。 厚労省や PMDA といったお役所なんて、事情を知らないヒトから見るとワンオペとは無縁に思われるかもしれないが、現実はすさまじいワンオペ職場である。 何かの案件の担当者は基本一人。 上司や部下はいるにはいるが、本気であなたの仕事自体の相談には乗ってくれぬ。 だって、それは 「あなた」 の仕事だから ・・・ このビミョーな雰囲気、分かる人には分かるよね。

サル的なヒトもお役所での仕事はほぼすべてワンオペであった。 入省1年目から訳も分からずワンオペをやらされるので、当然に大失敗もやらかす。 でも周囲はそれを見て見ぬふり。 問題が広がらぬように (つまり自分・他の部署に面倒が及ばぬように) 一定の隠蔽には協力してくれるが、そこまでの話。 当時の業界の皆さん、ご迷惑をおかけしました。 アメリカだったら訴訟起こされてたかもしれん。

1年目の新人として事実上何の教育もないままにワンオペをやらされて右往左往していたとき、ベテランの上司の一人から 「小野君は才能ないから仕事できないんだよな」 と嫌味を言われたことがあったっけ。 まともな引継ぎも訓練もなく新人がワンオペやらされてるのが分かっているのに、新人を自ら教育することなく、アドバイスもせず、協力もせず、むろん同情もせず、横から 「才能」 とやらについて嫌味を言うだけ。 なんとも素晴らしい人材育成法である。 けっ。 当時のお役所にはこんな輩がたくさんいたように記憶しているが、今は少しはまともになったのだろうか。

大組織の中のワンオペ。 お役所や企業勤めの方々のワンオペ地獄は、よく知られている日本の会社 (組織) の生産性の異様な低さと直結してるという実感がある。 ベストセラーに書かれているとおり。 

なぜ日本の会社は生産性が低いのか? (文春新書)

なぜ日本の会社は生産性が低いのか? (文春新書)

 

 ちなみに大学教員のワンオペはそれとはちょっと違うタイプですね。 こちらは物理的にも一人。 牛丼屋の一人ぼっち店長に近い真正のワンオペである (笑)。 必死でなんとかお店を切り盛りはしてはいるが、生産性の高い知的労働者の姿からは程遠い。

イデアもやる気も忠誠心もわかぬほど疲弊したニポンの非効率な 「現場」 を目の当たりにしてきた30年間。 どうにもならんなぁ。

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人間という醜い生き物のことを考えているから暗くなる。 昨日、大学の構内を散歩中のピチピチの柴犬のおねいさん (推定年齢6歳) を触らせてもらったのだが、この時期は抜け毛が盛大で素晴らしかったのである。 手のひらもシャツもズボンも抜け毛まみれ! ふふふ、なんと楽しいことだろう。 

ねことじいちゃん (メディアファクトリーのコミックエッセイ)

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 ニャンコもステキである。 おじいちゃんの面倒を見てやっているニャンコのお話。 これも映画化されてベストセラーですね。 未読だったらおすすめよ。