小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

「あなた」ってだーれ?

あー、体がベトベトする。 朝、出勤するだけで汗だくになって、もはや生ける屍と化してしまう今日この頃。 皆さんお元気?

最近公私ともにちょっとドタバタしてて、一銭にもならんブログの更新をサボっておったよ。 楽しみにしてくれている読者の皆さん、ごめんなさいね。 君たちのことを嫌いになったわけではないのだ。 嫌いになったわけではないのだが、僕の人生においてさほど重要ではなくなってしまった、というか ・・・ い、いや、何を書いているのだ、自分。 それって、色恋沙汰の別れ話で、優柔不断なダメ男が呟きそうなセリフだぞ。 いったいどうしたんだ。 なんか疲れてる。 当帰芍薬散でも飲むか。

 

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東大のレギュラーコース(RC)は、今週、前半のディスカッションの発表会を終えたところ。 つまり折り返し地点。 受講生の皆さん、残り4か月頑張ってください。 

今年も皆さんの発表に対して、チクチクと少し痛めの突っ込みを入れました。 その中で最も真剣に考えてもらいたいのは、「その意見や提言を述べている 『あなた』 って誰?」っていう問いかけである。 高額医薬品やら不正医薬品やらについて、皆さんはたとえば 「薬価は高いわけではない。 価値は十分ある」 だの 「不正をチェックするためのリソースを増やすべき」 だのと声をあげたわけだけど、そう述べている 「あなた」 はどんな人なんだろう? 

予めアドバイスしておいたから 「患者の立場から」「企業の立場から」 といった立場主義(いわゆる「東大話法」)を大上段に振りかざした物言いはあまり聞かなかったけど、でも、何かを主張しているときの 「あなた」がどんな人なのかの自覚がないとすれば、それってやはり立場主義・東大話法に侵された状態にありますよ。

 

立場主義・東大話法の見本が、製薬業界団体の人たちによるドラッグラグがらみの分析や報告である。 ドラッグラグは自然現象じゃないよね。 会社の健康(笑)・生き残りのために企業自身が行う、企業にとって望ましい選択であり、戦略である。 なのに、驚くべきことに、業界団体の報告書には、たいてい他人事のような顔をして「ドラッグラグ対策」と称する提案が書いてある。政府の規制の工夫が足りないとか、製薬産業に支払われるお金が足りないとか。 

なるほど。

書いてある「ドラッグラグ対策」 なるものが業界にのみ都合が良い対策であるような気はするが、そこは百歩譲ろう。 少なくとも、こうした分析・報告書を書いている人たち(多くはニポン人製薬企業社員)って「ドラッグラグ」は本質的に悪いこと・排除すべきもの、と本当に思ってくれているんだよね?

つまり彼らは、毎日の仕事の中で、自分の会社の社長や開発本部長に 「あなたたち経営陣がアメリカ優先という誤った判断をするからこんなことになるんですよ! ラグの原因がニポン政府とニポン人自身にあるとはいえ、わが社は倫理的にヤバいことをしてるんですよ! ニポン人殺す気ですか! ムッキー!」 などと詰め寄ってくれているのですよね? クビになるといけないから口には出さなくてもよいが、心の中ではマジでそう思っているのですよね? 製薬企業で日々繰り広げられている開発戦略策定会議では、そんな怒りや無念の思いが満ち満ちているんだよね? 間違っても、先行する米国試験の成功を待ちわびたりはしてないんだよね?

・・・

・・・ ほーれ、なんと分かりやすい立場主義・東大話法。 お役人だけでなく、製薬会社社員も、この席に座っているときにはこう言い、あの席に座っているときにはああ言う。 狭い日本だから、この席もあの席も大して離れちゃいないのだがな(笑)。

二枚舌で無節操なそんな業界人(産官学すべて)が書いた分析や提案なんぞ、まともな国民・市民が信頼してくれるわけなかろう。もしかしたら「まともな国民・市民なんて今のニポンには一人もいないんだから、テキトーに言いたいこと言ってりゃそれでいいのよ。 ははは」 と開き直ってるのかもしれんが。

 

「あなた」 はだーれ? 「わたし」 って誰だ? 

 

そう自身に問うところからまっとうな職業人・社会人への道が始まるのだと思うよ。

 

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最近読んだ漫画を紹介。 面白さ鉄板のベストセラーです。 未読のおじさん・おばさんはぜひ。

 

「チ。」は天動説とキリスト教が支配する世界で、真理(地動説)を追い求める異端者たちの物語。 異端者たちは壮絶に迫害される。 拷問され、殺される(サル的なヒトがいじめられているのとはレベルが違う)。 だけど真理は人間を許してはくれない。 真理のあまりの美しさに人は魅せられ、踊らされる。

第3巻で、地動説を裏付ける「満ちた金星」が観察されるくだりがあまりに感動的で、炎天下のベランダで涙が止まらなくなったサル的なヒト。

「不思議だ。 ずっと前と同じ空を見てるのに、少し前からまるで違って見える」

「きっとそれが何かを知るということだ」

 

これも鉄板の面白さ。チンパンジーをはるかにしのぐ身体と、ヒトをはるかにしのぐ知能をもったチャーリーを目の前にしたときの、人間どもの愚かな振る舞い。面白すぎて一気読み。 「登場する人間、ほぼ全員バカ」 の映画「猿の惑星」と似た雰囲気。

 

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というわけで、暑いけど頑張って生き延びましょう。 「体力落ちてるから苓桂朮甘湯も服用しようか」 などと漢方薬の教育など一度も受けたことがないくせにエラソーに呟いてみ ・・・  ようとしたけど呟けないサル的なヒト。 実は 「苓桂朮甘湯」 の読み方を知らない薬学部教員兼薬剤師ザルがここに一匹。 ニポンの見事な薬学教育の成果である。 あはは。

 

じゃまたね。