小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

コアタイムを尋ねない

「君たち学生は自分を大学の顧客と思っているのだろうが、私の目には君たちが商品に見える」 とは、ハーバードビジネススクール教員がしばしば引用する有名なセリフである。

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最近の若いもんは ・・・ と語り始めるのは決まってジジイなのだが、実際ジジイなのだから仕方ない。 最近の若いもん (学生さんね) を見ていて感じることを少々。

薬学部を含む理科系の多くの大学では、卒論を書く段階で4年生が研究室に配属される。 この慣習は昔も今も同じ。 で、3年生後期になると、心配性の学生たちがいろいろと質問に来るのだが、そこで彼らがたいてい最初に尋ねてくることがある。

 

学生さん: 「今日はお時間いただいてありがとうございます」

サル的: 「いえいえ。 研究室配属ってドキドキするよね。 将来の進路が決まっちゃう場合もあるしね。 何でも聞いてください」

学生さん: 「はい。 では最初の質問ですが、この研究室のコアタイムはどうなってますか?」

サル的: 「は?」

学生さん: 「コアタイムですよ、コアタイム

サル的: 「は?」

学生さん: 「『は?』 じゃなくて。 もしかしてこの研究室、コアタイムがないんですか?」

サル的: 「 ・・・ コアタイムってなんだっけ?」

 

ここ数年、来る学生来る学生みんなこんな感じ。 紙で答えるアンケートでも同様な質問が最初に登場する。 どうしてコアタイムがそんなに心配なんだろう? おまいら労働基準監督署の回し者か?

私だって若いもんの気持ちは分からんでもないのである。 学生時代には同じ心配を自分だってしてたしな。 遅くまで研究室に縛られていると、銭湯に行けなくなって身体が臭くなるし (銭湯は夜11時には閉まる)、楽しいテレビは見れなくなるし、睡眠時間が減るし。 場合によっては必死でご機嫌とっているカノジョとのデートができなくて、ふられちゃうかもしれない。 そ、そんなことになったらオレの人生、終わっちゃう! ・・・ とかね。 今だって、時間を食うだけの無駄な会議なんかで帰るのが遅くなると、心底イライラするし、悲しくなる。(注 1)

(注 1) ただしイライラする理由が 「家人に会えないから」 とかいうものではない点が昔とは違うけど。

しかし、進路の選択 (学部や研究室や就職先の選択) の面接なんかの際に、いきなり 「コアタイム」 から質問を始めることはなかったぞ。 だってさ、それって カッコ悪いもん (笑)。 損得感情丸出しの哀れな功利主義者みたい。

もう少し真面目に答えようか。 それってね、功利主義者の面接の作戦上もよろしくないに決まってる。 いきなり 「私が研究室に所属する目的は、研究室をできるだけ不在にすることです」 って白状してどうすんのよ。 センセーにしてみれば 「君は何のために高い授業料払っているの?」 と尋ねたくなって当然である。

しかし、こんなある意味牧歌的なコメントをすると、今どきの学生さんは 「小野センセーは、ブラック研究室が日本のあちこちで問題になっていることを知らないんですか?  弱い立場の学生が待遇を真剣に心配するのは当然でしょ?」 とイライラするのかもしれん。 うん、その手の話が日本 (世界) の大学で昔からあることは当然知ってます。 ちなみに、ブラックを語らせたら僕だって人後に落ちないぞ。 日本で一二を争うスペシャルブラック官庁で、20代から30代はたっぷり死んでたからな (笑)。

でもさ、もし本当にブラック系から逃げたいのなら、「コアタイムはいつからいつまでですか?」 と正直に尋ねるのは、僕の経験上、やはり戦略的にバカげていると思うよ。 だって、ブラックな雇用者や職場の上司は本当のことなんて絶対に答えないんだから。 コアタイムを気にする人たちに対しては、コアタイムに砂糖をまぶして、オブラートをかぶせて、さらにその上から純度100%のはちみつをふりかけて、「大丈夫ですよぉ。 なんにも心配ありませんよぉ」 と笑顔で答えるのがブラック業界のプロというもの。 善良なサル的なヒトのように 「はぁ? コアタイム? もっと先に聴くべきことがあるだろ? ムッキー!」 なんてバカ正直にイライラを顔に出したりするわけがないのよ。

しかし、海千山千のジジイの感覚で若者の将来を案じても仕方ないのである。 彼らの人生は彼らのもの。 一度や二度は大人たちにひどい目に遭わされ、理不尽な苦労をするのも人生の糧である。 若者は若者の時を生きて、バカな質問もして、楽しんで、苦しんで、そして年を取るのがよかろう。 順送りである。 見守っていてやるからさ、がんばれよ、若造さんたち。

とはいえ、ハーバードやスタンフォードの学生は、教員やチューターに 「何時まで大学で勉強してもいいですか?」 と尋ねることはあっても (注 2)、「僕は何時まで大学にいなきゃいけませんか?」 と尋ねることはないと思うよ。 たぶん。 「どうして私は嫌な大学に通わされて、勉強させられているの? 時間のムダなのに。 私は大学入学・卒業という経歴だけがあればいいのよ 」 というニポンならではの歪んだ被害者意識って、皆さんがなぜか憧れるグローバルコミュニティとやらでは理解してもらえないだろうなぁ。

(注 2) その手の大学の図書館はほぼ24時間開いている。

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久しぶりに気分爽快な日本映画。 「ダンスウィズミー」。


映画『ダンスウィズミー』本予告【HD】2019年8月16日(金)公開

 

とてもかわいい chay おねいさんがギター振りかざして大活躍するあのシーンだけでも元が取れますよ。 サル的なヒトが保証するので、今週末にでも安心して TSUTAYA に駆け込んでください。

 


Sugar ウエディング・ベル

 

じゃ、またね。