小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

そのうち、慣れる

う、う、・・・。 シクシク ・・・ 。

臭い ・・・ 臭いのよ。 ドブのような臭いがする。 オラのマスク。

このマスク、まだ7日目 なのに。 内側に茶褐色のねっちょりした垢が付いてるからかな。 なんか変なバイオフィルムが形成されている気がする。

でもさ、オラ上級国民じゃないから、マスクなんて買えないのよ。 毎日朝晩ドラッグストアを覗いてはいるのだが、店内に入る以前に 「マスクは入荷していません」 と大きく書いてある。

だから手持ちのマスクを大事に使うしかない。 臭くても、茶色のねっちょりした汚れが内側に付いていても、このマスクを使い続けるしかないのである。 マスク付けてないと、満員の半蔵門線の中で咳が出た時に人殺しを見るような目で見られるからな。

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で、皆さんどうですか。 コロナウイルスのドタバタ。 この先どうなるのかと不安でいっぱいの方々も多かろう。

よしゃ。 薬効評価・薬剤疫学領域の20年モノのエキスパートであるサル的なヒトが、コロナウイルス蔓延の世界の行く末を予想してやろう。 細木数子 (古っ) もびっくりの大予言だ。 聞いて驚くなよ。

 

そのうち、慣れる。

 

というか、

 

結構すぐに、慣れる。

 

い、いや、例によってテキトーなことを言っているわけではない。 過去の私たちの研究結果に基づいた推測である。 証拠はこれだ。

 

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新薬が新しく発売されるよね。 で、新薬なので副作用も盛大に出ることがある。 発生した重い副作用の数 (正確に言うと報告された数) を見ていくと、面白いことに気付くのである。 

薬のプロがこんなふうによく言うでしょ。 「発売直後の薬には、未知の副作用があることもあるので、市販後の監視が必要なのです」。 それはそのとおり。 で、その副作用の出方なのだが 「市販後の副作用は、発売後2、3年でピークになって、その後徐々に減っていく (いわゆる) ウェーバー曲線を描いて発生するはずだ」 という経験的仮説が今でも幅を利かせているのよ。 

ところが、グラフを実際に書いてみると、多くの薬でそんな曲線の形にはならないのである。 (注 1) 副作用報告数は 「市販直後にピークがあって、その後徐々に減っていく」 のではなく、「一定の数の重い副作用が、ずーっと出続ける」 という感じ。 「副作用は出るもんだから、仕方ないんでしょーな」 って感じ。 

(注 1) いろんな研究者が 「副作用数はウェーバー曲線にはならないぞ」 と報告しているので、興味のある方は論文を検索してみてください。 

健康量を数量化する流派のパブリックヘルスの視点からすると、市販後に出た (いわゆる) 未知の副作用の影響よりもむしろ、こうしたずーっと出続けている副作用の影響の方が定量的にはずっと大きいはずである。 時々 「薬の副作用は死因の上位を占める」 なんていうセンセーショナルな論文が出たりもする。 が、どうもこの手の 「私たち人類って困ったことから自然に目をそらす傾向があるのでは?」 といった問題にはみんなあまり興味を示さないのな。 業界人の大好きな、意味不明のベネフィットリスクとやらの分析もこれに関してはしないし。 (注 2)

(注 2) 医薬品でメシを食っている人たち全員 (企業、当局すべて) にケチをつけることになるから。 既存のシステムの予定調和の中でメシを食っている研究者は決して手を出さないトピックである。

パブリックヘルスはさておき (私はプロだからさておく気はまったくないのだが)、リスク社会学的に解釈すると、この現象って、私たちみんなが、重い副作用に (あるいは、企業の人たちと規制当局の役人が 「このくらいなら許容範囲だよね」 と勝手に判断した安全性プロファイルに) 慣れていくプロセスそのものである。

社会が、副作用に、慣れる。

社会が、健康被害に慣れてしまって、誰も特段気にもしなくなる。

これって、別に不思議なことではない。 過去の私たちの歴史・生き様そのもの。 薬害とかを含めてね。 健康被害を受けた (受けている) 人々にしてみればたまったもんじゃないのだが。 

で、話をコロナウイルスに戻す。 憎々しい奴らだが、こいつらを根絶することなど誰の目にも不可能なのである。 受け入れて、共存するしかあるまい。 トム・ハンクスが感染したのだから、あなたも私もそのうち感染するのだろうなぁ。

みんな不安だよね。 でもね、大丈夫だと私は思うのよ。 なぜなら、

私たちって、直接的にはもっとヤバい健康被害 (副作用) を平気で・無自覚に受け入れてきた、相当に鈍感なサル人たちなんだから。

みんな、イヤなことや都合の悪いことにすぐに慣れてしまう自分たちの鈍感力にもっと自信を持とうよ。 空からサラサラと放射性物質が降っていたあの日にも、新橋や虎ノ門のリーマンのおやじどもは平気で昼メシ食いにラーメン屋に行ってたじゃないか。 あとさ、原発被害や台風被害と同様に、喉元すぎればすぐに忘れてしまうのもニポン人の得意技ですね。 ほれ、もうみんなコロナのニュースに飽きてきてるんでしょ?

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「病気を治すという目的がある薬が引き起こす副作用と、その辺から降ってわいたコロナウィルスでは話が違うのでは?」 と思われる賢明な方もおられよう。 そのとおりです。 他にもじっくり議論すべき点がたくさんある。 そういう冷静な人々とは、SNS ・ブログのようなバカ発見器を通じてではなく、面と向かってゆっくり話がしたいものである。 ・・・ あ、でも互いにマスクは着用しようか。 オラのマスク、ちょと変な臭いがしてるけど気にしないで。

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映画 「Ad Astra」 を見る。 ブラピが出てるからな。


ブラッド・ピット主演!映画『アド・アストラ』予告編

 

・・・。 

なんというべきかビミョー。 見ていて 「宇宙空間って、もしかして空気が結構あるのか?」 などと勘違いしてしまったサル的なヒト。 ヒット作 「マイクログラビティ」 と、地獄よりも怖いものを可視化してくれた怪作 「イベント ホライズン」 の両者のダメなところを合せたような作品のような気もする。 が、ブラピがカッコいいのだから良しとしよう。

いいのよ、それで。