小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

グローバル社会をタフに生きるための研修はどうですか

日本語版ニューズウィーク誌(April 18, 2012)のグローバル人材養成の記事、とても面白い。

こういう記事は数カ月ごとに、そして半永久的に、ビジネス誌の紙面を飾り続ける。 新しいことが書かれているわけではないのに、毎回毎回、現代人の不安な気持ちを見事に刺激し続けるんだよね。

「私は、グローバル競争の時代を生き延びていけるんでしょうか? 英語あまりできませんけど」とか、「会社の上司が外人なのですが、コミュニケーションのコツを教えてください」とか。

心配の種は永遠に尽きないし、私もサラリーマンとして、同病相哀れむの心境である。

たいてい、この手の特集記事は「単に英語の問題ではない。 単にビジネススキルの問題ではない。 単にコミュニケーションの問題ではない。 大事なことは『真の実力』を身につけることだ」が結論となる。

『真の実力』。 わかるような、わからんような。

しかし、そこでシニカルに構えているだけではいかん、と思い、最近、製薬企業の方々向けの研修に気合を入れて取り組んでいる。

東京大学薬学系研究科では、大学院の講義(冬学期に開講します。社会人も正式に聴講できますよ)、医薬品評価科学レギュラーコース(RC)、先端創薬科学講座セミナーコース(FDD)、・・といくつかの研修がありますから、興味のある方はぜひご参加ください。 詳細はwebで。)

それ以外にも、私個人が企画し、実行している研修がある。 その一つが「グローバル社会をタフに生きるための出張講義」。

講義では、「こうすればPMDAの承認審査がうまくいきますよ」とか「効率的な申請資料作成の方法」とか、そういうことは一切教えない。

鍛えるのは、簡単に言うと、概念スキル。 例えば「倫理・道徳の樹」なんてものを解説する。「善い・悪い」の考え方を教える。 何を主張するにしても、規範としての「善い・悪い」の基準がないことには、「それは僕的には納得できません」といった、若いにーちゃんのイラっとくる弁解と同じレベルになってしまうからだ。

帰結主義、厚生主義、そして個人間比較可能性。 ロールズ、セン、アロー、ナッシュ、パレート・・・ あぁ、講義をする私も楽しくて仕方ない。 こんな話なら、何時間でもしたい! なんだかオラ、ワクワクしてきたぞ(悟空風に)・・・危ない人かもしれない。

医薬品関係者は、こんな話に触れる機会などないから、最初は目が点になる。 でも、心に可塑性のあるおぢさん・おばさんは、講義を聴いているうちに、目が輝き始める。 ほんとうに。

実は、このような目の覚まし方は母校である Harvard School of Public Health(HSPH)の受け売りだ。
高額の授業料の元を取ろうと気が逸(はや)る学生に、「君たちね、経済学(economics)だの、疫学(epidemiology)だの、統計学(statistics)だのを勉強する前に、ちょっと落ち着いて、倫理(ethics)をやりなさい。 すべてはそれからだ。 倫理を理解しないと、学者としても実務家としても先には進めないよ」とまず冷や水をかけるのが HSPH流(私の個人的解釈です)。 そして数年後、恐ろしいことに、その予言は当たるのだ。

私が、研修で具体的に何を教えているかは、また次回以降のブログ更新のときに。 社会科学の基本概念のメジャーどころは結構カバーします。 好みで交渉学(negotiations)とかも少し。

あ、そうだ。 私の出張講義にはもう一つ特徴がある。 それは完全に「無料」であることです。 お金は一切頂きません。 講義を依頼する側と講義をする側(私)の間にあるのは、信義、信頼、友情、同胞愛(fraternity)。 まさに少年ジャンプの世界、ドラゴンボールOne Piece の世界だ(笑) でもそれが楽しい。

日本の製薬企業の方々、研究所の方々、当局の方々、患者さんが、タフに、元気に、そして楽しく、このグローバル社会で活躍し、生き延びていくための知的体力を鍛えたい。 そのお手伝いができるのなら、どこへでも馳せ参じます。 いつでも声をかけてください。