小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

ある略取誘拐犯の満たされた午後

週末、羽化した(成虫になった、という意味ね)カブトムシを全部、近所の子供付きファミリーに里子に出すことができた。 よかった、よかった。 ホッとしましたよ。

池にザリガニ取りに来ている一家がいれば、百発百中である。 なんといっても昆虫の王様カブトムシ。 金の斧・銀の斧の童話ではないが、「あなたが探しているのは、この赤くてちょっとニュルニュルした凶暴なアメリカザリガニですか、それとも、この黒光りしてキュートで賢そうな昆虫の王様カブトムシですか?」と聴けば、生き物好き一家は100%喜んで受け取ってくれる。

それだけでは引き取り先が足りないので、他の家族を近所のファミレスで狙う。 小汚い泥がついた大きな紙袋を足元に何袋も置いて、店内でチラチラと周囲に目を光らせながら、小さな男の子がいるファミリーを探している様子は、挙動不審な略取誘拐者そのものである。  怪しい! どう見ても怪しいぞ、このサル的なおぢさんは!

男の子が店内のトイレに向かったのを見計らって、両親に近づいていき、「お宅の息子さんを預かった・・・ぢゃなくて、お宅の息子さん、カブトムシ好きですか?」と話しかけると、まずは怪訝な顔になり(当たり前だ)、そしてトイレから自分たちの息子が無事に出てくるのを横目で確認しつつ、「なんですか? あなたは?」と鋭い目で尋ねてくる。

「いや、その、あたしゃぁ決して怪しいものぢゃなくて、心やさしい近所のおぢさんなんですが、その、カブトムシがたくさんいるので、お子さんに差し上げようと思って、・・・」と言って泥だらけのペットボトルケースを取り出して見せる ・・・ と、数秒で皆さん笑顔になるんですよ、これが。 怪訝な顔から笑顔へのワンダホーな変貌ぶりが、すばらしい。

「あーー、カブトムシだ!」とまず歓声をあげるのは、子供ではなく、だいたいは大人。
「去年も飼ってたんですよ」と答える家族も結構多かった。
「おっきいなぁ! いいんですか、こんなもの頂いちゃって?」となれば、交渉は円満に完了。
「どうぞどうぞ」とドヤ顔で満面の笑みのサル的おぢさん。 なんたって、小麦粉添加による栄養強化・発酵ずみマット(幼虫の餌になるおがくず)をオトナ買いして、飼育に金かけてますからね。 すくすくとデカく育ってるんですよ、こいつら。 まぁ簡単に言うと、ドーピングってことですけどね(笑)

ということで、21匹全員、無事に里子に行きましたよ。 床面積の半分くらいを占めていたペットボトルの山がなくなって、妙に広くなった僕の部屋が寂しい。 母さん、人生ってさ、出会いと別れがあるんだよね。 フーーー(と遠い目に・・・)

・・・本当は、里子に出さずに自分用に2匹こっそりキープしてあるのは、家族にも内緒の、ここだけの秘密な。 おまいら、誰にも言うんじゃねーぞ。 絶対にだぞ。