暑いのと、オリンピックを深夜まで見過ぎで、頭がぼーっとした状態が続く。 ぼーっとしながら仕事をしているのに、そこでわけのわからない主張や意味不明の文章を読まされるのはキツイ。 商売柄、一般メディアや医薬品関係誌を毎日チェックするが、最近は見出しを読んだだけでイヤになってしまう類の記事が多い。
（某誌の記事（一部改変））
・・・ 未承認薬問題の原因は明らかに製薬企業による開発着手の遅れだ。ウルトラオーファンでは薬価を高くしても市場は見込めない。ドラッグラグの要因はそこではないか。新薬創出加算による解決は、全面的に否定するものではないが、それだけではドラッグラグは解消しない。
製薬企業の創薬体力は十分にあるはずだ。ドラッグラグ解消のために、税金と保険料で補填するのはいかがなものか。開発要請を「社内検討中」で逃げるのは倫理的にどうかと思うし、これだけ儲けているのだから、公費に頼らず自前で開発することが本筋のはずである。
いやはや。 世の中のドラッグラグの記事って 95% くらいがこういう風だ（注）。 記事の信念・好みについては何も言うことはありません。 要は製薬企業が気に入らないんですよね。 それはよーく伝わりました（笑）。 激しく共感するところもあるし、違和感を覚えるところもあります。 信念・好みの立脚点が違うのは、皆、お互い様。 問題はそこじゃない。 主張の正当性（事実と論理と倫理）がさっぱりわからんのです。
（注）この記事を書いた記者さんをどうこう言っているわけじゃないですからね。 念のため。 新婚のＫさん、誤解して怒らないでね。
さっぱり理解できない点をリストアップしよう。 暑苦しいから、読みたい人だけどうぞ。
- 未承認薬問題って、何をどこまで含むのだろう？ 保険適用の話は無視してるんですけど。
- （仮に「未承認薬問題は日本で承認された薬が少ないこと」だとして）製薬企業による開発着手の遅れは「原因」じゃないですよ。 単に、起きてることを言い換えているだけ。 現象を言い換えただけで、原因がわかった！ って言われてもなぁ。 「原因」はそれほど簡単じゃありません。
- ドラッグラグ（定義不明だが）がウルトラオーファンのせいで起きているって、そんな結果見たことがありません。 「要因はそこだろう」って思い込みを押し付けられても困る。
- 「新薬創出加算は全面的には否定しない」そうですが、なぜそう思うのかわからん。 上から目線だなぁ（笑）
- 「ドラッグラグは、新薬創出加算だけでは無理でも、何かいろいろうまい手を打てば、解消する」んだそうです。 恐ろしく楽観的ですね。 世の中、解消する問題なんてほとんどないんですよ。 この三十年間くらいの医薬品がらみの困り事で、「解消した問題」を一つでもいいから挙げられますか？ ないでしょ、そんなもの。
- 「創薬体力」って、急にそんなわけの分らん言葉出されてもなぁ。 定義が欲しい。
- （仮に「創薬体力」を研究開発費＋アルファと解釈して）企業の「創薬体力」が低いから（研究開発費が足りないから）ドラッグラグが起きている、なんてデータ、どこにもありませんよ。 関係としては、むしろ逆です。 「創薬体力」溢れた企業が、積極的にドラッグラグを起こしうるのです（利潤追求者として）。 そこがドラッグラグ問題の本質。 だから、難しいんです。
- 「企業にお金を補填してあげれば、そのお金で日本で新薬を開発してくれるだろう」という推測が記事の前提ですが、お金を貰ったら、感謝の言葉を述べながら、そのまま外国にお金を持ち逃げするのが企業の最適行動だと思います。
- 「開発要請を逃げるのは倫理的にどうかと思う」ってどんな倫理なのだろう？ 「俺的にはどうかと思う」 「世間的にはどうかと思う」って言ってるのと同じかも。
- 「企業はこれだけ儲けているのだから」と言いたくなる気持ちはわかるが、では、どのくらいまで利潤レベルを落とせば、許容される清貧な企業になるのであろうか。 「製薬企業の適正な利潤レベル」なんて聴いたことないぞ。 清貧な企業の方が世の中に貢献しやすい、なんてのも聴いたことがない。
- 「公費に頼らず自前で開発するのが筋」って、何だろう「スジ」って。 牛スジかなんかだろうか。・・・ なんかマジメに指摘するのがアホらしくなってきたぞ。
繰り返しますが、私が首をかしげているのは、信念・好みではなく、主張の仕方・お作法。 産官学の業界人の皆さん、主張は、事実と論理と倫理でちゃんと裏付けましょうや。 ね。 こういう主張の仕方では、外人さんとの競争には勝てないと思うのです。
ちなみに、上の記事のように、鎖国を前提にした視点でドラッグラグを議論するのは、ナンセンスです。 じゃあどういう風に議論すればよいかは、また次の機会に。 長くなるから、今日は無理。
さて、オリンピックも残りわずかだ。 頑張って応援して、寝不足になりましょう！
（追記）
さっき、ＰＭＤＡのメディナビの Google Ads が下に付いてた！ ちょっと嬉しいぞ。 苦節３カ月、まともな医薬品ブログと Google がやっと認識してくれた。 ちなみに先日の記事では、女性のランジェリーの広告が付いてたっけ（笑）
