小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

皆さんはうつ病ですか?

右手の中指と薬指が生臭い。 職場のパソコンのキーボードのLのあたりが生臭く、ねっちょりしているからだ。 なぜキーボードのLのあたりが生臭いのか。 それは、昨日食べたちらし寿司弁当の上に乗っていたイクラの粒が、なぜかキーボードのLとKの間あたりに跳ねてしまい(弁当の上の透明のシートを取ったときに一緒に付いていったらしい)、それに気付かずにブラインドタッチしてしまって、「プチっ」と炸裂してしまったからである。

散歩中のワンコやニャンコにうかつに右手を差し出すことができない状態である。 あぁ、肉球に触りたい ・・・

それはさておき、今日はうつ病について。 皆さんはうつ病だろうか。 私は、たぶん、うつ病である。 たぶん、というのは、一度も医療機関で確定診断を受けたことがないから。 こういう人、ブログ読者の中にもたくさんいると思います。

職場の健康診断を受けると、事前に問診票で「次のような症状がありますか?」と聴かれますよね。

a. いつも仕事のことが頭から離れない。
b. 夜、ぐっすりと眠れない。
c. 死んでしまった方が良いと思うことがある。
d. ・・・・・

1. よくある 2. たまにある 3. どちらともいえない 4. あまりない 5. 全くない

以下、このサル的な人が問診票に回答中の頭の中。

・・・えーっと、まず 「a. いつも仕事のことが頭から離れない」 か。 カブトムシのコロコロした糞を無心にふるい分けている間は、仕事のことは考えてないよな。 けど、それが終わったらすぐに思い出すなぁ、仕事のこと。 あの原稿の締切が10日ほど過ぎてるとか、あのイヤミなヤツと顔を合わせないようにするにはどうしたらいいか、とか・・・  最近はお風呂で髪を洗ってるときも、仕事がらみの辛いできごとをずっと考えてるなぁ。 よし、「1. よくある」 に ○ を付けて、と。 次にいこう。

「b. 夜、ぐっすりと眠れない」 ね。 最近イヤな夢見るんだよなぁ。 この前なんか、なぜか職場の連中と一緒に中東に向かうフェリーに乗せられた夢を見たなぁ。 すごく不愉快なことを言われたんで、『降ろせーー。 俺をこの船からすぐ降ろせーー。 中東に着く前にイスタンブールあたりで降ろせーー、この野郎!」 と叫んだところで目が覚めたんだった(笑) 布団に入って眠れないまま、TBSラジオの深夜放送を 深夜1時の「伊集院光深夜の馬鹿力」から聴き始めて、朝6時30分の「森本毅郎・スタンバイ」までずっと聴いてることもあるしなぁ。 これも 「1. よくある」 に ○ だな。

で、「c. 死んでしまった方が良いと思うことがある」か。 毎度毎度、よくこんな当然のこと尋ねてくるよなぁ。 そんなもの、誰でも思ったことあるに決まってるじゃん。 あの養老孟先生も言ってるよね。 『生きているのは運がいい。 死んでしまえば怖いものなし』って。 そういう風に回答するのが、日本文化ってヤツだろ。 だから、これは自信をもって 「1. よくある」 に ○ っと。

・・・ というふうに十数年間回答してきたのだが、最近、周囲の友人や学生にそのことを話したら、彼らからの返事は衝撃的だった。

「・・・ 小野さん、悪いんだけど、私は一度も『死にたいと思ったことがある』には ○ をつけたことはないよ ・・・」 と友人たち。 心なしか目をそらしながら。

「エエッ、小野先生、変ですよ、それ。 僕は死にたいと思ったことはさすがに無いですよ」と学生さんたち。 遠慮会釈のない鋭い視線を浴びせつつ。

いやーー、びっくりした。 尋ねた私の方が。 みんな、そうなのね? 「c. 死んでしまった方が良いと思うことがある」 に自信をもって 「1. よくある」って答えないのね、みんなは。 あいやー、知らなかったぞ。 おまけに、健康診断っていう儀式の空気も読まなきゃいけないわけね。 サラリーマン(産官学すべて)は、ポストを外されたり、出世できなくなるから、「1. よくある」と思っていても、そうは答えられないわけだ。

いやはや。

しかし、この重大な見解の相違が露呈したせいで、なぜ私のところに毎年 「うつ病のおそれがあるので、診断を受けてください。 診断を受けないのなら 『今、生きてます』(笑) という返事を電話かメールでしてください」 という親展のお手紙が来るのかがよくわかった。(注) もちろん、「c. 死んでしまった方が良いと思うことがある」 の回答だけで親展が来ているわけじゃないのだけど。 今年も、つい先日健康診断があったから、これから親展が来るんだろう。 で、私は今年もたぶん 「生きてます。 雇用者として労働安全衛生法上の義務を果たしてくれてありがとう」 とメールで答えるのだろう。 むろん皮肉だ。

(注) 親展の手紙には(笑)とは書かれていない。

職業柄、抗うつ薬の薬効評価やらにはそれなりに詳しいが、自分自身のメンタルヘルスの状態については、ちゃんとお医者さんに診てもらわないといけない、ということですね。 現代人は大変だ。 俺はサルでよかったなぁ。

ご同輩の皆さま。 背負わなくてもよい重い荷物を背負って、なんでこんな思いをして生きているのか、と思ったりすることもある毎日だが、同病相哀れむということで、「辛くなったら、サル的日記」をどうぞ。 「痛くなったらすぐセデ○」 みたいなもんだ。 バカ話の記事を読んで、大笑いしてくださいな。 間違えて、リスクベネフィットの解説などの記事を読まないように。 アロウの不可能性定理 impossibility theorem とかが妙に気になりだしたら、危険なことになります ・・・ あ、それが今の私だ(笑)

今から7-80年後には、読者のほとんどはこの世にはいないのだから、せめてこの現世(うつしよ)、喧嘩せず、仲良く、楽しく、やりましょうね。

うつし世はゆめ よるの夢こそまこと (江戸川乱歩