小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

誰が何をどう決めたかを隠す仕組み

御用メディアきらめく医薬品業界紙・業界メディアにおいて、唯一燦然(さんぜん)と、お役人や大企業のおエラいさんに媚びない独自の茨の道を行き、時に業界の東○ポとさえ讃え称されるR○SFAX(伏字にする意味が自分でも全くわからない)のホームページには、契約者だけが読むことができるブログ記事がある。 いわゆる「裏リス」である。 抗菌剤の「クラリス」、2001年宇宙の旅の「モノリス」と並んで、三大「リスもの」と呼ばれることは、ない。

その裏リスには、昔から一癖も二癖もある(むろん褒め言葉です)匿名のブロガーが何人もいて、個性的な記事を書いているのだが、その中でも製薬企業系のネタを語らせたら右に出るものがいない方が豚(とん)さんである。 正体は私も知らないのだが、でかい企業のOBだろうと推察する(違ったら「違うぞ」とこのブログのコメント欄で連絡してください(笑))

で、その豚さんの最近の記事、いつものように面白いので一部(というか、全部)を引用する。

 ある外人さんのお作法についての疑問の話。 それはPMDAの対面助言について。 対面助言の式次第について、出席者の自己紹介、相談者のスライド発表、その後、討議。 というような手順やそのやり方。 自己紹介の時には立ち上がって、頭をさげて、自身の所属と名前を言うとか。 また、この相談に至る過程も、相談資料への照会事項があり、それの回答を提出、その回答に基づく機構の見解、という流れを説明したそうな。

 ま、外人から見ると、なんでこんなにやりとりしないと対面助言にたどりつけないのかが理解できないようだ。 もちろん、FDAであっても照会というか質問が出されるのだが、大抵は電話会議。 文書でいちいち提出しなければならないのは日本だけだそうな。

 ついでに、FDAでは事前見解などというものはないので、当日の議論でその方向が変わる。 ところが、日本では事前見解がひっくり返ることはほとんどない。 すなわち、当日の議論は、決定路線の上をなぞるだけ。 これも外人には理解できないそうな。何のために対面でお話するのか、FDAと同じように討議すべきだ、というご意見がありますが、日本企業の皆さんはこれを説明するのに苦労なさっているとも聞きます。

豚さんはこの趣旨の内容を30回くらいは書いていると思うが、何度読んでも「そのとおり」と言うしかない。 神事の国、ニッポン。

最近私自身も、奇妙なニッポン人の慣行の例に出会ったので紹介する。

「無記名投票」なるものをする機会に出くわした。 出席者わずか5人の会議。 選択肢AとBのどちらかを選ばねばならない。 1時間ほど白熱した議論をして、「私はAが良いと思う」 「私はBを推します」 ・・・ と見解が分かれた。 座長が 「決まらないですね。 じゃあ多数決をとりましょう」 そしたら、事務局が待っていたかのように白紙の投票用紙を5人に配り始めた。 皆は、すぐに投票用紙に書き書きしてる。 「ん? 手を挙げりゃいいんじゃないの?」 と思っていた僕は、一人ポカーン( ゚д゚)

お断りしておくが、投票の規定だとかややこしいルールがあらかじめ定められているような会議じゃないのよ。 その会議は、正確に言うと、専門家が専門家の責任において理屈と決着をつけるべき状況だった。 なのに「逃げた」。 誰が何を(誰を)支持したか・拒否したかを表現することを、逃げた。 「ちょっと待ってよ。 私の最終判断をきちんと表現させてよ! 言わせてよ! ムキー―!」 というわがままは許さないらしい。

5人による無記名投票(笑)の結果は、結局、皆が口に出していたとおりであった。 結果がひっくり返るのをワクワクしながら期待したのだが、何も起きなかった。 なーんだ。 やっぱり単に、皆に「最後の」意思表示をさせたくないだけなのね。

無記名の秘密投票の意義・意味は百も承知。 衆議院議員選挙を記名投票しろ、って言われたら、何の迷いもなく 「断る!」 と答える。 でもね、無記名投票に「逃げる」ことで失われるモノもあるわけです。 例えば、プロ・専門家としての誇り。 一人の人間としての責任。 判断にどれくらい自信があるのか・無いのかの貴重な情報。 など。

これらって全部、豚さんが上で指摘した新薬の承認審査の現場の歪みの背景にあるものだ。 

「チーム審査」と称して、責任も判断の根拠もわからぬままに、なぜか事前に(笑)結論が出る。 おまけに当局と企業が直接面と向かう会議で読み上げられる結論には 「リスクは許容されないと考えられる」 とか 「このデータでは不十分であると考える」 なんて書いてある(注1)。 なんだよ、「考えられる」って。 具体的に誰なんだよ、それを考えたのは。 そこの眠たそうな顔をしたアンタか? それとも隣に座っている他人事のような顔をしたアンタか? ・・・ と企業のヒトが尋ねることは許されないわけですね。(注2)

(注1) 私が変だよと指摘してるのは 「考えられる」「考える」 の構造なのに、当局や業界の人たちにはそれを理解してもらえない(確信犯的に無視されてる)。 その代わりに、彼らは「リスクの許容範囲」だの、「データの不十分さ」 の方にばかり目を向けるんだよね。 「日本にリスクベネフィット評価を導入する」とか言っている人たちね。 確信犯の一部の業界人たちは、科学者のような顔をして 「独裁」 の構造を新薬評価に導入しようと企んでいますので、市民の皆さんは目を光らせておいてね。

(注2) 有り体に言えば、その文書をワープロ打ちしている大学院出たばかりのPMDAのおにいさん・おねいさんたちが「考えた」本人なんだよね。 その若さでグローバル企業にガツンと正義(笑)の鉄槌を下しているって、すごいねぇ。 権力って、すごいねぇ。

このようにわけの分からぬ世界だが、登場人物たちは、実は結構平和にやっているんですよね。 予定調和で。 こんな感じでしょうか、豚さん。

ということで、今日の記事はここまで。 続きは次回以降に。 長い記事を読んでくれて、ありがとね。