小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

人類 万歳

明けましておめでとうございます ・・・ と朗らかに、かつ、能天気に挨拶するタイミングを私は明らかに失したわけだが、皆さんは元気に生き延びているのですよね。 記事を書くタイミングを一度失すると、「うーん。 今日はだるいし、明日でいいか」 となり、「・・・ 急ぐものでもなし、まぁ次の週末でよかろう」 となり、ついには 「今月中に一つ書けばいいか」 となり。 三日坊主 (っていったいどんな顔をしてるのだろうか?) にあやうくやられるところだった。 本当におそろしいヤツである。

年明けから気合を入れてテキストの原稿をガリガリ書いている。 例の出張講義の内容を分かり易く整理しているのだが、これが難物なのである。 例えば、経済学部の学生が半年かけて学ぶ経済学の導入編を、こちらは2時間の講義で済まそうというのだから、土台無理がある。 重商主義 → 古典派経済学 → ちょっと横にそれてマルクス経済学 → ケンブリッジ学派 (マーシャル、ケインズなど) → シカゴ学派フリードマンなど)、ローザンヌ学派ワルラス、パレート、そしてシュンペーター) なんていう経済学のオールスターの歴史に散りばめられているいろいろな「概念」を2時間の講義でカバーするのは、さすがに暴挙である。 だから、講義とは別に詳しい解説を作って配布しようか、などと考えているわけだ。

経済学の基本的な概念を欠いた議論や主張は、危険だ。

10日の読○新聞にも、東インド会社重商主義者トマス・マンも真っ青、といった感じの記事が載って、ある種の感動を覚えたばかりである。 これを書いた記者さん、18世紀の英国生まれのヒトかもしれん。

バイオ薬「国産化」推進 輸入超過に歯止め

日立製作所三菱化学など・・・・は、欧米企業が特許を寡占しているバイオ医薬品の「国産化」に向けて共同開発に乗り出す。 ・・・ (バイオ医薬品を)日本で量産できるようになれば、薬の輸入超過で国富が流出している現状に歯止めをかけられる公算が大きい。

重商主義(重金主義、貿易差額主義、コルベール主義など)といった言葉になじみがない業界の皆さんも、「薬の輸入超過で国富が流出している」 なんて書かれると、さすがに 「おいおい、その言い方は何かおかしいんじゃないか?」 って思うでしょ? 外資系企業で働いている人は国富流出に加担している国賊かね(笑)? 重病の患者さんは、国富流出の原因を作っている悪者なのだろうか? アメリカは医薬品の輸入超過国だから、オバマさんや米国大使館は国富流出の食い止めに必死なんでしょうね、きっと(棒)。 だからアメリカはTPPなんて大反対なんだよね。 ・・・

ねぇ、記者さん。 最近の医療関係の新聞記事、どうもトーンが少し変な気がするのですよ。 森田健作風の熱血中学生の作文みたいな記事が多いように思うのです。 勢い任せの論調の記事を書く前にちょっと立ち止まって、もう少し落ち着いて、学校で昔習ったことを思い出してみてはいかがですか。

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昨日は久しぶりに映画館で映画なぞを観る。 「永遠の0」 で盛大に泣こうかと思って映画館に着いたら、「『永遠の0』 は本日はずっと満席です」。 ガーン ・・・ げに恐るべし、ジャニーズ主演映画。 若い連中がこんな特攻隊の映画に押し寄せているとは思わんかった。 

だいたいにして、小説の主役の宮部久蔵はジャニーズ顔はしてなかったと思うのよ。 私が想像するに、松重 豊 (あの 『孤独のグルメ』 の井之頭五郎である) のようなルックス・体型ではなかったろうか。 もし仮に、井之頭五郎が主演だったとして、今の若者は映画館にちゃんとやって来て、あの悲惨な戦争を直視したのだろうか ・・・ という疑問はあるのだが、しかし、まぁケチをつけるのはよそう。 わずか70年ほど前に、今の私たちと本質的には何も違わない曾祖父・曾祖母の世代の日本人自身が行った選択があの悲惨な戦争だったという事実に、若い人たちが思いを馳せるそのきっかけになるのであれば、ジャニーズ主演、万歳! だ。

で、代わりに観たのが、もう一つのゼロ。 評判の高い 「ゼロ グラビティ」。

上映開始5分で、この映画を観ることにした自分を恨むこととなる。 

地球にいるはずなのに、宇宙酔い (笑)
動かない座席に座って、宇宙酔い (笑)
楽しい休日なのに、宇宙酔い (笑) 

無重力の世界の人体・物体の動きに、目眩がして、吐きそう。 隣に座っている家人 (私よりも乗り物に弱い) は、冒頭の激しいシーンからいきなり目をつぶったまま、築地市場のマグロのごとき不動の物体と化してしまっている。 何のために高い入場料を払ったのであろうか、サル的なヒトたち。

しかし、である。 我々人類にだって、アウストラロピテクスの頃から数百万年かけてここまで進化してきたというプライドがある。 人類をなめてもらっては困るのだ。 3600円/2人の料金のもとをとるべく、なんとか頑張って画面下部の字幕だけはチラチラとながめていたら、そのうちにだんだん無重力的動きに慣れてきた。 目眩も吐き気もおさまった。 そして、映画の後半では、主演のサンドラ・ブロックねいさんの人間離れした (注 1) 活躍に手に汗握るだけの余裕が生まれてきたのである。 そう、それはつまり、
人類の適応能力 adaptation! 人類の進化 evolution! ビバ 人類(の三半規管) 

(注 1) 喩えるならば、宇宙空間でノストロモ号にしがみついて人間を食い殺していたエイリアン並みの体力であった。

最後のカエルさんの登場シーンでは大笑い。 ああいうの、大好き。

気分が悪くなったのは我々アラフィフ世代だけかと思ってたが、私たちの後ろに座っていた大学生くらいの若い連中も 「うーー、気分悪い ・・・」 とうなっていたから、年齢は関係ないのかもしれん。 助演のジョージ・クルーニーの渋いオヤジぶりが恰好よすぎである。 結論としては、とても素晴らしい映画。 お勧めです。 体調の良い時を選んでご覧ください。

・・・ ということで、サル的日記もここに始動。 今年もよろしく。