小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

おじさん、雨水が滲みない靴をください

暖かくて、なんともいい気分の季節なり。 うちの近所の道端 (高速道路の下) で寝ているホームレスのおじさんがいるのだが、ここまでくれば大丈夫だな、と一安心である。 今年の冬は寒かったから、本当に凍死してしまうのではないかと心配でたまらなかったのだ。 頭までスッポリ毛布をかぶって寝ていたのだが、寒かったろうなぁ。 冬の間、お手伝いが何もできなくてごめんなさい。

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路肩に寝るほどではないが、私は(我が家は)結構な貧乏である。 給料は大学からもらっているのだから、むろん本当の貧乏では無い。 私程度の貧乏を本当の貧乏なんて言ったら罰が当たる。 都会のネズミの中での単なる相対的貧乏。 タモリが 「笑っていいとも!」 を始めた32年前に田舎から上京した貧乏人の小倅(こせがれ)だから、家も土地も無い。 ダブルインカムとかじゃないから貯金はあまり無い。 副収入も無い。 転職の際は自己都合退職だったので、退職金は雀の涙だった。 子供には金がかかる一方で、返ってくる見込みはない。

このままいくと、老後は家人と二人で西日の射す線路わきの風呂なし四畳半くらいにしか住めない計算だ。 いや、冗談ではなく、結構マジで。 大学時代の下宿生活にまた戻るのだと思えば、どうってことないか。

貧乏カネ無し。 カネが無いから、安物買いの銭失いを地で行く毎日である。 一昨年、茶色い運動靴を買ったのである。 それ以前に2年ほどほぼ毎日履いていた黒い運動靴の底に穴が開いて、水が滲みるようになったから、だ。 貧乏人の靴って、大雨が降ると水が滲みて、たいてい 「ガッポン、ガッポン」 っていう音がするんだよね。 

で、その茶色い運動靴だが、むろん安売り靴屋の店頭に並んでいたやつだ。 2,900円くらい。 しかしサル的な人にとっては大きな買い物だ。 服だの靴だのは2年に1回くらいしか買わんからな。 「嬉しいのぉ。 新しい靴は嬉しいのぉ・・」 と呟きながら通勤に履いていたのだが、ある雨の日。 なんとその新品の靴に水が滲みるのだ。 大した雨ではない、普通の雨で。 靴下が雨水でぐちょぐちょになって、ツーンとすえた臭いになって、もちろん 「ガッポン、ガッポン」 という音がする。

おかしいなぁと思って靴底を見たら、なんと、靴底に大きな通気孔があるではないか! その靴、いわゆる 「足が蒸れない通気性軽量シューズ」 だったらしいのだ。 ああ、なんてこと、この靴はブルジョア仕様だったのだ。 晴れの日も雨の日もとにかく一足で済ます貧乏人は、靴に通気性や軽量性は求めない。 求めるのはただ一つ、雨水が滲みない こと。 

2年に1回の買い物に失敗して、悔しくて、サル的なヒトの目からハラハラとこぼれ落ちる涙。

しかし選択の余地は無い。 雨が降らないことを祈りながら、履く。 東京は晴れの日が多いから助かるのよね。 でも一度雨が降ったら 「ガッポン、ガッポン」。 このまま我慢し続けようかと思ったが、雨のたびに足から異様な臭気が湧き立つのでは周囲に迷惑がかかる。 泣く泣く今年の冬、新たに運動靴を買ったのだ。 今度のはすごいよ。 なんといっても私でも知ってる会社の靴だ。 ダンロッ○。 店頭の宣伝には 「5センチ防水」 と書いてあるぞ! 3,900円もしたもんね。 ムキー、これで雨の日も大丈夫。

というわけで、ワクワクしながら雨の日を待つこと数日。 ついに先日、期待の雨降りの日がやってきた。 おお、いい感じの降り具合。 新品のダ○ロップの運動靴を箱から出して履いて、「いってきまーーーす!」 と傘をさし、元気に外に出て駆け出したのである。 

♪ 雨を 片手でよけながら 二人一つの上着 かけだしていくー ♪ (バス通り by 中島みゆき) などと鼻歌まじりで駅に向かうご機嫌なサル的なヒト。

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・・・ なんか、滲みてる。 親指のあたりが冷たい。 それも両足 ・・・ なんか、ぐちょぐちょしてる ・・・ 「ガッポン、ガッポン、ガッポン」 ・・・ しくしく しくしく ・・・

ヲイ、ダン○ップ! どこが5センチ防水じゃい! 1センチすら防水しとらんぞ。 貧乏人をいじめて何が嬉しい? 

もう靴は買えない。 水が滲みるとはいえ新品の靴である。 捨てるわけにはいくまい。 これから何年間かは履くのである。 雨の日に私と会うことになる人たちには、あらかじめ、「足から濡れ雑巾の腐ったような臭いがして申し訳ありません」 とお詫び申し上げておきます。

最初から1万円も2万円もするような靴を買える人たち、つまりファッション性やブランド価値も込みで何足もの靴を買う人たちは、こういう貧乏トホホの経験はないのでしょうね。 靴屋のおぢさん、今履いている靴に穴が開いたので、安い靴ください。 普通のでいいんです。 普通ので。 雨の日に水が滲みたり、靴底に穴が開いたりしてさえいなければ ・・・」 と、切羽詰まってただ一足の靴を買う貧乏人に限って、雨水の滲みる靴をつかまされる。 それが資本主義。 そして、それが人生。(注 1)

(注 1) これって、Sen のリベラルパラドクスにも感覚が少し似ている。 合理的な社会は、哀しい社会なのだ。

同様の貧乏トホホ体験を私は散髪屋さんでもしているのだが、それはまた次回以降に語ることにしよう。

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桜舞う四月、新年度一発目のブログがこれで良いのか? とも思うが、なーにこれで良いのさ。 新しく環境が変わって辛い人も、落ち込むことはない。 職場や学校にいる、あなたのまわりのおっさん・おばさんを見てごらん。 あれくらいのテキトーさ加減でね、みんな十分立派な顔して生きていけるのよ。 全然大丈夫。

嫌な上司や同僚や部下にいぢめられているそこの君。 不愉快な連中に媚を売ったり、つるんだりする必要などない。 ほれ、すっくと立ち上がって、一人で花見にでも出かけられよ。 私はいつでもそんな君の味方だ。