小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

水羊羹の件

あ、これはまずいと思ったのである。 しかし、その時にはもう手遅れだったのである。 なぜなら、水羊羹 (ようかん) はすでに私の喉元をツルリンと通過してしまっていたから。

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教室の博士課程の社会人学生さん(仮にKさん(女性)としておく。)が夕刻7時、仕事が終わってから大学にやって来た。 いつものようにまとまった時間が取れる時 (社会人は夜間が多いですね) に来校して、勉強・研究の進捗状況報告し、さらに、ミクロ経済学計量経済学ゲーム理論統計学・倫理のお勉強をちゃんとしているかどうかの口頭試問を受けるためだ。

私 「どうっすか、最近お仕事は?」
Kさん(仮) 「大変なんですよ。 ミクロ (経済学) の教科書、全然読めてません」
私 「うーむ、それは困ったねぇ」

・・・ なんて会話を交わしていたら、ふと自分が無茶苦茶お腹が減っていることに気付いた。 立ち上がって食い物を物色する。 研究室の隅で、RCで受講生に提供したチロルチョコの残りを何個か発見。 とりあえず2個頂く。 さらに冷蔵庫を開けると、なんとそこには ・・・ 水羊羹が2缶鎮座しているではないか! ムッキー! これで血糖値も上がるぞ。

水羊羹2缶を早速ありがたく冷蔵庫から頂戴し、Kさん(仮)にもチロルチョコと水羊羹を一つずつ勧める。 「チロルチョコは歯の詰め物には致命的にヤバいよね」 とか 「イライラしてるときには甘いモノが一番ですね」 なんて軽口叩きながら。 パッカン、と水羊羹の缶の蓋を開けると、黒々としたみずみずしいプルンプルンがお出ましになる。 なんて肉感的で、瑞々しい光景。

私 「これこれ。 これですよ。 夏はさぁ、やっぱりこれだよねぇ」
Kさん(仮) 「まったくねぇ。 こりゃたまりませんわぁ」

などと二人でニコニコと語り合いながら、水羊羹を一口、二口 ・・・。

・・・
・・・
・・・ ん? この水羊羹、誰のものだ? ・・・(スーッと血の気の引く音)

自分でもなぜそんなことをしてしまったのかさっぱり分からないのだが、なんとサル的なヒトは、うちの教室の秘書さんたちが大事に冷蔵庫にしまっていた水羊羹に手を付けてしまっていたのである。 それも、いつの間にかKさん(仮)を共犯者にして。

最近、嫌なヤツ・コトばかりが多く、楽しいと思うことが全く無い。 心にポッカリと空いたそうした大きな穴がそういう行動をとらせてしまったのか。 血糖値が下がり過ぎて、内なる生命が悲鳴を挙げたのか。 あるいは単なる老人性のボケの進行の帰結か。

それ以降、Kさん(仮)にどのように指導を行ったのかはよく覚えていない。 翌朝、どうやって秘書さんたちを誤魔化すか、話をどう取り繕うかで頭が一杯で。 帰宅の途上も 「 ・・・ 。 また秘書さんたちに怒られるよう。 またコーヒーに雑巾汁入れられちゃうかもしれないよう ・・・」 と思うと気分が落ち込むばかりである。

しかし、である。 私だって49年間も生きてきた大人である。 データのねつ造、改ざん、不祥事が続出するこの業界で、無駄に何十年もメシを食ってきたわけではない。 GCP査察官なんていう肩書を背負っていたことさえあったのだ。 こういう時にどういう行動をとるべきかくらい知っている。 そう、証拠隠滅 ・・・ ぢゃないぞ、おい。 こんなご時世にそういうつまらん冗談はよせ。 そうではなくて、「正直に打ち明けて、謝罪すること」 だ。 

翌朝。 夜、うなされてよく眠れなかった。 いつもより1時間早く起きて出勤する。 赤門の近くに最近できた和菓子屋さんがあるから、そこで高級水羊羹セットを購入。 そう、何事もセーイである。 セーイってやつで誠意を具体的に表現しないといけないのは日本社会の常識である。 「セーイ見せんかい、セーイ!」 とそのスジの方々もよくおっしゃっている。 で、教室に着くなり、謝罪したのだが、秘書さんはきょとんとした顔をしながら曰く 「え? アレって別に誰が食べてもいい水羊羹だったんでしょ?」 ってな認識だった。 心の中は分からないけど(笑)。 なーんだ。 大事には至らずに、許してもらえたのでした。 めでたしめでたし。 もっとも、手ぶらじゃなくてちゃんとセーイも示したからな。 セーイ。 誠意大将軍 (古っ)。

アメリカでは、職場の冷蔵庫に食べ物や飲み物を入れておくと、勝手に誰かが食べてしまう伝統的風習(笑)が昔からあってよくネタにされているが、まさか自分がその犯人になってしまうとは思わなんだ。 私もまた米国型グローバリズムの犠牲者の一人と言えよう。(注 1)

(注 1) ちがう。

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忙しいながらも何冊かは本を読んでいるのだが、紹介するのはまた次の機会に。 小田さんのアルバム、今日発売だ。 「小田日和」

小田日和

小田日和

この66歳のじいさんが一般人やエラそうな連中に向かって悪態をつく姿が、実に楽しい (コンサートで流されるご当地ビデオね)。 小田さん、これからも頑張ってください。 ツアーのコンサート、抽選外れて行けなくて残念だけど。

・・・ というような日々。 ホントは例の集団的自衛権の件ではらわたが煮えくり返っているのだが、ここでは何も語るまい。