小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

メシが食えるヒト、食えないヒト

これまでの人生、様々な選挙を経験してきた。 時に投票者として、時に候補者として。 中学3年の時には生徒会役員 (会計) に無理矢理立候補させられた挙句、後輩の2年生の対立候補に負けてしまい、14歳にして早くもその人望の無さを露呈したサル的なヒト。

その後も、ありとあらゆる選挙で自らが少数派 (minority) であることを再確認してきたサル的なヒトだから、今回の選挙結果についても特別の感慨はない。 いつものとおり。 しかし、選挙の度に思うことがある。 それは 「選挙の結果は国民の宝物」 であるということ。 民主主義って嬉しい。  完全には機能してなくても、こんなもんでも十分に嬉しい。 だって、「この国では、少数派が、多数派に虐殺されずに、ちゃんと(投票に行ける程度の気力・体力・財力を維持して) 存在し、生命の危険を感じることなく胸を張って自らの価値を主張できる」 って事実を世間の皆さんと共有できるんだもの。(注 1) ここが北朝鮮イスラム国ではない幸せを噛みしめる。

(注 1) 本当に虐げられている少数派の方々からすると、私の現状認識は甘すぎですね。 すみません。 絶滅しかけている少数派はそもそも自ら声を発することができないのだ。 ニポンでも、現在、多数派に抹殺されかかっている人たちが確実にいるにちがいない。

しかし人生 50年も生きていると、この宝物をぶっ壊し、台無しにしようとする輩が跳梁跋扈してることにも気づく。 ほら、あいつらですよ。 選挙の度にデカい顔をして大騒ぎする連中。 他ならぬ政治家自身メディアである。

当選して、大勢の前で恥ずかしげもなく万歳三唱をしている政治家見ていると、それが自分の投票した候補者でもライバル候補者でも、正直 「情けないなぁ。 今からこいつ落選させることはできんのか」 と心底思う。 私はあんたの勝ち負けのために投票したのではない。 あんたの食い扶持と社会的地位を守るために投票したのでもない。 みんな自分の仕事を抱えて忙しいから、代わりに、この社会をなんとか守り次の世代につなげるべく、政 (まつりごと) の仕事をあんたに任せただけなのだ。 それなのに、何をアホ面晒して万歳三唱してるんだ、この人たち?

メディアも情けない。 「○○党大勝!」 だの「△△党歴史的大敗」 だのと、東スポ並の見出しをつけてお祭り騒ぎし、大喜び。 いや、普段の東スポの方がまだマシである。 ここまで下品な見出しをつけても許されるのは、NHKの紅白歌合戦の番宣と、近所の幼稚園の運動会での場内アナウンスくらいなものだろう。 「紅勝て、白勝て!」 ってレベル。

まったく、いい加減にしてほしい。 私は、○○党を勝たせたり、△△党を負けさせたりするために選挙に行ってるんじゃない。 選挙って、それが目的ではなく手段にすぎないからこそ、尊敬もしてないし、特段好きでもない政治家のおっさんの名前を投票用紙に一応は書いたりするのである。 そうでなければ、あんな見ず知らずの連中の名前を誰が好き好んで自筆で書くもんか。

私が選挙に行く目的は 「自分が意思表示をすること」、そして 「社会の人たちの意思表示の結果を見ること・知ること」 である。 「そうか、○割くらいは経済成長優先が好きなのね」 とか、「○%くらいのヒトが貧乏人対策を優先すべきと考えているのね」 とかいったことを肌身で知ることができるのが選挙の喜び。 だから宝物なのだ。 少数派ならではの悟りの境地かもしれぬが。 

毎度毎度、選挙をメシのタネにするのがメディアなのだが、連中って本当に失礼な奴らだと思う。 だって、投票結果に(政治家や政党に)「勝ち」「負け」のレッテルを貼るってのは、つまりは、投票した私やあなた (新聞や雑誌の顧客でもあるのだが) に、「勝ち」 「負け」 のレッテルを貼るのと同じだ。 おそろしく無礼な連中だと思いませんか。 そうやって、社会を分断し、憎しみをばら撒いて、一体どうしようというのだろう。 メディアの連中にしてみれば 「国民どうしが対立し、憎み合っている方がメシのタネが増えてハッピー」 なのだろうから何を言っても無駄かね。 武器商人と同類だ。

メディアのレベルは、これすなわち国民のレベル。 日本人の多くが、あたかも競馬場で馬券を買うように、「オレは手堅くアベシンゾウの複勝買って、見事に勝ち馬に乗ったぜ。 ざまーみろ」 だの、「私は大穴狙いのカイエダバンリ単勝買ったんだけど、全部すっちゃったよ。 ミドリノマキバオーにちょっと顔が似てるから期待したのに ・・」 だのといった感覚で選挙に行っているのかもしれぬ。 万歳三唱の政治家とは実はお似合いのパートナーなのかも。

さらに恐ろしいのは、今のニポンのトップが、勝ち負けにこだわり、すぐに頭に血が上るタイプの政治家に見えること。 これからのニポンが、憎しみで国民が分断され、いつも血の雨が降っているアメリカやウクライナイスラエルパキスタンのようにならなければよいのだが、と本気で心配なのである。

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相当に寒くなってきた先週末のこと。 渋谷の大きな本屋さんで経済学書を見ていたら、すぐ近くから独特の臭気がする。 ホームレスのおじさんの臭い。 隣にいるのは60歳くらいのおじさん。 経済学書の棚の前で難しい顔をして立っている。 よく見たら相当に薄汚れた黒のスエットの上下。

本好きなホームレスのおじさんか、と一瞬思ったのだが、そうではなかった。 ずっとそこに立っているだけなのだ。 ただ立っている。 目を閉じて、時々少し揺れながら、立ったまま寝ているのである。 私が店内にいる間、1時間ほど、ずっとその場で立ったまま、寝ていた。

店内の椅子に座ると、店員さんに怒られるのだろう。 暖かい書店内に長時間いるためには、立ったままでいるしかないのだろう。

こういう時に僕は泣きたくなる。 大声を上げて、泣きたくなる。