ちょっと前の金曜日、異業種から医薬品業界に参入している会社の方々 （といっても私よりも医薬品業界が長く、詳しい方々が多いのですが） の勉強会で講演。 無茶苦茶暑い日で、会場までたどり着いた時点でもうヘロヘロである。 よっしゃ、ここは気合を入れるか、と近くのコンビニで ファイトォ！一発！ を注入する。 エネルギーを注入しながら、できるビジネスマン風に日本経済の動向などを鋭くチェックしたのである。 講演前のいつもの儀式なのだ。 探すのは「講演のつかみ」。 講演を和やかに、かつ、軽やかに始めるには、つかみが肝心だ。
ガラケーを開いて i mode ニュースを眺める。 「台風接近」？ これはつまらんなぁ。 「中国株大暴落」？ ・・・ うーん、これもインパクトがいまいちだなぁ ・・ などと思っていたら、切れ者サラリーマンのサル的なヒトの目に衝撃的なニュースが飛び込んできた。
ん？ なっ、なにー！？ ガ━━(ﾟДﾟ;)━━ン!
・・・
・・・ ヒトとして、これをつかみにしてはいかんような気がする ・・・
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実はつい最近まで、３０年間くらい、サル的なヒトは、他人には言えない身体的秘密を抱えていたのである。 そんなこと、恥ずかしすぎて言えないよ、って感じの話だ。 正確に言うと、恥ずかしいというよりは、諦めと恐れと絶望とが入り混じった感情。
それは何かというと、オシッコの臭い である。 お食事中の方、すまんね。
オシッコが時々臭うのである。 臭うのはだいたい午前中、出勤後に最初にトイレに行った時である。 男性用の便器で用を足していると、自分の尿がプーンと臭うのだ。 ちょっと有機溶媒のような、ゴムを焦がしたような。 うっ、と思いつつも、どうにもならないよなぁとため息をつく。 午後になっても臭っているときもある。
昔から時々検査で蛋白尿が出ることがあったので、「これが尿タンパクの臭いか。 腎臓が悪いのだなぁ、自分。 疲れが溜まり過ぎているからなぁ」 とまずは腎機能疾患を疑った。 しかし、どこか変なのである。 尿が臭うタイミングと、蛋白尿が指摘されるタイミングがまったく一致しないのだ。 私だって科学者の端くれ （ホントに端くれだけど）、因果関係が成立していないことくらいわかる。 尿タンパクは臭いの原因ではないぞ。
糖尿病が進行すると尿にケトン体が出てくることは、さすがに薬学部の教員としては知っている。 でも自分、糖尿病ではないし。
次に思い浮かんだ原因物質はコーヒー。 だって、あんなに不味くて、真っ黒で、ニガニガしていて、焦げたような物質を山ほど含んでいるのだから、悪い物質がたくさん尿に出てきて当然ぢゃあないか。 サル的なヒトは 「コーヒーが健康に良い影響を与える」 って疫学研究の結果を基本的に信じていないのだ （あれって、どう考えても confounder あるいは下流の変数でしょ）。 そう思っているにも関わらず、毎日コーヒーを２杯は飲んでいる小心者のサル的なヒト （笑）。 バカかもしれん。
で、時々感じるその強烈な尿の臭いって、コーヒーの焦げ臭さと通じているような気がずっとしていたのだ。 だから、家人にも秘書さんにも、「どうも僕ってコーヒーに弱いんだよね。 体調悪いときにコーヒー飲むとオシッコが臭くなるんだよね」 なんて過去十数年間言い続けていた。 でも心の中では合点が言ってなかったのである。 だって臭いのは、たまに、なのよ。 毎日ではない。
平成２７年６月１９日。 その日も出勤後の学校での初尿 （そんな言葉あるのか？） が臭かった。 「ふー、体調悪いんかなぁ、自分」 などとため息をつきながら、デスクに戻って、ネットの科学コラムを読んでいたら、そこには衝撃の記事が。
あなたはどっち？アスパラガスでオシッコが臭う人・臭わない人あなたはどっち？アスパラガスでオシッコが臭う人・臭わない人 - NAVER まとめ
こ、これだったんだ ・・・。 だって、今朝、アスパラガス食べたもん、自分。 今日のお弁当にもしっかり鎮座してるもん、アスパラガス様。 ３０年来の疑問が氷解した瞬間であった。
そうなのである。 アスパラガスが原因だったらしいのよ。 その筋では結構有名な話らしいのだが、私も家人もまったく知らなかった。 正確に言うと （記事を読んでください）、すべての人がその臭いを感じるわけではなくて、「尿中に排泄されるアスパラガスの代謝物の臭いを検出する嗅覚レセプターの持ち主だけ」 がその代謝物を臭いと感じるらしい。 そうした能力 （遺伝子） の持ち主は５人に１人とも。 ふふふ、民よ、私は選ばれし鼻の持ち主だったってわけよ ・・・ 全然嬉しくないけどな。
その後、学生や秘書さんに 「アスパラ食べた後、オシッコが臭くなる？」 と尋ねたところ、だいたい１０人に１人の割合で 「臭くなります！」 と答えてくれた。 驚いたことに家人も同じ鼻を持っていたことが判明。 「尿タンパクのせいだとずっと思っていた」 とのこと。 薬学部教員・薬剤師の科学リテラシーのレベル、ちょっとヤバいかもしれん。
というわけだが、読者の皆さんはアスパラガスを食べた後のオシッコの臭い、感じられるヒトだろうか？ それとも感じたことのないヒトだろうか？ 周囲のヒトに聞いてみると面白いかも。 自分でよく分からない人は実験してみよう。 食べて１５分もすれば、尿に出てくるらしいよ。
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今年も戦後がやってくる。 今年は、なんだか情けなくて、泣きたくなるような、戦後だ。 日本人、愚かなり。 愚かなのはあの一群の人たちだけだと信じたいが、どうもそうではないらしい。
毎年この時期恒例の読書を今週から始める。 まずは 「レイテ戦記」 （大岡昇平） から。 よその国に出かけてまで 「日本の防衛のための良い戦争」 をしてきた僕らのお祖父さんたちの経験した地獄を復習。 長くて読むのがとても辛いんだよね、この作品。 でも毎年必ず読む。 読まないと、ああいう人たちのようになってしまうから。
