小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

素晴らしい初夢

皆さん、のんびり正月迎えられましたか? 

元日から仕事のメール読んだりしてる人たちはご愁傷さまです。 でも、好きでやってるんだから仕方ない。 嬉しいんだよね、仕事のメールを読めるのが。 日本社会では、そういう人たちから唯一の生きがいである 「仕事」 を強制的に奪う制度 (定年制) が相変わらず頑張っている。 麻薬のように耽溺性があって魅惑的な 「仕事」 を自分からは若い者に決して譲ろうとしないオヤジたちも多いのがニポン社会だから、これもまた仕方ない。 が、将来5千万人とか6千万人とか人口が減ってしまう今後の日本で、この制度は絶対に破綻するだろうなと思う。

今朝のニュースによると、昨年も日本では30万人ほど人間の数が減ったらしい。 あいやー、ノーベル賞だ、ラグビーだとバカ騒ぎしていた間に 地方都市が5、6個消滅してる ぞ(笑)。 治験の製造工場としてこんな国が有望なわけはないし、今後、6千万人ほど人口が減る国に元気に投資する人たちが長期的にいるわけがない。

誰もがそう思っているだろうが、30年後に生き延びている日本資本の大きな製薬企業のほとんどはアメリカに事実上の本社を置いているに違いない。(注 1) 国内には立派な社長室と事務所と営業所だけで十分 (外資の日本支社も同じ)。 そして、たくさんのニポン人のおにいちゃん・おねいさんがDCやニュージャージーあたりでフツーに働いていると私は予想する。 マンハッタンの一風堂ファイザーの人たちと席を譲りあったりしてね。 あるいは、上海か、ニューデリーあたりかもしれん。 優秀な少数の社員が駐在派遣されるのではなく、フツーの社員がフツーに海外勤務。 できの悪い社員もアメリカ勤務。 猫も杓子も海外へ。 これこそがグローバル化である。

(注 1) 「もうすでに海外に本社を置いているようなものですよ」 という声は、私にではなく、日本のメディアや厚生労働大臣に届けてね。 私はもう知ってるから。

将来のこの世代の連中って、海外データを丸ごと受け容れることが 「グローバル化」 だと洗脳されてきた我々世代とは違う。 「オールジャパンで輸出増を目指せ」だの、「日本がんばれ」 「ニッポン復活」 だのと今国内で大騒ぎしている連中も言うまでもなく旧世代。 旧世代って、自らの足が日本の地面にくっついていて、どうやっても離れない世代である。

そういう30年後が来ると、霞が関虎ノ門日本橋にいる業界通 (もどき) の価値は激減すると思う。 霞が関日本橋にいる人々の権力は、情報やノウハウを専有し、隠し持っていることから生じる (大抵は二番煎じだけど)。 霞が関日本橋で威張っている人々の大学の同期がたくさんフツーにDCにいて、「ああ、そのFDAの方針ならとっくに知ってるよ。 日本の人たちって情報遅いね」 と東京在住組を憐れむといった世界になったら、力関係は確実に変わるよね。 また、今はまだ若干の希少性がある 「FDAで働く (働いたことのある) 日本人」 が新世代人の中からたくさん出てきて、転職後に日本企業で働くようになれば、上意下達をもって貴しとなす現在の日本のれぎゅらとりーさいえんすの異様な構図は成り立たなくなる。

○○製薬に入ることが、すなわちアメリカのワシントンDC界隈 (あるいは上海、ニューデリー) で働くことを意味するとなると、優秀な大学生の就職先の人気も相当に変わるだろうなぁ。 公務員の人気がますます低下するのは当然か。

思えば、私の世代は、アメリカ様の掌の上で暴れていればグローバル猿のような顔ができた、古き良き平和な時代を生きたのである。 学者は海外留学が出世の条件。 企業社員や公務員も米国や欧州に駐在すれば、それで出世コースに乗れて、鼻高々。 いずれも勤務先が日本国内限定で、事実上鎖国下にあったからこそ成り立つ人事慣行である。 人間が6千万人減ることでお尻に火が点いて、そうした途上国型の身分制度にも似た慣行がやっとぶっ壊れて、フツーの国、すなわち国外で実力勝負せざるを得ない人たちだらけの国になるのだ。 ほれ、いつも 「ニポンの国際競争力の向上を目指そう!」 といったスローガンを掲げる人たちの理想の国 (の必要条件) がやっと実現するぞ、人間が6千万人減るおかげでな (笑)。

おめでとう。 素晴らしき新ニポン国の出現だ。 (注 2)

(注 2) この初夢とはまったく違うコースをたどる可能性もある。 人が減った国内でさらに内弁慶になり、真正ガラパゴス化するニポンの業界人。 希少生物扱いされて、それはそれで生き延びられるかも。 

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晦日の夕刻、渋谷のデパ地下で買い物をした。 すさまじい人混みだったが、年の瀬だし、こんなものかと最初は思っていたのである。 しかし周囲をよく見渡すと、どこか雰囲気が変。 外人さんばっかり(笑)。 あたりを飛び交うのは、中国語、韓国語、ベトナム語タイ語 ・・・。 若い家族連れが多い。 で、そうした外人さんが寿司屋のコーナーに山積みしてある2000円くらいの高い寿司セットを、まとめてがさっと買っていくのである。 ホテルで食べる今夜の夕飯なのだろうか。 外人さんたち、レジの列をうまく作ってくれず、若い日本人店員のおねえちゃんが大声で 「ヒア! ヒア! ライン!」 などと英語にならない英語を叫びながら、半べそをかいている。 商売繁盛に興奮したレジ係のおばさんのほっぺたは紅潮し、汗ばむ。

人口が6千万人減る国の初老の貧乏サラリーマン夫婦 (サル的なヒトと家人)は、隙間からなんとか手を伸ばして確保できた、一番安い900円の寿司セット (我が家の基準からすると相当に高級な部類である) を手に、そそくさとデパ地下を後にする。 

ここはすでに、私たちが心穏やかに住める世界ではなさそうだ。 とても一言では説明しきれない現実。 抗うことができない時代の流れ。 でもさ、バブルの頃に同じ疎外感を味わった貧乏人 (私) としては別に驚くこともない、むしろ懐かしい光景だ。

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今年の目標。

世界のつくりを、もっともっと学ぶこと。 世界の人たちの行き着く先を考えること。

ニポン人顧客を一色に塗りつぶして、個性を認めようともしない業界の人たちが唱える 「オールジャパン」 の虚しさと危険をきちんと世界の歴史と構図から学問的に示すこと。 

「日本の新薬研究開発の発展」 だの 「ニポンの製薬産業の生き残り」 だのと、何かとニポンの優先・優越を唱えたがるニポン優越主義者とは今年も仲良くはなれそうもない。 だって、そういう偏狭な理念に支えられた歪んだ戦略こそがニポンのこれからの地獄をますます悪い地獄へと導くのではないか、という過去の経験に根差した予感があるから。 それよりも何よりも、 「くに(故郷)」 をそんな自分勝手な目的や生臭い商売の道具扱いする奴らが、私は正直いって嫌いなのである。

どの 「くに」 も、それが少しでもマシな地獄であれば、それで十分。 だって、この世が天国だったことなんて人類数千年の歴史上一度もないもんね ・・・ と思いながら、初出勤したオフィスで机まわりの片づけをしているのである。 

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ルポ 老人地獄 (文春新書)

ルポ 老人地獄 (文春新書)

生ぬるくない方の地獄がこちら。 先日、医療専門紙に 「地域医療で高齢化社会を乗り越える!」 という見出しが躍っていて大笑い。 僕らはまだ地獄の入口を恐々覗いているだけのような気がするのだが、ニポンの専門家の戦略ではその地獄は乗り越えられるらしい。 さすがは太平洋戦争に突入した国の専門家、見事というほかはない。