小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

サル的なヒト、変質者扱いされるの巻

私の部屋は、夏場は 40度近く、冬場はマイナス 5度くらいに達する住環境的には厳しいところである。 哀れに思ったか、家人が電気ひざ掛けなるものを買ってくれた。 とても暖かい。 畳の上に敷いて、その上に座ってもよいのだ。 昨日、そうやって畳に敷いた電気ひざ掛けの上にゴロリと横になり、上に薄い毛布を掛けてうたた寝をしたら、身体の下側が焼けるように熱いのに、身体の上側は氷点下なみに凍えるという、どうにも地獄のような状況に陥り、悪夢にうなされて目が覚めた。

この状況、どこかで経験したような気がする。 どこだっけ? ・・・ としばし考えてたら、思い出した。 宇宙空間(笑)。 大気のない宇宙空間を漂う人工衛星、太陽光の当たる面はプラス数百度、一方、日陰はマイナス数百度になってしまうこともあるのだ。 ああ、なんと厳しい宇宙環境。 この厳しい環境の体験があるということは、オレの前世は人工衛星だったのかもしれん。

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絶賛実施中の無料出張講義が夕方6時頃に終わり、大学に戻る気力がなかったため、自宅に直帰することにしたのである。 ターミナル駅から始発電車に乗る。 すでにホームには各駅停車の始発電車が待っていた。

夕方の帰宅ラッシュの時間帯なので、始発駅とはいえ車内は結構混んでいる。 少しでもすいている車両を探して車内に乗り込み、やれやれと吊革につかまったら ・・・ なんと、目の前に家人が座っていた。 まったくの偶然である。

これが30年前だったら、「おおっ、やはり二人が出会うのは運命なのだ!」 などと確率論を無視した推論を展開し、赤い糸の伝説をしたり顔で語り始めるのであろう。 こっぱずかしい。 しかし、こっちはもう人生に相当に疲れた初老のおっさんである。 こんなもん、偶然だ。 驚きはない。

しかし、ちょっと困ったことが起きた。 目の前にダンナが立ったにもかかわらず、家人はそれにまったく気づいてくれないのだ。 ずっと足元の方をぼんやり見たまま、ぼーっとしている。 目の前のダンナを認識していない。 確かにスーツ姿のおっさんの足元だけで身内を認識するのは難しいのかもしれん。 が、ちょっとイラッとする。 あんた、30年の付き合いなんだから、気付けよ。 目の前に立っているんだから、気配とか、雰囲気とか、臭いとかで、わかるだろーが、通常。

混んではいるが、始発駅なので車内はシーンと静まりかえっている。 乗客はみんなスマホをのぞきこんでいる。 何か声を出せば、皆の注目を集める状況である。 そもそもこういう時にはなんて声をかければいいのだ? 「おーい、オレだよ」 か? なんかバカみたいだぞ。 「おっす。 オラ悟空!」? ダメだ。 51歳のセリフではない。

困ったサル的なヒト。 さて、どうするか ・・・ そうだ、いいことを思いついた。 人類にはアレがあるじゃないか、アレ。 昔のテレビ番組で人気を博した、アレ。 ジェスチャー(笑)。 動きで 「目の前にダンナがいること」 を伝えればいいぢゃあないか。

おもむろに膝をカクカクと動かす。 よく見えないといけないから、少し座席側に近づいて、カクカクと。 EXILE TRIBE なみにファンキーなリズムに乗って、カクカク、カクカク を繰り返す ・・・ だ、ダメだ。 顔を上げない。 まだ気づいてくれない。 動きが甘いのかもと思い、軽くステップを踏む。 ボックスステップからランニングマン(笑)。 これでどうだっ? ・・・ こ、これでもダメだ。 家人は下を向いたまま微動だにしない。 どうやっても顔を上げない。

おい、あんた、たいがいにせーよ。 早く気づかんかい! 静寂の電車の中でこれ以上激しいダンスが許されるわけなかろうが。

家人の両隣に座っているおばさん二人は、僕の異常な動きにとっくに気づいて、不審な目でチラチラ僕の顔を見上げている。 だ、ダメだ。 これ以上のジェスチャーは、危険だ。 いろんな意味で。

もうあかん。 観念して、小さな声で 「おーい」 と声をかけたら、そこでやっと顔を上げて、びっくりしながら私を認識してくれた。 ふぅ。

後から聞いたら、サラリーマンオヤジが真正面、それも近くに立ってきたので、最初からいやだなぁと警戒していたそうである。 そしたら、あろうことかそのオヤジが足をカクカク動かし始めたので、「あぁ、これはもう 本格的な変質者 だ」 と思ったそうである。 で、「変質者とは絶対に目を合わせてはいけない。 目を合わせると何されるかわからない」 と無視を決め込む。 そのうち、変質者の動きがさらに激しくなってしまい、「もう! どうしてこんな気持ちの悪いおっさんに付きまとわれなきゃいけないのよ!」 と頭にきていたそうな。

・・・ 30年来のつきあいなんてその程度のもんである。 警察に通報されなかっただけマシ、と考えるべきなのであろう。

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そんなこんなで、来世は植物になりたいと本気で思っているサル的なヒトなのだが、皆さんはどうですか。

植物は〈知性〉をもっている 20の感覚で思考する生命システム

植物は〈知性〉をもっている 20の感覚で思考する生命システム

植物って、人間とは生きる時間軸の異なる知的な生命体である。 彼らの知性は素晴らしいというしかない。 発達した脳がなければ 「考える」 ことはできないなんていうのは、人間という頭の悪い生物だけの思い込みである。 因果・情報の流れは、脳なんか無くたって、ちゃんと伝わるんだしな。 この本、とても面白い。 おすすめです。