小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

昼寝してるんだか、絶望してるんだか

唐突で申し訳ないが、今どこよりもいい仕事をしてるテレビ局は、岩合さんの 「世界ネコ歩き」 を何度も何度も再放送してくれるNHKである。 これね → 

www4.nhk.or.jp

在宅勤務だと、昼飯を食う時に見るテレビに困るのである。 訳の分からんタレントが額に青筋立てて 「国民全員がもっと危機感を持つべきですっ! 公園でヘラヘラ話をしてる場合じゃないんですっ!」 とか喚(わめ)いているワイドショーなんぞを見ていると確実にメシがまずくなる。 ほれ、そこで役に立つのが、録りためている岩合さんのニャンコものですよ。 NHKには受信料払ってるからな、自分。

世界中の素晴らしい景色、住まい、生活、心優しい人々を背景に、どーんと主役をはるニャンコたち。 見ていると心が洗われる。

この番組に起承転結はない。 ニャンコが 「ニャーン」 と鳴いたり、寝たり、しっぽをクネクネさせたり、木に登ったり、ネコパンチをしたりするシーンを岩合さんが撮って、それを淡々と流すだけなのである。 それだけ。 脚色も擬人化もストーリーも何もない。 ネコに興味がない人たちから見たら、まったく意味不明な番組だろうな。 でも、このスタイルこそがヌコの本質の正しいとらえ方であり、素晴らしさの表現なのである。 ヌコ好きにはそれがよく分かっている。

ニャンコを見て若干興奮しながら昼飯を食べ、満足しきったサル的なヒト。 ふー、お腹いぱーいだ。 コタツにごろんと横になって、ぼーっとしていると、足が温かくなってきて、だんだん瞼が重くなる。 ま、いいか。 ちょっと昼寝しちゃおう。

・・・ という感じで、在宅勤務ではなかなか仕事が進まないのだが、いいのだ、これで。

 

「キーーーッ! この国難になんてこと! 医師や看護師が命がけで働いているというのに、ニャンコ見ながら昼寝なんて不謹慎です! 自粛すべきです! こんなサル、強制徴用してPCR検査施設で作業させるべきですっ!」 とか言い出す自粛警察が今のニポンにはたくさんいそうだな。 はいはい、もし手伝わせてもらえるのなら、いつでもPCR検査施設で働きますので遠慮なく徴用してください。 ただしオレを徴用したら、検査を勝手にあちこちの民間に外注して検査数を100倍くらい増やしてやるから、お上は覚悟しとけよ。

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しつこく今回も問う。

で、皆さん、コロナのドタバタを数か月見てきましたね? で、はっきり理解しましたね? ニポン政府(国会、行政機関) のやってることって、これでしょ?

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「実はなーんも決めずに儀式 (おままごと) やってるだけ」 が分かる実例が次から次に魔法の泉のようにあふれ出てきて楽しい。 直近の例は 「出口戦略」 をめぐるグダグダですね。 何を達成すれば警戒を解除するのかについて、実はなーんも考えてないし、決めてもいない。 そのときの空気 (実力行使しそうな怖い人が激怒してるか、とか(笑))で、なんとなく決めちゃえばいいと最初から思ってるのね、お上って (注 2)。 これって 「ベネフィットがリスクを上回る感じだしぃ、臨床的に有用だと思うのでぇ、この薬、承認しまーす」 という神事 (儀典とスケジュールだけは厳格) とそっくりでしょ?

注 2) 2020.5.6追記

安倍総理大臣は5月6日夜、インターネット番組に出演し、今月半ばをめどに専門家から意見を聴き、宣言を解除するか判断する意向を改めて示したうえで、判断にあたっての基準を、専門家に依頼して作成する考えを明らかにしました。(NHK News)

だって。 あのグダグダの専門家連中とお上基準をこれから考えて、これから決めるんだって。 基準がないのに、宣言を延長する決定はできたのはなぜだろう? もうはっきり書こう。 こいつら頭がおかしい 

しつこい? こっちは全然懲りてないぞ。 20年間ずーっとこの構図の本質を問い続けてきたのに、おまいらみんな笑い話のネタにしかしてこなかったのだからな。 このスライド、この先何度でも載せてやるぞ。 地獄の門が開くまで載せ続けてやる。 もう開きかけている気もするが。 ふふふ、ふふふ、・・・

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薬効評価・承認審査に携わるプロなら、国のコロナ対策に理屈もなんもあったもんじゃないことはとっくに理解してますよね。 新薬の承認申請資料に、今政府がコロナ施策に使っている類の訳の分からんデータや意味不明の用語が使われていたら、PMDA の審査官に瞬殺されるはずである。

たとえば毎日夕方に公表されるいわゆる 「(新規) 感染者数」。 「今日は 68人でしたぁ」 と日々ニュースキャスターが大騒ぎするやつね。 申請資料でそんな表現を企業が使っていたら、私が審査官だったら即座に 「制度に基づく感染者届出数」 と書き直させ、「注: 届出数は国内感染者数を直接に表すものではない」 という注釈をつけさせる。 あんな意味不明な数字を使って 「このデータから日本では感染が増えている (あるいは減っている) ことがうかがえます」 などと企業が主張したら、

「あんたら、バカか?」

と審査官に資料を丸ごと突き返されるよな。 そのレベルの無意味さであることは、毎日あの数字に一喜一憂している皆さん自身が実は心の中でよく理解しているはず。

あの 「(新規) 感染者数」 で国内の感染状況をまともに推定できるわけがない。 なのに、あれしかデータが落ちてないから、みんな仕方なく使っちゃう。 小知恵がある人が fancy なグラフに作り直してみたりして。 最初は 「こんな歪んだデータ、使えるわけないだろうが!」 と正常に憤っていた人も、そのうちだんだん慣れてきちゃって、なんだかとても大切な愛おしいデータに思えてくるらしい。 すっごい不細工な彼・彼女の顔が、付き合っているうちにだんだん魅力的に見えてくるようなもんだ。

正気に戻って思い出そう。 あれってもともと、おままごと用途の クソデータ であることを(注 3)。 というか、最初から未知のパラメタを探る科学的研究・調査の結果ではないのだから、転用は無理なのよ。 母集団が定義できないし (だから企業による今の新薬開発と同程度にナンセンス(笑))、むろんサンプリングなんて誰もやっていない。 データ収集プロセスを隠蔽しているから何が制約条件になっているのかがまったく分からない (例: PCR 検査の実施キャパ (関係者の体力や休日取得を含む) でデータ数の上限が決まってるのな)。 統計学的に言うと Data Generating Process (DGP) をまともにモデル化できないってこと。 だから結果の因果関係も、脱落変数や内生性を考慮・モデル化できるごく一部の (現場の) 当事者以外にはまったく解釈が不可能。 そんなややこしいデータ、まっとうな目的に使えるわけがない。 

(注 3) しかしこのドタバタが落ち着いたら、社会が 「新規感染者数」 を収集している様、公表している様、皆がそれを見て右往左往している様は、政府の機能不全が引き起こした社会現象として貴重な研究対象になるだろうな。 社会学者、歴史学者行政学者にとってはよだれがでるほど興味深い現象である。

注 3 よりももう少し正確に言えば、今の状況って超不謹慎な社会実験を実施しているに等しい。 「一見科学的に思えるけど実は意味不明なデータをお上が国民に垂れ流したときに、国民がどう反応するか」 という介入研究。 こんな非人道的・非倫理的な研究を承認する倫理審査委員会があるわけないけどな。

むろんそんなことお役人だって100%分かってる。 でも、「専門家会議」 の専門家たちや官邸に向かって 「あんたら、バカか?」 とは誰も言わないのが、おままごとの恐ろしいところである。 

ようやく、魂がお上から少し独立している大学・病院から、市中の抗体・PCR検査陽性率の調査結果が出始めましたね。 磯野家のタマ (ニャンコ) ですら予想したとおり、日本には何十万人(いや、もっと多いか) もの感染者がいた (いる) らしい。 この何十万人(or 何百万人)もの「日本の総感染者数」 の挙動・推移が、お上が今出している累積二万人ほどの「(新規)感染者数」 のそれと単純に対応するわけがないのは、中学生だって分かる。 日本の感染症対策は、当然、前者(「日本の総感染者数」) を考慮すべきことも、サザエさん家のタラちゃんだって分かる。

最も肝心なところを空白にしたままおままごとやってきた連中がこれから繰り広げるであろう言い訳を楽しみに見守ろう。 言い訳は、いつ収束するかとは無関係に、次々に必要になる。 「患者は4日間は待機せよ」 をめぐる異常な言い訳も最近あったな。 おままごとの醍醐味を知る格好のチャンスでもある。

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最近は、お薬についても 「○○ は効く・効かない」 だの 「○○ が特例承認されないのはけしからん」 だのと、言いたい放題の言説がメディアを日々賑わせている。 これらの言説の多くは、それを発している当の本人たちすら意味を理解していないレベルのものなので、ここでまともに取り上げることはしません。 ごめんね。 気が向いたら次回以降に。

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というわけで、今日はここまで。 ニャンコ番組を見て昼寝をする毎日だと読書がなかなか進まないのだが、人気作家の新刊は紹介しておこう。 皆さん読んだ? 

佐和子さんが亡くなる前のお父様から最後にかけられた言葉は 「まずい」 だそうだ。  大笑いし、涙する。 達意の文とはこういうもの。 おすすめです。

アガワ家の危ない食卓

アガワ家の危ない食卓

 

 

昔読んだ 「グレート・ギャツビー The Great Gatsby」 をふと思い出してあらためて読んでいる。 村上春樹さんの訳なので、どこか 「風の歌を聴け」 のような文章のリズムがあって楽しい。 

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)