小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

他人の名前を名乗らない

し、知らんかった。

一番安いヤツが 490円もするなんて・・・

 

本郷三丁目駅のそばに新しくバーガーキングができたことは先日お知らせしたとおり。 本日めでたく開店となったのである。 朝の出勤途中、お店の前には行列ができておる。 「おお、これはよかった」 とワクワクしながら外の看板に載ってるメニューを覗いてみた。

 

ガ━━(゚Д゚;)━━ン! 

 

・・・ な、なんじゃぁ、こりゃ?

なんか違う。 想像してた価格帯とまったく違うぞ。 バーガーの値段が全部500円とか600円とかしてる。 一番安い単品のバーガーが 490円。 セットだと軒並み800円程度かそれ以上。 こ、こんな高級店だったのか、バーガーキングって ・・・

どう考えても無理である。 こんな高いバーガー、買えるわけがない。 毎日のランチを生協食堂でワンコインにおさめなければならない庶民の手の届く価格ではない。 店頭であんちゃんがメニューのビラを配ってるが、オレとは無縁の世界であることが分かった以上、もはや受け取る気力もない。

ここ数週間、調子に乗って秘書のおねいさんたちに 「たまには一緒にバーガーキングで楽しくランチしちゃいましょうかね、ふふふ」 などと軽口たたいてた自分が恥ずかしい。 大学のオフィスへ向かう道すがら、食料品の物価上昇についていけない情けなさと理不尽な格差社会への怒りとで涙がじんわりと滲んでしまう。 泣くんじゃない、自分。 アンタはもう五十代後半のいい年をしたオッサンなのだから。 お腹が空いたら、ファミマの5個入りで110円のミニアンパンを毎日一個ずつ食えばいいのだから。

さよなら、オレの新年のささやかな夢。

 

(翌日追記)

バーガーキングへの未練断ち切りがたく、翌朝もう一度看板のメニューを隅から隅まで眺めてみて分かったのだが、メニューの下の方に行くに従って安いバーガーがあることはあるのね。 安いセットメニューもある。 でも「メニューの一番上に華々しく載ってる人気のバーガーが高すぎて買えない人たちは、メニューの下の方に載ってるこっちの地味なやつを買ってね。 あ、サイズが小さかったり、野菜が入ってなかったり、チキンだったり、フィッシュだったりするけど、値段相応なんだから仕方ないよね」 って感じ。貧乏人は目線がメニューの上から下に降りていって、下の方のパチモノで折り合いをつけさせられる感じ。 市場経済の効率を達成するためには不可避な屈辱感ではある(笑)。 ちなみに安いセットメニューも安い地味なバーガーとの組み合わせである。

バーガーキングの中のヒトさ、アメリカ様の会社だろうからアメリカ様の感覚で広告宣伝してるのだろうが、ややこしいニポンの消費者 (没落国の住民なのに過去の経済戦勝国のイメージが抜けない人たち) を相手にしてるのだから、メニューの商品の並べ方をさらに工夫した方がよいかも。 でも結局のところ、財布のひもが固い人たち相手の商売はどうやってみても難しいだろうなと同情する。

なんだかんだ言っても商店街から撤退されると寂しいのだ。 本郷って大学街のはずなのに、あのマクドナルドが撤退してしまうという恐ろしい不毛の地なのよ。 がんばってうまく商売してください。 応援してます ・・・ 買えないけど。

 

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普段手を出さないベストセラー小説でも読んでみるかと思い、たまたま手に取ったこの本、めちゃくちゃ面白かったです。 もう読んだという方もたくさんおられよう。

 

 

この本にはいろんな神様が出てくるのだけど(ネタばれになるから具体的には書かないけど)、ストーリーのメインに登場する神様が、ほれ、あれですよ、「お客様は神様です」のお客様たちである。 主人公が働く食品会社に苦情電話をかけてくる様々な消費者たち。 いわゆるクレイマーを含む。

主人公が働く食品会社の主力商品のインスタントラーメンって品質が相当にテキトーなので、まともな苦情(たとえば「麺が臭い」とか)がたくさん寄せられるのだが、中にはクレーマーからの無茶苦茶で理不尽ないちゃもんもある。 それらの苦情にどう対応するのかがお話の主軸である。

で、そこで起きるドタバタをゲラゲラ笑いながら読んでいるうちに、ふと、「ん? この主人公ってお役所で働いていた時の自分じゃないか!」 と気付いたのである。 気付くのが遅すぎ(笑)。

霞ヶ関のお役所にはまともな苦情も無茶苦茶なクレームも山ほど来る。 数十年前は、国民からのそうした苦情電話が目の前の自分の電話にじゃんじゃん直接にかかってきた。 今は神様からの声をうまく処理活用する仕組みが多少は進化してるのだろうと思うのだが、誰か教えてください。

クレームが寄せられるのは、お役所が不祥事・事件を引き起こしたときだけでない。 一年365日ずーっと苦情電話はかかってくるのだ。 ほとんど匿名。 で、かかってきた電話を取るのは当然ながら私たちのような下っ端である。

電話の主はなぜかたいてい激怒していて、なぜかたいてい怒鳴っている。 声がでかいから、受話器を下に置いていてもそこから怒鳴り声が聞こえてくる。

 

サル的なヒト 「もしもし、○○局○○係でございます。どのようなご用件でしょうか?」

神様「ご用件でしょうかじゃなかろうが! ○○省って国民殺す気か?」

サル 「い、いえ、そんな気はありません。 このたびの不祥事では国民の皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません」

神様 「おい、あんたの名前は?」

サル 「はぁ、小野といいますが」

神様 「(パラパラと本をめくる音がして) オノさんか。 オノシュンスケさんやな。 あんたの住所は○○市○○ 1-2-3 か。 ええか、よく聴けよ。 あんたの返事次第ではあんたの家に火つけに行くからな」

サル 「いや、それは困ります。 私にだって家族がいるんです」

神様 「おまえらのような奴らにも女房と子供がおるんか! この野郎!」

サル 「いや、そのようなことで怒られましても ・・・」

(以下、一時間ほど怒鳴り声が続く)

・・・・

などという電話のやりとりを、一日に何度もしていたのである。 今の若いもんには信じられないかもしれんが、当時は、下っ端の職員までほぼ全員の氏名、役職、住所が載った各省庁の職員録が市販されていた。 なぜ住所が載ってるのかは分かりますね。 時は昭和末期から平成初期、すなわち爛(ただ)れたお中元・お歳暮文化の真っただ中である。

先方が電話をガシャーンと切ってくれてホッとした後、周囲を見渡すと、課員たちの憐憫の情のこもった眼差しが私の方を向いている。 みんな、仕事をしながら、息をひそめて成り行きを見守っているのである。 とはいえ、誰も自ら進んで電話を代わってくれはしない。 回数・程度の差こそあれ、若手・中堅は誰もがその手の電話対応をしてるのだし、大変な思いをしているのだから。

当時からお客さん思いの心優しい(笑)公僕であったサル的なヒトではあったが、さすがにこういう電話ばかりだと身にこたえたのである。 このままでは確実に精神を病んでしまう。 そこで自分、工夫しましたね。

 

激怒して我が家に火を付けかねない勢いの神様に 「おい、あんたの名前は?」 と尋ねられたら、役所のおエライさんの名前をテキトーに答えることにしたのである。

 

この本(「神様からひと言」)の主人公たちは、ヤクザ屋さんへの対応として、同じオフィスにいる無責任な上司の名前を勝手に名乗っていたが、心優しい私はそんな身近な名前は使わない。 なんかあったら気の毒だもの。 代わりにもっとずーっとエライ方々の名前を使わせてもらった。 新聞でしょっちゅう出てくるような人たち。 実際、その人たちは責任者なんだし。

再度激怒して役所に電話が来たとしても、おエライさんなんだから秘書やら、電話番やら、あるいは多数の腰巾着たちの誰かが対応してくれるだろう。 万一、運悪くもう一回私のところに電話が転送されてきたら、その時には別のオエライさんの名前を使って逃げるまでのことである。

 

電話対応で 「私の名前ですか? 私は(おエライさん名)です」 と初めて堂々と答えたときの周囲の同僚のギョッとした顔はちょっと面白かったぞ。 でもそのイレギュラーな対応をたしなめる人は誰もいなかったのである。 みんなそのくらいクレイマー対応の辛さを知っていたってこと。 

 

何十年も前の話をしてすまんね。 この話にオチはない。 十数年前、お役所のOBが意味不明の逆恨みで刺殺されるというおぞましい事件があったことはまだ記憶に新しい。 世の中に沈殿している深い恨み・辛み・妬みの感情は、最近、ますますひどい形で噴出してる。 日本だけでなく世界中どこも似たようなものである。

 

どうにもならん。

 

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最近読んで面白かった本をもう一冊紹介。

 

ホームレス本。 若いおにーちゃんが実際に東京で路上生活をしてみる、というとても分かりやすい本である。 「東京都心のホームレスは食い物に困ることはない」 という驚くべき現実に衝撃を受けましたよ。

 

 

恵まれたごく一部の人々を除き、誰にとっても、自分ではいかんともしがたい理由での失業、そして路上生活は他人事ではない現実的なリスクである。 私も毎日、渋谷の駅の中をトボトボと歩かされている多くのホームレスのおじいさん (駅構内で寝たり、座り込んだりしたら怒られる) を横目で見ながら通勤してるのだが、私が彼らの一人であってもなんら不思議ではない社会に住んでるわけである。 心の中で 「たまたま私は健康で、たまたま仕事があって、たまたま借家に住めています。 本当に申し訳ありません」 と呟くしかない。

 

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まだ当面寒い日々が続きますが、がんばって生き抜きましょう。 よく見ると大学構内の桜はもう芽がふくらんでいるのよ。 それに気づくと、まったく色気のない今の桜の方が愛おしく思えるから不思議である。

あ、あとな、「あんたのような物価上昇についていけない人向けに、バーガーキングにはワッパーjrという小さくて安いお子様用のバーガーがあるから、四の五の言わずにそれを買えばよかろう」 というアドバイスは一切受け付けません。 そんなこと言ってくるやつは問答無用でぶん殴ってやるのでご容赦ください(笑)。

 

じゃまたね。