小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

秋に心を乱さない

もう11月。 寒くなってきましたが、皆さん元気ですか? コロナ、大丈夫っすか? 油断しないでね。

ジブリパークというのが開園したらしいのである。 素晴らしい。 トトロの森に行きたいなぁ、地球屋のネコの目を覗き込みたいなぁ ・・・ などと考え始めると胸のドキドキが止まらない。 「トトロ」も「耳をすませば」も「千と千尋」 も、みんな素晴らしい名作である。 だが皆さん、スタジオジブリといえば必ず語られるべき大切な映画、人類の宝を一つ忘れてはいないだろうか。 

火垂るの墓」。

「節子、それドロップやない」 の光景はジブリパークのどこにあるのだろう? 清太と節子をイジめたおした親戚の叔母さんの家はどこに再現されているのだ? どこにも行き場がなくなった二人の子供が身を潜めた洞穴は?

普段から冗談ばかり言ってるサル的なヒトだが、これは冗談ではありません。 結構本気で書いています。 書きながら、「火垂るの墓」 のお話を思い出して、涙がホロホロとこぼれております。 誰もいない大学のオフィスでシクシク泣いているおじさん一名。

火垂るの墓」 は悲惨な話である。 ディ〇ニーランドのごとき能天気なテーマパークなら、そんな展示が似つかわしくないのは百も承知している。 が、そこは日本が誇るスタジオジブリなのだ。 ぜひ「火垂るの墓」 のあの情景をジブリパークのどこかによみがえらせてはもらえないものか。 むろん、ひっそりと。 宣伝などする必要はない。

そこを訪れる人々は皆、今の僕と同じように、涙をホロホロと流すことであろう。 それでいいのではないか、と思うのだ。 手にするとカラカラと音がする、おはじきが入ったサクマ式ドロップスの缶を前にして、号泣しない人はいないと思うのだ。 ジブリさん、そういうエリアを私たち日本人のために作ってはいただけませんか。

醜悪な戦争を憎み、平和が僕らの宝物であることを心の底から再認識することができる貴重な場、荒んだ心の浄化施設になるはずです。

 

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・・・ などと書きながら、「火垂るの墓」の原作者、野坂昭如が酔っ払って、大島渚をグーで殴り、大島渚が手に持ったハンドマイクで野坂昭如の頭を殴り返したシーンを久々に思い出した。 マイクが頭を直撃した音をマイク自身が拾うため、「ポコ! ポコ!」と大きな音が会場に鳴り響いたのである。

「まったく、いい年して、このバカたちは・・・」と二人を止める女優の小山明子さん(大島渚の奥さん)の呆れた感じの笑い顔もとても素晴らしくて、たまらない。

 


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でもね、野坂さんも大島監督も、もう亡くなってしまいました。 昭和は本当に遠くなってしまった ・・・ と遠い目をして呟いてみたのだが、これは1990年だから昭和ではなく平成の事件だった。

皆さん、さっきは「火垂るの墓」についてとてもカッコいい提案をしたサル的なヒトだったのだが、正直に告白しよう。 そんなふうにカッコいいことを言いながら、実は頭の中で、野坂昭如が 「俺の『火垂るの墓』の展示をどうして作らねぇんだ!」 と叫びながら宮崎駿にストレートパンチを入れて、宮崎駿がマイクで殴り返す、という意味不明の妄想が渦巻いていたのである。

サル的なヒトは、悲しくて泣きながら、同時に幼稚園児並みにくだらない妄想をしていたのである。 ごめんなさい。 正直に謝ったのだから勘弁してください。

人間だもの。

 

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人間ならば、人生において絶対に読まないといけない本、というのが数十冊(いや、本当は数百冊)はある。 この本は明らかにその一冊なのだが、本棚に放置したままになっていた。 気合を入れて、読む。 製薬業界人向けの倫理の講義で話すネタにも「アイヒマン」は当然に含まれているので、知識の確認でもある。

 

 

アドルフ・アイヒマン

第二次世界大戦中のドイツのユダヤ人問題専門家、実際には絶滅収容所への移送の実務責任者として働く。 が、自分のしていることについてまともに思考していない。

虐殺の現場はあまり見ていない(上司・現場の責任者も、それを彼には見せない)。 当人は、法を遵守する市民を自認している。 カントの定言命法(「人間には普遍的に従う義務がある行為原則がある」とする倫理原則)をほぼ正確に引用し、自分の行為の道徳的正当化を図ることができる。

そんな人である。 どうですか。 そういうヒト、あなたのまわりに結構たくさんいませんか? 私のまわりには、います。

アイヒマンが償うべきは 「人間への罪」ではなく「人類への罪」だという主張の意味を久しぶりに反芻してみる。

 

今現実に起きている戦争については、エライ評論家の先生方のご意見よりもむしろ「不肖・宮嶋」 が語る暴論の方がずっと腑に落ちる。 なんせ現地にいるのだから。 ミサイルが、銃弾が降って来るウクライナの人々が感じている恐怖と絶望を、ほんの一部にせよ、わが身で体験しているのだから。 

すぐ読めるから、ぜひご一読を。

 

不肖・宮嶋は 「もうええ加減、戦争取材はこれを最後にさせてくれ! 年取ったせいで身体がボロボロだ」と半べそかいてるのだが、無情にも戦争は起き続ける。 キチガイが戦争を起こし続けるから。 いや、戦争を起こし続けているのはキチガイだけではなかろう。 現代を生きるたくさんの「アイヒマン」たちも。

「首都のキエフまで車で連れて行ってくれないか?」 と不肖・宮嶋が頼んだウクライナ国境近くのタクシー運転手の返答が心に突き刺さる。

「連れて行くことはできない。 来週から、ロシア人を殺すための訓練を受けるから」

国家首脳や政治家や政府高官はこうした訓練を受けないのだよな。 こうした訓練を受ける・受けさせられるのは、その辺の地べたで暮らしている私たち。 街中でミサイルが爆発したり、塹壕でドローン爆撃を受けたり、銃弾を受けたり、軍人に拷問されたりして死んでしまうのも、その辺の地べたで暮らしてる私たち。

 

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というわけで、感情の揺れがとても激しい今回のサル的日記であった。 落ち着こうにも、現実世界で起きていることが狂っているので、落ち着くことができないのだが、しかし、日々の生活の糧は自らが稼がねばならないのである。

私も頑張って学生の論文添削したり、講義資料作ったり、有効性の意味論の論文書いたりしますので、皆さんもがんばって自分の仕事をしてください。

あ、大事なこと忘れてた。 いしだ壱成に新しい彼女ができたらしい件については、また次回の記事で語り合いましょうね。

じゃまたね。